カリフォルニア州ヴェンチュラにあるパタゴニア本社

存在目的(パーパス)を完全解説

こんにちは、一般財団法人日本アントレプレナー学会の清水です。この記事では、「ティール組織」内で紹介されている存在目的(エボリューショナリーパーパス)についてご紹介していきます。

「ティール組織」を読んで存在目的(エボリューショナリーパーパス)を知ったけど、どう始めればいいの?

という方に向けて基礎から実際に行われている運営のやり方などをご紹介していきます。

ちなみにこのサイト「ORG MAP」ではティール組織に向けて今の状態を診断できる「ティール組織診断マップ」を無料配布していますので、まだダウンロードしていない方はぜひ以下からチェックしてみてください。

▶ティール組織診断マップはこちら

▶ティール組織実践へ向けてのまとめ記事はこちら

存在目的(エボリューショナリーパーパス)の意味とは?

ティール組織における存在目的の意味とは、「組織が存在する深い理由であり、対象としている市場だけでなく、周りのコミュニティに対しても違いをもたらそうとするもの」です。

わかりやすくもあり、わかりにくくもあるので、これから解説をしていきます。

ティール組織には、存在目的のほかに、自主経営全体性という3つのブレイクスルーがあります。中でも、この存在目的は比較的日本人にはすんなりと受け入れやすいのではないでしょうか。

日本人には江戸時代から、商売というのは世のため人のために行うもの、という考え方のDNAがあるからです。江戸時代には石田梅岩が商売人の在り方を説いたとされ、その後、それが渋沢栄一氏や松下幸之助氏、稲盛和夫氏らに引き継がれてきて、多くの経営者はその考え方に薫陶してきました。

そういう意味で、ティール組織でいう存在目的というのは、世のため人のため、という概念に近いので受け入れやすいのではないかと思います。

存在目的を英語で言うと?

存在目的は、書籍ではエボリューショナリー・パーパス(ボリューショナリー・パーパスと間違えがちですが、こちらは革新的とか革命的という意味になってしまいますので気を付けましょう)と訳されていますが、最近は単にパーパス(purpose)とだけ書くこともあるようです。

エボリューショナリーというのは進化する、という意味なので「進化する目的」というのが直訳でしょうか。進化するとはどういう意味かについては後述します。

存在目的の例

まずは書籍で紹介されている存在目的の例を見てみましょう。

  • 「在宅患者の健康と自立を支援する」- ビュートゾルフ
  • 「ビジネスを活用して環境危機の解決策を実施する」- パタゴニア
  • 「2つの基本的な目的:一つ目はフランス北部の農村地域、ハレンクールの地域で有意義な仕事を提供すること。二つ目は、クライアントから愛を授受すること」- FAVI

といった感じです。

ちなみに、この中でも私が好きなのはパタゴニアです。この会社、他の会社と全く違う点があります。他の会社の中にも環境保護を掲げている会社はたくさんあるんですが、そういった会社の発想は、「可能な限り環境に優しいやり方でビジネスを行い利益を上げる」または、「ビジネスで利益を上げて環境保護活動に寄付をする」というようにあくまでビジネスをすることが目的なのです。

一方、パタゴニアは創業当初からビジネス自体が目的ではなく、環境を守ることが目的になっているのです。その手段としてビジネスをする、という点が他の会社と圧倒的に違う点だと思います。

存在目的の特徴

さてここまで見てきて、

なるほど。存在目的というのは要するに経営理念のことだね。うちの会社にもあるよ。

と思う人も多いのではないでしょうか。

先述した通り、日本企業の経営者のほとんどは、経営理念の大切さを理解しており、それが会社内で共有されているにしろ、されていないにしろ、何かしらの形で掲げている会社が多いでしょう。

しかし、ここでいう存在目的と、従来型の経営理念とは少し異なるようです。ですのでここから存在目的の持つ特徴についてみていきましょう。

ちなみに経営理念についてはこちらに詳しく解説しています

▶ミッション、ビジョン、バリュー(理念)を決める

組織は独立した生き物

存在目的を理解するうえで、欠かせない考え方が、

組織は独立した生き物である

という概念です。

これはほとんどの人にとってはピンとこない考え方ではないでしょうか。オレンジ層までの組織は規律正しく動くマシーンとして捉えるのが一般的でした。しかし、ティールのパラダイムにおいては、組織をマシーンではなく、生き物として捉えることになります。

ちなみに実は私自身は10年来のビジネスの師匠であるマイケルE.ガーバー氏からこの考え方を学んでおり、ティール組織の本の中にこの言葉があったとき、みんな同じ境地にたどり着くんだな~と思うと同時に、数十年前にその境地にたどり着いたマイケルE.ガーバー氏の凄さを改めて実感しました。

以下、マイケルE.ガーバー氏の言葉を引用してみます。

ビジネスをあなたの一部としてではなく、あなたから独立したものと考えるべきだ。ビジネスは1つの生き物であり、最終的にビジネスはそれ自体として存続するし、それ自体として命を持ち、それ自体として意志を持ち、それ自体として法を持ち、それ自体として目的を持ち、それ自体として意図を持つ。

それは生きているのだ。それはあなたの創造物だ。あなたの身体と同じように、そのシステムも未知の法則を持っている。ビジネスにそのシステムを教え込む必要があり、未知の法則を持っているシステムとビジネスを統合する必要がある。

これら全部のバランスはどうしたら見つかるだろう? この生きているものが、健全で、生産的で、喜ばしく、意図的で、クリエイティブな役立つ機能を実現するにはどうしたらよいだろう? ビジネスに持ち込めることのできる最高の知性とは、起業家的な視点であり、創造的アプローチであり、ビジネスを自分からは独立したものとみなす正確な物の見方なのだ。ビジネスが独立したものなら、あなたが明日死んでもビジネスは続いていくだろう。 – マイケルE.ガーバー

また、ラルー氏は、組織は生き物であるがゆえに、私たちの身体と同じように自己修正するものだと言っています。

組織をマシーンではなく生きたものと捉えてみてください。生き物は常に変化しています。体内も周りの環境も常に変化します。そこで根底にある考えは、全てスムーズに物事が運ぶということではなく、何か変化を感じたときに速やかに適応すること、環境の変化に適応するために常に自己修正を行うことです。 – フレデリックラルー

存在目的は進化する

では組織が生き物である、という考え方と存在目的の間にはどういう関係性があるのでしょうか?

もしあなたが会社のオーナーや創業者であれば、会社を作ったときの目的があったと思います。

それは自分の収入を増やしたい、家族を養いたい、という個人的なものかも知れませんし、業界に風穴を空けたい、このビジネスチャンスをつかみたい、というものかも知れません。いずれにしろ、会社の初期の段階においては、創業者が会社を作った個人的な目的=会社の存在目的となっているわけです。

この段階においては、会社は創業者の”持ち物”であり、その目的も運営の仕方も創業者に完全に依存します。

しかしそこから会社が大きくなり、メンバーも増えてくると、ある時に気が付くのです。これはラルー氏がセンシング(感じ取る)と表現することに近いのかもしれませんが、

あれ、いままでこれを目標にしてやってきたけど、なんか違う気がしてきた。。。

いままでのやり方が通用しなくなってきたな。。。

というように感じるタイミングが来ます。

こうなったとき、勘の良いリーダーは、会社がもう自分の”持ち物”ではないことに気が付きます。私たちの経験からいうと、そこから、ここで言うように会社は自分とは独立した生き物である、という意識にたどり着けると、多くの仕事を手放すことが出来るようになり、リーダーの役割は、自分が一生懸命働き続けるステージから次のステージに移行します。そして、会社を運営する目的、すなわちここで言う存在目的も進化していきます。

▶存在目的の進化のイメージ図。もちろん、パタゴニアなどのように創業期から今とほぼ同じ存在目的を発見していた会社もあると思います。

存在目的の進化

会社は子供

組織は自分とは別の生き物、と言っても完全に切り離すことはできないものです。これもマイケルE.ガーバー氏から学んだことですが、会社というのはそれを作った創業者の子供のようなものである、ということです。

子供は親とは別人格ですが、親のDNAを受け継いでおり、成長したとしてもどこかで親の影響を受けています。子供は最初、親に完全に依存した状態でしか育ちません。しかしだんだん成長してくると、自我が目覚め、青年期には自分の人生の目的や目標を考えるようになります。そして成熟期には自分自身の生き方を確立していきます。

つまり、まとめると、組織は成長するにしたがって、それ自体が存在する目的を見出すようになる、ということです。

存在目的は作る(浸透させる)というよりも発見する

日本企業ではよく、経営理念を浸透させる、という言葉が使われますね。私は個人的にはこの言葉は好きではありません。浸透させる、というと権威をもった誰かが、下の人たちに価値観や考え方を植え付ける、というイメージがあるからです。

先述した存在目的の意味を考えれば、そもそも存在目的は浸透させるものではないことがわかると思います。それはリーダーが強制するものではなく、メンバーが既に共通して感じているものを発見する、という意味合いに近いものだと思います。これについては次の「存在目的を発見するには?」のところで紹介します。

個人の目的と存在目的

会社のメンバーの個人個人の人生の目的と、存在目的は密接に関連しています。一方の目的を追求するためにも、もう他方が必要となるのです。ラルー氏は、個人と存在目的が共鳴し合い、互いに強化されると、素晴らしいことが起こると言っています。

存在目的のイメージ

メンバー個人個人の使命感と仕事の出会い。これを神学者のフレデリック・ブフナーは「あなたの喜びが世界の飢えに出会う場所」と表現しています。この出会いが起こると、メンバーは自分の仕事に心と魂を注ぐことができます。単に生産的であるだけではなく、人間らしさを表現することが出来ると言います。

存在目的はどう発見する?

では存在目的はどう発見するのでしょうか?ラルー氏は書籍や動画の中でいくつかのアプローチを紹介してくれています。それについてみていきましょう。

センシング・アプローチ

ラルー氏は存在目的を発見するための簡単な方法は

何もしないこと

と言っています。これだけだと訳が分かりませんね。もう少し言葉を引用すると次の通りです。

私たちはすべてンサーです。何かがうまく機能していないときや、新しい機会が開かれたときに気付くことができます。誰もがセンサーになり、変化を起こすことができます。生きている生物のように、すべての細胞が環境を感知し、生物に必要な変化を警告できます。

存在目的を作ろうと思って何か行動を起こすというよりも、センサーのように周りに耳を傾けること。これをセンシング・アプローチと言っています。

またティール組織の形態の一つ、ホラクラシーを開発したブライアン・ロバートソン氏は、次のように語っています。

存在目的を明確にすることは、創造的な仕事よりも探偵の仕事に似ています。あなたが探しているものはすでにそこにあり、見つけられるのを待っています。あなたの子供の人生の目的と同じです。

空の椅子

より現実的な方法として、「空の椅子」という方法を紹介してくれています。会議のときに空の椅子を置いておくのです。そして、誰でも、いつでもその席に座って組織としての発言できるようにする、というものです。そして椅子に座った人は次のような質問を投げかけます。

  • 意思決定と議論はあなた(組織)に役立っていますか?
  • この会議の最後はどうなりますか?
  • この会議で何が目立っていますか?
  • どの方向に行きたいですか?
  • 他に議論する必要のあることはありますか?

質問をして耳を傾ける

ラルー氏は存在目的を発見するために、他にもU理論やオープンスペーステクノロジーなどを紹介しています。それらを活用するのも良いでしょう。また、より簡単なこととして、以下のような質問に耳を傾けることも推奨しています。

  • この組織は、この世界で何を実現したいのか?
  • 世界はこの組織に何を望んでいるのか?
  • この組織がなかったら、世界は何を失うのか?

私の記憶では、NIKE社が自社の目的を考え直す際、「世界はNIKEを失ったら何を失うのか?」という質問を問い続けたといわれています。これも上記に挙げた質問と似ていますね。

ティール組織マップを使って対話を始めましょう

以上、この記事ではティールの3つのブレイクスルーのうちのひとつ、存在目的についての解説を行ってきました。あなたの会社の存在目的を発見するヒントになれば幸いです。

改めてご紹介になりますが、このサイトではヨーロッパで開発された「ティール組織診断マップ」を無料配布しています。おそらく世界で唯一、全体像を俯瞰して診断できるマップです。これを使っていただくと、チームや会社内でティール組織に向けた対話をスタートすることが出来ます。使い方の簡単なガイドも付けていますので、ぜひ以下からダウンロードされてください。

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