2019年9月14日、ティール組織著者のフレデリックラルー氏が来日され、講演が行われました。
この講演は、Teal Journey Campus(ティールジャーニーキャンパス)という400人が集まる1dayイベントの中で行われたものであり、ラルー氏以外にもティール組織実践企業や各分野の専門家の方々がセッションを担当されました。
まず、今回のイベントを企画してくださった、世話人の方々に御礼申し上げます。ラルー氏の招聘以外にも、会場の準備やコンセプト企画、グッズの用意などに多くの時間を割いていただいたものと思います。

さて、ラルー氏の登壇は、午前中と夕方の2回。
この記事では、ひとまず午前中をレポートしたいと思います。
講演テーマ
ラルー氏の講演テーマは、「Purpose Story」。ラルー氏の個人的な”目的”についての話です。ティール組織の本を読むと、多くの人は、自主経営(セルフマネジメント)のほうに興味が行きますが、大事なのは”目的”。だから今日はこのテーマを選んだそうです。
印象に残った言葉
※記憶で書いているので、多少のズレはご容赦ください。
”組織の目的の前に、人生の目的が大事。私の人生の目的の話よりも、最も重要なのは、皆さんがこの話を聞いて、何が心に響いていくか?が大事。自分にとって何が真実なのか?だから私の話に異を唱えるのも自由”
”人生の目的があるんだと理解するまでに時間がかかった。子供の頃は優等生だったが、反対の意味では、人から期待されていることだけを学んできたといえる。私は一体何なのか?ということに疑問を持つことがなかった。学校を出た時、幸せだったが、自分の人生は何のためにあるのかは知らなかった”
”マッキンゼーに入って楽しんではいたが、この仕事にどんな意味があるのかを考えていた。既に利益を上げている会社をさらに稼がせる仕事をしていたが、自分の人生に何も響かなかった”
”33歳くらいの頃、大企業の人たちが会社の中で仮面をかぶっているのを見て、企業の中で人が自分を表現できるように支援するコーチになろうと思った。自分の人生の目的を見つけた、と思った”
”でも、それから4年後。2011年の春。何が原因かわからないけど、すごく寂しい、悲しみに襲われてエネルギーがなくなった。その時、私はこれ以上、オレンジ型組織への仕事を続けることが出来ない、と分かった”
”その時、私が今できる最も意味あることとは何だろうか?と自問した。私の人生の目的は何か?ではなく、たった今この瞬間において何をすることが意味があるのか?”
”その答えが、ティール組織という本を書くということだった。私がこの本を書こうとしたのではなく、この本が私に書かれることを選択したのだと感じた”
”自分が目的を発見するのではなく、目的が自分を発見できるように大きな空間を開いておくことが大事。組織も同じで、リーダーの役割は戦略を明確にすることではなく、私が個人的にやったように、この組織がどこにいきたがっているのか?という声に耳を澄ますこと”
”傷が後からの才能になる。子供の頃、いじめられていた時があったが、その経験がもとで、人を観察することを学んだ。それがなければ、「目的」という言葉を使うことが出来なかったと思う”
所感
私はラルー氏の講演を聞いて、二つのデジャヴを感じました。
ひとつは、私が2010年頃から師事している経営とアントレプレナーシップの権威、マイケルE.ガーバー氏の話。
ガーバー氏の詳細はこちらから:https://entre-s.com
ガーバー氏は、子供の頃、サックスホンを習っていました。その教師から言われた言葉が彼の本にも書かれています。(もう70年くらい前の話なので、それを本に書くということはよっぽど頭に残っていたのでしょう)
曰く、
私のサクスホンの教師、メルル・ジョンストンは、よく言ったものである。「マイケル、音楽を作るのは君じゃないんだよ。音楽が君を見つけるんだ。君の仕事は、その準備をすることだよ」同様に、あなたの仕事は起業家になることでも、創造することでもなく、起業家になるためのプロセスにコミットして、起業家と同じような訓練を重ねることである。そうすれば、準備が整ったとき、起業家精神があなたを見つけてくれるのだ。サクスホンの練習によって、音楽を作る力を手に入れたように、起業家精神の訓練を積むことで、ワールドクラスの企業を作る力を手に入れるのである。(「起業家精神に火をつけろ!」より)
ちなみに、ガーバー氏は、起業家精神とはすべての人々のうちに存在する人格、と言っています。何かのきっかけでその起業家精神が目覚める瞬間のことをAwaken(目覚め)と呼んでいます。
今回のラルー氏の講演では人生の目的がテーマでしたが、ガーバー氏は起業家精神という文脈で同じ話をしているのだと思いました。
もうひとつが、これも昔、ガーバー氏から紹介してもらったのですが、「夜と霧」という本です。
この本はユダヤ人収容施設から生きて帰ってきたビクトール・フランクル氏が描いた本です。最初はなぜガーバー氏がこの本を紹介してくれたのか、よく意味がわかりませんでした。しかし、いまはよくわかります。
私たちは、生きる意味を問うてはならないのです。人生こそが問いを出し私たちに問いを提起しているからです。私たちは問われている存在なのです。(「夜と霧」より)
ビクトール・フランクル氏が収容所の中で生き残れたのは、「自分は生き残って、帰ったらこれをするんだ」という思いを持っていたからではなく、「自分が生きて帰るのを待っているものがある」という思いだったそうです。
大事なのは、耳を澄ませて、人生や組織がどう生きたいのかという声を聴くこと。思い返せば、独立した20代のころは、自分がやるべきだと思っていることばかりをやってきて、あまりうまくいかなかった経験があります(もちろん、他にもいろんなものが不足していた理由もありますが)。
いまはどちらかというと、求められてやっている感があり、ラルー氏の言っていることに少しは近づいたのかなという気もしています。
以上、Teal Journey Campus(ティールジャーニーキャンパス)ではもっとたくさんのセッションがありますが、取り急ぎ、午前中のラルー氏の話を聴いての所感をレポートさせていただきました。
追記:夕方のセッションから
ラルー氏二回目の登壇は夕方。参加者からの質問に答える形で、「組織の目的」を発見するにはどうすればいいのか?という話題に話が及びました。ここでいう目的は、書籍の中の「存在目的(Evolutionary purpose)と考えていいでしょう。
ラルー氏いわく、
組織には、組織自体に目的がある。組織として生きたい方向がある。この組織はどう生きたいのか、どこに行きたいのか?という声に耳を澄ますことが大事。
とのことでした。ちょっと難しい話ではありますが、私としては、これもマイケルE.ガーバー氏が教えてくれたことと同じテーマなので、非常にしっくりくるところがありました。
ガーバー氏の言葉を引用すると次の通りです。
ビジネスをあなたの一部としてではなく、あなたから独立したものと考えるべきだ。ビジネスは1つの生き物であり、最終的にビジネスはそれ自体として存続するし、それ自体として命を持ち、それ自体として意志を持ち、それ自体として法を持ち、それ自体として目的を持ち、それ自体として意図を持つ。
それは生きているのだ。それはあなたの創造物だ。うまくいくためには組織化されている必要がある。言い方を変えれば、あなたの身体と同じように、そのシステムも未知の法則を持っている。ビジネスにそのシステムを教え込む必要があり、未知の法則を持っているシステムとビジネスを統合する必要がある。
これら全部のバランスはどうしたら見つかるだろう? この生きているものが、健全で、生産的で、喜ばしく、意図的で、クリエイティブな役立つ機能を実現するにはどうしたらよいだろう? ビジネスに持ち込めることのできる最高の知性とは、起業家的な視点であり、創造的アプローチであり、ビジネスを自分からは独立したものとみなす正確な物の見方なのだ。ビジネスが独立したものなら、あなたが明日死んでもビジネスは続いていくだろう。
逆に言うと、この話を30年以上前からしていたガーバー氏は凄いなと改めて思った次第です。
創業当初から明確な目的を持ち、それを変わらず貫き通して成長した会社って意外と少ないものです。実際のところは、いろいろ試行錯誤しながら明確化されてきた会社が多いのではないでしょうか。そういう会社では構成メンバーや顧客からの声を取り入れていく中で、自然と目的が”生まれてきた”のだと思います。
「ティール組織マップ」について詳しく学びたい方、実践したい方はこちらから
ティール組織マップのダウンロード
研修レポート動画版
https://org-map.com/blog/201908eventsreport/
本場発「ティール組織」リーダー養成 1DAYワークショップ
ティール、インテグラル理論の本場ヨーロッパでの研修を受けて、ティール組織実践のための1DAYワークショップを開催させていただきます。
詳細&お申込みはこちらから:https://teal1day.peatix.com/