ホールネスを実現するために【フレデリックラルー氏動画⑤要約】

「ホールネスを実現するために」と題して、「ティール組織」著者のフレデリックラルー氏による動画の要約をお届けします。

フレデリックラルー氏は書籍のほかに、100を超える動画を公開してくれています。本記事では、その中の「シリーズ5.ホールネスを実現するために」の要約をご紹介させていただきます。

ぜひご参考にされてください。

▶元の動画「Striving for Wholeness」はこちらから

▶ティール組織を実践するためのティール組織診断マップはこちらから

 

5.1あなたにとってのホールネスとは何か

このビデオは、ホールネスを説明しているチャプターの1つ目のビデオです。私がホールネスについて話すとき、いつも私の著書である“ティール組織(Reinventing Organizations)”の中の2つのチャプターについて言及しています。

多くの企業がすでにホールネスを取り入れていて、そこで働く社員が、自分をさらけ出しても安全で、安心できる環境を作っています。職場では常に他人がどう感じるか、自分がどう見られているか仮面を被っているかもしれませんが、それはとても疲れることです。それをしなくていいとなると、一気に肩の荷がおりますよね。

ホールネスを取り入れると、今までみんながマスクの下に隠していた内面をさらけ出すので、一気に職場が活気づき、エネルギーで溢れるようになります。

ホールネスにより、自分が自分らしくいられるだけでなく、今まで自分でも気が付かなかった才能や資質を開花させる契機になることもあります。

これがホールネスの素晴らしいところで、私がホールネスについて語るときにいつもお話することです。

ホールネスと言っても、一体あなたにとってのホールネスとは何でしょう?どんな特色があるでしょうか?これがこのビデオの中であなたに質問したいことです。ぼやっとしたままの考えではなく、具体的に突き詰めて考えるのです。ぺンやメモを取りながらでもいいので考えてみてください。

質問1

これまで自分が自分らしくいられた瞬間を覚えていますか?他人が自分のことをどう思うかや、どう自分が判断されるのかは全く気にせず、脳や精神、細胞までもがリラックスして、ありのままの自分でいられた瞬間です。それは、職場かもしれませんし、恋人や親友と過ごした時間、あるいは自分が参加したワークショップでのことかもしれません。

質問2

職場での毎日を思い出してみてください。ホールネスについて考えるとき、職場や自分が所属している企業に対して、自分はどういう存在でありたいと思っていますか?何を切望していますか?

出来るだけ具体的に考えてみてください。

私の場合は、同僚ととても良い関係を築くことです。

例えば職場のミーティングでいろいろ話し合った後に、「じゃあまた」と言ってさっと部屋を出るのではなく、終わったあとに「良いミーティングをありがとう」と言ってハグをしたくなるほど素晴らしい会議をできる関係です。ハグというのが私には一種の関係を測る物差しのようになっています。

質問3

それでは逆に、あなたの所属している企業で、もう辞めたい、出来ることならこれはもうしたくないと思っていることは何ですか?

 

質問4

また、社員が自身をさらけ出すのを妨げているものは何でしょう?

これも出来るだけ具体的に考えてみましょう。

 

質問5

すでに企業の中で、自分が自身をさらけ出せていると思うシチュエーションはどんな時ですか?

またどんな場所でしょうか?ほかの人についてはどうですか?

 

質問6

あなたが仮面の下に隠していることはどんなことですか?

私の場合は、怒りやフラストレーションを表に出すのが難しいことがあります。

逆にふざけた一面などを隠している人もいるでしょう。

逆に一体どんな状況なら、それをさらけ出すことが出来ますか?

 

質問7

自分自身をさらけ出して欲しいと他の人に提案することに対して、どんな不安がありますか?

私の場合は、もしかしたら、最終的にただ馴れ馴れしいだけの会話で終わってしまうかも、という思いがあります。あなたにとっては何ですか?

具体的に考えることが出来たら、ではその不安から脱却するにはどうすればいいでしょうか?

私は、自身の奥底から気持ちを表現することが出来れば、確実に生産的な会話になると信じています。

私の場合、もし馴れ馴れしいだけの雰囲気になっていると感じれば、ただ単純に自分はこういう雰囲気を望んでいないと相手に伝えます。こう考えることで、自分が抱えている不安も軽減されます。

私の目的は、あなたにとってのホールネスとは何かを具体的に、明確にする手伝いをすることです。自分でさらに質問を付け加えてみてもいいですよ。ほかの同僚などと一緒にこれらについて話してみてもいいですね。おすすめは、恋人やパートナー、信頼のおけるコーチなどに、もっと深いディスカッションをやってみることです。

 

5.2 ホールネスへの文化的なバリア

今回は、それぞれの企業がもつ独特な、ホールネスへの文化的なバリアについてお話します。

何が妨げになっているのか知るのは大切なことだと思います。

どの企業にも必ず独自の決まった文化、目に見えない暗黙のルールがあります。ある企業はある一定の決まった表現を良しとし、その以外の表現方法は受け入れられなかったりします。

最近、あるエンジニアの企業の人と一緒に1日過ごすことがあって、その企業のある人が真剣な話をした後に、ちょっとでも、ふざけて冗談を言ったら、すぐにその人は周りの同僚からかわれました。そのような文化がある企業では、少しでも他の人と異なる表現、または個人的な感情を入れると、受け入れられないのです。

本当に素晴らしい企業なのですが、自分の感情をだすことを許される場所ではありません。

企業によって独特の雰囲気があって、ある企業では冗談を言ったりすることは全く受け入れられず、常に真剣な会話をするという文化もあります。

一度私がボランティアをしたNPO法人では、常にどう自分が思っているか、感じるかを共有する文化でした。逆に、とにかく忙しくてやることに追われている会社では、冗談を言っている暇もないということもあるでしょう。

ここでの私の質問は、あなたの企業で、みんなが共有している、受け入れられないとされていることや、やったらからかわれるようなことは何ですか?同僚たちとも一緒に考えてみましょう。

そのうえで、冗談を言ったり、自分自身の感情を表に出せないことで犠牲になっているものは一体何だろう?と話し合ってみてください。

なぜなら、私たちが目標とするのは、すべての人を巻き込んで、どんなことに対しても理解しあえる、適した環境をつくることだからです。

次に私がお話したいのは、社会的に期待されていること、または社会的に行ってはいけないことについてです。

一般的に社会は、良い教育を受けて、権力のある人たちによって作られていて、その人たちにとって快適なようになっています。

例えば、白人の男性で、裕福な家庭に生まれ、良い教育を受けた人たちは、企業の中で働くほとんどすべての人たちがコードスイッチを学んでいる、ということにも気づいていないと思います。

もし男性社会で働く女性だったら、言ってはいけないこと、言うべきでないこと、役割を果たすために必要と思われるスキルを身に付けているでしょうが、ほとんどの男性はそのことに気づいていません。

また、貧しい家に生まれて社会に出た人たちにも同じことが言え、彼らもコードスイッチを学んでいます。例えば会社でマネージメントをするために、服装や話し方、態度の取り方、話すアクセント、冗談の内容に至るまで、細かくたくさんのコードスイッチを学んでいるはずです。

他にも、アメリカやヨーロッパでは、肌の色による違いのためにコードスイッチを学ぶ場合もあります。もし自分の生まれ育った文化を色濃く見せると罰を受けてしまうことを痛いくらいに分かっているので、白人としての振る舞いを学ぶでしょう。

欧米の話をしましたが、それに限らずどの文化でも、より強いグループがルールを決め、他のグループがそれに順応するためにコードスイッチを学ぶのです。インドや中国では違うかもしれませんが、おそらく世界中どこでも同じような現象が起こっていると思います。

ホールネスにより本当に作りたい環境というのは、コードスイッチを学ばなくても、みんなが自分自身を表現して、みんなが自分自身でいられる快適な場所です。

それが一つの基準です。

自分の企業には、皮膚の色が違う人や貧しい家庭に生まれた人たちでもコードスイッチを使わなくてよい環境があるのか、を考えてみましょう。

また、ホールネスの素晴らしい点は、特に白人や組織の上層部の人たちにとっては、常に真剣でいなければならないという概念から抜け出すことが出来、より自分らしくいられるようになる点です。

特に私がみなさんにお伝えしたい観点は、社会、企業の中で、文化的に何が受け入れられて、何が受け入れられないかを発見することです。なぜなら、すべての人にホールネスを体現してもらうためには、異なる環境で育った一人ひとりのカルチャーを大切にしなければならないからです。

 

5.3 ホールネスについてどのように話すか?

企業のなかで、全ての人が自分をさらけ出して自分らしくいられる職場環境を作ることは本当に素晴らしく、とてもパワフルなことです。私はもう二度と仮面を被って仕事をしなければならないような職場には戻りたくありません。といっても、ホールネスという考えはまだまだ新しいですよね。

あなたの会社はその準備が出来ていますか?

いきなりホールネスについて話し始める前に、ミーティングなどを通して、会社の人たちにまず経験してもらう必要があるかもしれません。

おすすめは、あなた自身のストーリーを話してみることです。なぜ、あなたはホールネスが大切だと思うのか、なぜ企業にとってホールネスが必要だと思うのか、自身のストーリーを語るのです。これには3種類あります。

  1. 個人的なストーリー

単純に、自身の歴史について仮面をすべて外して話してみるのです。ホールネスがなぜ自分にとって大切か、

自分のキャリア、または学生時代から振り返ってもいいでしょう。なぜ、もうこれ以上、仮面を被らなければいけない企業で働きたくないのか、なぜ他の人が仮面を被って仕事をしているのを見るのが嫌なのか、 などです。細かくかみ砕いて説明することで、人々は共感してくれます。それくらいパワーがあることです。

 

  1. 企業の歴史に関係のある話

企業の歴史の中で、特にあなたがホールネスの導入が重要だと思った決定的な事柄について話してみましょう。

 

  1. 企業の目的

企業の理念や目的を達成させるために、なぜホールネスが大切か、なぜみんなが仮面をすてて自分をさらけ出す必要があるのか。仮面を被ることでどれだけ時間やエネルギーを無駄にしているのか、などです。

 

お互いに率直に話すことで、刺激され、新しいアイデアが生まれます。しかし、ただ恐れて、みんなが言われたことだけをやっている環境では、企業の目標には到達できません。

私がここで伝えたいのは、ホールネスについての自分の考えをはっきり述べ、他の人がどうリアクションするのかを試してみることです。心理学用語のような難しい言葉を使うことを勧めているわけではありません。シンプルで分かりやすい言葉で話すことによって、より多くの人たちが賛同してくれるのです。

 

5.4 ホールネスを企業全体で体現するためのに手本を示す

もしあなたが企業のリーダーだとしたら、ホールネスに関して言うと、あなたがどの程度まで自分を出し、また、どうやってみんなが安心して自分自身を見せられる環境作りをするのか、みんながあなたに注目するでしょう。

あなたは化学でいうと触媒のような存在で、どのような環境・雰囲気にするかはすべてあなたにかかっています。

なぜなら、それが企業で働くシニア層の役職職員が持っているパワーだからです。セルフマネージメントが浸透するにつれて、それも薄れていくでしょうが、現時点ではそうでしょう。

なので、あなたがどう自分をさらけ出すのかが、とてもとても大事なことです。社員が、ここは自分のありのままの姿を見せていい場所なんだと思うか、逆に気を付けなければならない場所と思うかはあなた次第です。あなた自身がどの程度、どんなふうに仮面を取り除けるか、どのように手本を示すかがとても重要な意味をもちます。

ホールネスについて話をするとき、手本を示す方法には2つの柱があって、1つは率いること、2つ目はリアクションしないということです。

率いるとは、まずホールネス全体の取り組みを率いることです。もともと企業にある文化ではないので、リーダーとして、どこのレベルまで深く心を開くか、自分自身を出すかが、社員たちにとっても自身をさらけだせるレベルとなります。心を開いて会話をすることが、常に大切です。もしあなたが企業のシニア層のリーダーで、会議中にリラックスした反応を取れば、他の人もそうなるでしょうし、逆に張り詰めた空気を出せば、他の人もそれに巻き込まれるでしょう。場の空気を支配してしまうくらいあなたはパワーを持っています。それが率いるということです。

リアクションしないというのは、身構えたり反射的に怯えたりしないということ。

リーダーにとって、心を開くことが難しい理由の一つは、シニアリーダーとして他の人より重い責任を担っていて、この会議で正しい決定をしなければならない、というように、簡単に恐怖心に引き込まれてしまうからでしょう。

リーダーとは、常に弱い部分を見せず、常に何が起きているか把握し、決して躊躇しない存在、という期待を他の人は持っています。でもこれはとても高い期待で、みんなが自分を見ている、平静を装わなければ、と容易に神経質なモードに入ってしまいます。リーダーも責任を負っていると考えすぎずに、自然体で心を開く方法を学ぶのは大切なことです。ほんの少しの間でもいいので少しずつやってみるのです。

どんなシチュエーションで、反射的に殻にこもったり、怯えたりしてしまいますか?

悪い結果になったときですか?

それとも他の人に嫌われるかも?とか、人を傷つけるかも?と思うときですか?

どのような状況で精神的に委縮してしまうのか考えてみましょう。

それでは、どうやって精神的に開放的になる方法を学べばいいのでしょう?

それには3つステップあって、1つは単純に、筋肉を鍛えるように、身構えたり心を開けていないときの状況に自分で気づくことです。

自分を客観的にみて、自分が今身構えたり何かに怯えたりしている状態だと思ったら、深呼吸してリラックスして仕切りなおせばいいのです。

ドイツのある企業では、会議をする時にベルを用意して、仲間のなかでベルを鳴らす担当の人を決めます。

もし空気が張り詰めたり、ホールネスではない状態になったと感じたらベルを鳴らして、みんなに気付かせる方法をとっています。そのベルがなることで、みんな一度深呼吸してリラックスモードへ戻ることができるのです。

2つ目は深呼吸です。そして心の中で感じていること、思っていることを、他の人と共有するのです。会議中に出されている意見と違う考えが心の中にあるなら、恐れずに言ってみるのです。

例えば、「あなたを傷つけたくはないけど、ちょっと厳しいことを言うと、、、」などと切り出してもいいでしょう。

こういうふうに心の中で考えていることを共有することによって、一気に気持ちが楽になるはずです。

そうでなければ、あーこれは絶対に決定しなければならないことなのに、まだ何も決まっていない。。。などと思うでしょう。

3つ目の方法ですが、もし自分の中で、いつも繰り返し起こる、ホールネスでいられなくパターンに気付いたら、それは、内面を鍛える良いタイミングです。

他の人を傷つけている可能性があるとか。もっと奥深い深層心理に何か理由が隠れているかもしれないので、ボディセラピーやスピーチセラピーなども、もしかしたら良い方法かもしれません。

シニアリーダーのみなさんに一つだけお伝えしたいのは、自分のことを客観的に見て、フィードバックをくれる人をもつことです。あなたの思い描くホールネスを体現するうえで、あなたの態度がどう映っているか、また自分の存在はどう影響しているか、どう役に立っているのか、または逆に妨げているのかなどについて意見を言ってくれる人です。

例えば、専門のコーチを雇って会議に一緒に出席してもらうとか、もし会社役員全員が集まるような大きな会議やとても大切な会議で、自分が開放性を保つ自信がなかったら、進行役を雇ってもいいでしょう。実際に多くの企業がそうしています。

繰り返しますが、もしあなたが企業でシニアリーダーなら、あなたがどの程度自身をさらけ出すかが、他の社員の開示性にとてつもなく大きな影響を与えるということを覚えていてください。時には自身の内面とも向き合ってホールネスを体現していくことで、あなたの人生もより豊かに素晴らしいものになります。

 

5.5 一対一の会話

フォーマルな会議でも、椅子に座っての会話や、コーヒー片手に廊下での会話でも、どんな一対一の会話であっても、ホールネスを体現するのです。私はもう意識ぜずともこれがほとんど体に染みついていますが、これには少し自己認識が必要です。

相手が言ったことの根底にはどんな意味が隠されているのかをよく聞くことです。相手がどう感じているのかというのは、そのまま、あなたがどう感じるかに跳ね返ってきます。

何かに怯えたり、身構えたりした状態で仮面をつけたまま会話を続けても何の意味もなく、時間の無駄です。

そこで、一番簡単で、かつとても効果的な方法は、一度話を止めて、自分が感じた違和感や気づいたことを相手に率直に話すことです。

「あなたの言ったことにフラストレーションを感じている、もしかしてちょっと疲れている?」などと相手に言うことで、隠されていた部分が表に出され、そこから心を開いたリアルな会話を始めること出来るのです。

仮面を被った状態での会話はストップし、なぜ相手が心を閉ざしているのか、今ここで何が起きているのかを話すのです。そうすることで、どのような一対一の会話でも、ホールネスを体現することが可能です。

このホールネスを体現する過程で、特に興味深いのは、従来のやり方を変えることに対して抵抗心を持ったときです。中には心の奥深くを他人に見せることを不快に感じる人たちもいます。

もし、私がそういう状況に直面したら、「これはあなたにとって新しいことでなかなか受け入れられないことですよね。私にとってもあなたが苦しんでいるのを見るのはつらいです。」と言うと思います。

このような場合、無理に相手を変えようとはせず、ただ受け入れるのです。それ以上は何もする必要がありません。受け入れることで、その人の心を開くことになるかもしれません。

ここまでビデオを見てきて、もしホールネスは馴れ馴れしく話すことだと感じているなら、まだホールネスについてきちんと理解できていません。

ホールネスはビジネスや金銭的なこと、技術的なことやマーケティングについて話しているときにも活用出来ます。もし誰かが心を閉ざした会話をしている瞬間があったら、また立ち止まって、相手が心地よく心を開ける雰囲気を作り直して、真の会話を始めるのです。多くの意味で馴れ馴れしいとは逆のものです。

ホールネスは生産的な会話をするための唯一の方法です。

 

5.6 グループの中でのホールネス

10人くらいの会議や何百人もの集まりの時に、どうやってホールネスを取り入れたらいいでしょう?

いきなりホールネスを紹介すると変に思われるかもと不安になるかもしれません。しかし、正しい方法で行えば、まったく不自然ではありません。

ほとんどの人にとって、心の底から会話をするというのは、何も不自然なこと新しいことではありません。

例えば、親しい友人と夜ワインを飲みながらだと、割と簡単に本音トークというのは出来たりします。多くのは、すでに心を開いて会話をするやり方を知っているのです。

あなたがすべきことは、ただその場を作ることです。

そして大切なことは、難しい言葉ではなく、いつも使っている言葉を使うことです。さらに、心の底から話すことです。あなたが伝えたいことを最もシンプルな言葉で表してみてください。

初めての場合は、その場を仕切る、みんなが安心して真の会話をできる環境をつくる人が必要だと思います。あなたでもいいですが、外部から進行役を雇うのもいい考えですね。会議中に、みんなが安心して心を開けるような雰囲気ではなくなったときに、止めてくれる役割の人です。良い進行役というのは、よく会議中のルールを決めます。例えば、「相手の話を中断しないようにしましょう。相手の言っていることをアドバイスのつもりでも訂正しないようにしましょう。」などです。さらには、もちろん簡単な言葉で、心の底から会話をすることを心掛けることが大切です。

そして、そのグループで一番権力を持っている人と話すことも大切です。私がこのタイプの会議で必ずやることは、人々は権力のある人に合わせるので、一番権力を持っている人と前もって話すことです。会議が始まる前に、その人に対して、心を開いて会話をする準備を手伝います。ホールネスを体現する上での手本の示し方については、別のビデオでも詳しくご紹介していますが、理想的なのは、個人的なストーリーを話してもらうことです。もし、順番に一人ずつ話をしていくタイプの会議なら、もう一人、みんなの参考になるストーリーを、心の底から、話してくれる人を見つけてもいいかもしれません。

そうして2つ良い例があると、他の人にとってはより真似しやすくなります。

それから、会議そのものを仕事と関係のないものにしないようにすることです。進行役やコーチなどはもしかしたら、いつものトピックから一度離れて、瞑想するためにどこかへ行ったり、仕事のことではなく自分自身について話しましょう、などということもあるかもしれませんが、あまりに仕事と関係がないものだと意味がありません。なぜなら、仕事に関係ない話では、みんな心を開いてやさしい一面を見せるけれど、仕事になると、エゴが現れたり、心を閉ざすということになりかねません。でも私たちが目指すのはそうではなくて、すべての会議でみんなが心を開いて真の会話ができるようにすることです。

まとめると、正しい方法で行えば何も恐れることはない、ということです。みんな、終わった後、なぜだかよく分からないけど、とても良い会議だったといって安心するでしょう。

 

5.7 グループでのホールネスを体現する場合

ホールネスを初めて意識して取り入れようとするときに、いつ、何を始めたらいいの?と聞かれることがあります。それはまだ、ホールネスをいきなり始めたら、ちょっと不自然に思われるかも、という思いがあるからでしょう。でも、本当の自分を出すということは難しいことでも特別なことでもなく、みんな親しい友 達に対しては自然にやっていることです。なので、全く変なことではありません。

 

グループランチやグループミーティング

リーダーの中には、まず手始めに、グループランチやグループミーティングを開いて、お互いに顔を合わせてホールネスを始めるための練習のような機会を作る人もいます。実際の会議のように議題は必要なく、ただ、疑問に思っていることを話してもらったり、何が大切だと思っているかなどを話すのです。いつもとシチュエーションを変えることで、他の人から、思っていたより話しやすいリーダーだと認識してもらえるかもしれませんし、ホールネスを始めるとてもいい前段階になるはずです。

 

全員参加の会議

その他のホールネスの練習をするのに良い機会は、全員参加の会議を開くことです。過去3か月の結果が出たのでシェアしたいと思います、等でもいいでしょう。質問があれば何でも言って欲しい、という態度を示して、日ごろ思っていることをシェアしてもらうのです。上司が何でも受け入れるという、フィルターが何もないという姿勢を見せることで、部下たちも感じていることを言いやすくなります。

 

1日ワークショップ

ワークショップでは、ホールネスを体現するために、あなたが取り入れたいルールや雰囲気を容易に実行することが出来ます。その雰囲気を保ちやすくするために、外部から進行役を雇ってもいいですね。1日を通して集中的にホールネスを体現してもらうことによって、次のステップへ行きやすくなります。

 

問題や衝突があるとき

会社や企業の中で実際にこのような問題が起こっていて、会議でこれらについて話し合うときは、だいたい攻撃的であった、身構えたり張り詰めた空気になりがちですが、もしその機会を、みんなが心の底から意見を言えるような瞬間にすることが出来たら、本当に素晴らしいことです。

 

トレーニングワークショップ

例えば毎週または2週間ごとに1時間半ほど等の短い時間でいいので、自己を振り返って、ホールネスを体現するワークショップを開く方法もあります。会社のすべての人を招いて、とにかくホールネスを体現してもらうのです。

 

すべての人事プロセス

雇用から会社での会話の仕方まで、すべてを、企業全体がホールネスを体現できるように、もう一度見直してみるのも一つの手です。

 

執行委員会

中には、企業のトップから始めることが大切だと思う人もいます。まずは、役員など上部の管理職のグループにホールネスを取り入れて、それから他の人たちにも紹介するのです。

 

仕事と直接関係はしていないが、職場と隣接している場所で行う

例えば、フランスに本社がある工業関係の会社では、工場の中に、道具が揃っていて物を作ったりできる研究室を作っていて、そこに定期的に作業員やマネージャー、ファイナンスの人、マーケティングの人など、会社の中のさまざまな分野の人たちを集めて、1週間かけて新商品の試作品をつくったりしています。そこでは、ピザを食べたりドリンクを飲んだりしながら、遅くまで働きます。

1週間の間に、会社の中の役職に関係なく、さまざまな仲間と、とても質の高い関係が築けるのです。これはほとんどの人にとって初めての経験で、普段働いている場所とは少し離れた場所で行われます。

また、コロラドのある企業では、1年に1度、タレントパーティーというのを開いて、そこで歌や大道芸など、自分の特技を披露します。これも普段の仕事から少し離れた場所でのことですね。

やり方はいくらでもあって、基本的にはどんなセッティングでもいいのです。このビデオを通して、少しでも役に立つアイデアをお伝えできていたら嬉しいです。

 

5.8 会社全体でホールネスについて話す

もし真剣にホールネスを体現できる会社をつくりたいと思っているなら、考えや使う言葉について共有しなけれなならない時が必ず来ます。

まずは自分自身がホールネスのやり方を学び、徐々に一対一の会話やグループセッティングなどを通して、他の人とも意味のある素晴らしい関係を築くようになりますが、いづれ会社全体でホールネスについて話さなければならない時がやってきます。

私の著書でも、どうやってこれを行えばいいか紹介していますが、1日から3日くらいのセミナーを開いて、会社全体でホールネスについて話す機会をつくるのです。あなたが伝道師になる必要はなくて、ただそれ自体に名前を付けることが大切です。なぜなら、普段仕事で使っている言葉には、適した言葉がないからです。

最終的には、共通したエネルギーや認識を企業全体で分かち合うことが出来るようになります。どんな方法を使ったとしても、ある時点で、全員が、心配せずに安心して自分をさらけ出すことができる瞬間がやってきます。

そして、仮面の下に隠さず、自分の内面を出せたことで、自分だけでなく、企業にとっても何が変わったか、何ができるようになったのかを発見してください。

また、自分を安心して出せる場所とそうでない場所では、どんな違いがあるでしょうか?そして、もしこのように自分の会社がいつも自身を安心して出せる場所だったらどうだろうか?

どう違うだろう?と想像してみてください。そして、それのために、何を早急に変えなければならないか考えてみましょう。費用のことや、会議の在り方、トレーニングが必要など色々あるでしょう。

今私がここで挙げた質問は、企業全体でホールネスを体現するためには、すべて考える価値があるものです。

 

会社の中で出来るだけ多くの人と共有する

会社全体で取り組む必要があるので、数名のボランティアや仲のいい同僚などの5-10人の小さなグループ内だけでホールネスを共有して、残りの会社の人たちは全然わかっていない、ということになっては意味がありません。

自分を安全にさらけ出せる時にどう感じるか、逆に自分をさらけ出さない雰囲気のときにどう感じるか等、常にホールネスについて考え、シェアすることによって、企業全体でホールネスを体現することができます。

 

5.9 ホールネスの細かいルールを文書化する

ホールネスを体現している企業について調べてみると、興味深いことを発見しました。多くの企業が、ホールネスとは何か、自分たちにとってどんな意味があるのか、また、ホールネスを体現するための実践方法などについて事細かく文章にしているのです。

企業の中には、尊敬・チームワーク・改革など、社員が全く覚えていないような無意味な理念を掲げている場合もありますよね。また、ある企業は、とても細かく、例えば社員同士がどのように他の社員と関わりたいか等を明確にしています。でもこれは、自分自身を自由にさらけ出すのを妨げる雰囲気を作っています。ホールネスを体現するために私たちが目指しているものではありません。

みんなで共有できる細かいルールをつくってみましょう。

例えば、ワークショップやトレーニングで、「あなた」を主語にして話すのではなく、「私」を主語にして話すというのも一つの例です。人が話しているのを妨げたりせず、ただ自分の思っていることを他の人とシェアするのです。

または、もっと深い部分まで話したいなら、怒りに対する対処の仕方についてや屈辱的な態度や言葉を使わない等、細かい点に至るまでルールを決めてトレーニングすることが可能です。

何が自分たちの企業の中で取り入れたいことで、何が必要ないものかをはっきりさせるのです。

では、どうやってこれらの細かいルールを、文章に留まらず、実際に企業の日常の中に取り入れることができるのでしょうか?私だったら、どうすれば実行に移すことができるか、チームに1日考えさせると思います。

どういう方法がいいかは、あなたが一番分かるでしょう。要は、細かいルールをまとめた文章がただの文章で終わらずに、ホールネスを体現する上での参考資料としてきちんと活用できるようにすることが大切です。ホールネスを体現する良い方法が見つかったら、お祝いしましょう。

 

5.10 ホールネスに対する抵抗が生まれたら

すべての人がホールネスという考えに喜んで賛同してくれるわけではありません。

人によっては、不安に感じたり神経質に考えたりしてしまうかもしれません。私も昔はそうでした。でも、相手が抵抗しているサインを出していたら、それは興味深いことだと思ってください。もしかしたら、その抵抗心の奥には、何か役に立つ情報が隠れているかもしれません。それには2つの理由が考えられます。

 

  1. 心の奥底から話すということは、いつもただのインヴィテーションにすぎません。決して誰かに強制してはいけません。抵抗するというのは当たり前の権利です。安心して心を開ける場所を提供して、自分のストーリーなどを話して引っ張っていくことはできますが、決して相手も参加するように強制してはいけないのです。参加したければするでしょう。もし、円になって順番にシェアしていこうとする場合、心の奥底から感じていることを言わなければいけないんだという、プレッシャーを相手に与えてしまっているかもしれません。ですが、自分の番が回ってきても、スキップしたければしていいのです。
  2. もしかしたら、ホールネスを体現させるためにホールネスをしようとしていたかもしれません。始めは確かに、いつも仕事に関係しているべきで、なぜこれが仕事にとって大切かについて話しますよね。でも時にはプライベートな内容の会話も必要です。例えば、もしセルフマネージメントをする工場の仲間たちとこれを実践するとして、ある人はチャイルドケアが見つからないので、遅番がいいなどあるかもしれません。こういうプライベートな内容の会話を通して、スケジュールも組みやすくなりますし、直接その人にとって一番いい方法が見つかりこともあります。

 

でも、もしホールネスを体現するためにシェアをするとしたら、それは変です。なぜ仕事のためにこれをしなければならないのか、と思うでしょうし、不自然で身構えてしまいます。

結果的に、じゃあ個人的な感情は出さないようにしよう、でもこれが他の人にどのように映るんだろう、と不安に思うでしょう。

人は新しく学んだことを、すべてに適用してみたくなりますが、カルトのようになってはいけません。

これまでと違う場所に他の人を招待するわけですが、目的と違う場所へ行ってしまわないように、気を付けましょう。

もしかしたらこの2つのどちらでもない可能性もあります。

プレッシャーも与えていないし、すべて仕事に関係していて、他の人がどんな風に心を開いてくれるか待っているけれど、相手にとっては身構えてしまうとしたら、それはそれでいいのです。

その場合は、抵抗されていることも真剣に受け止めて、すべて受け入れることをお勧めします。

前回のビデオでもお話したように、「これはあなたにとっては新しい考えで、受け入れるのが難しいかもしれません。あなたが苦しんでいるのを見たくないので、私は無理に修正しようとはしません。」と単純に伝えるのです。

そうすれば、もしかしたら、なぜ難しいと感じているか、何に対して居心地が悪いか、どうすれば居心地がよくなるのか、話してくれるかもしれません。そしてこのこと自体が、ホールネスの心の底に感じていることを話すということと同じです。

決して強要はせず、ただ相手が安心して心を開ける場所を提供するのです。ホールネスに慣れるために、手伝ってくれるコーチを紹介してもいいかもしれません。

一番大切なことは、企業としてこの方向に進んでいくことを伝えることです。時間が経つにつれて慣れていくかもしれないし、どうしても受け入れるのが難しいなら、他の快適に仕事をできる場所を探すのも必要かもしれませんし、見つかればそこに行ってもいいのです。

みんなが同じ方向に向かっていけるように、最大限の努力はするのですが、プレッシャーに感じることはありません。「他に快適な場所があるなら、知らせてほしい。何か手伝えることがあるかもしれないから」というスタンスでいることです。

もしあなたが居心地が悪ければ、それは他の人にまで身構えたり、恐怖心を与えてしまって居心地を悪くさせます。ですが、ホールネスをどうしても受け入れられずに会社から去っていく人は本当にまれです。多くの場合は、はじめは違和感があるでしょうが、徐々に慣れて、自分をさらけ出すということが、とても快適に感じるようになるのです。

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