戦略的計画の必要性【フレデリックラルー氏動画⑥要約】

「戦略的計画の必要性」と題して、「ティール組織」著者のフレデリックラルー氏による動画の要約をお届けします。

フレデリックラルー氏は書籍のほかに、100を超える動画を公開してくれています。本記事では、その中の「シリーズ6(後半). 戦略的計画の必要性」の要約をご紹介させていただきます。

ぜひご参考にされてください。

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戦略的計画の必要性

この動画は、戦略的計画に関する2つの動画のうちの1つ目の動画です。何人かのリーダーと「戦略的計画は必要か?」話していた時に、私は隠れた問題を感じました。一つは、戦略的計画に、私達がすべきことが全て含まれているように捉えられている事です。もう一つは、その一方で、戦略的計画無しで大丈夫か?と心配するのです。こうした経験から、この動画で戦略的計画について、私の考えをお話します。

私は、存在目的を感じ取ることで、多くの戦略の変化が生じると思っています。フランス語には、それにピッタリの言葉があります。「小さい変化に耳を傾けよ」です。高度に自主経営出来る組織では、全員が小さい変化を注視していて、それによって組織全体の方針は変更されます。外的環境は常に変化しており、存在目的は新しい機会に向かう意思があると私は信じています。

2年か5年先を見据える戦略的計画をもつ古い組織では、20年先の未来を予想し、一年後、翌日のことを計画するのです。それらの企業の真意が私には分かりません。どんな不安、痛みや機会で、そうした計画をしようと思うのでしょうか?

私が思うに、一つは、計画がある状態に慣れてきたが故に、あいまいさや、不正確さ、可能性のあるような状態に対して、どう対処していいか学んでいないからです。全てが書き記されている状況を好むのです。

 

戦略的計画が必要になるケース

もう一つは、本当に戦略的計画が必要なケースがあります。あるメーカーでは多くの成功を収めていて、高度に自主経営できており、4年間でターンオーバーを2倍にし、利益は10倍になっていました。組織の人々が、正しいことを実行するという感性を持っていたからです。しかし、CEOはまだ戦略的計画を求めて悩んでいました。私はなぜそう悩むのか聞き出そうとしました。その対話を通して、計画が必要になるケースがあることを知りました。

1.      市場や技術の劇的な変化

技術革新や新しい機会によって、明らかに新しい世界が拓けたと認識する時が決ます。そのようなときは、確かに立ち止まり、その状況を反映することが必要です。

2.      大規模な投資

新しい工場を新しい国に立ち上げる時には、確かに現状を見直し、最終決定をする前に情報を整理する必要があります。

3.      あまりにも統率かとれない時

組織の人々が四方八方に意識を持ちすぎて、統率が取れないようなときは、一度立ち止まって正しい一つの方向を決めるべきです。

4.      自己マネジメントには明快さが必要

自主経営を始める時には明快さが無いことに気づくはずです。目的がどの方向にあるのかさえも分からないと感じるのです。

 

この動画でお伝えしたいのは、もしあなたが戦略的計画を必要だと感じた時には、何に心を痛めているかを問いかけて欲しいという事です。明確な答えがない時には、古典的な風習から戦略的計画のように書き出さないといけないと感じているだけです。そうでなければ、上記の例のように必要なケースがあります。私も、自分自身にいつも計画の必要性を問いかけています。

 

どのように戦略的計画を立てるのか

前回の動画で「戦略的計画が必要か」というテーマでお話しし、たいていの場合はNOだが、YESとなる場合もあるとお伝えしました。YESの場合において、どのように「意識と応答」を維持したまま、戦略的計画を立案できるでしょうか?

スペインに自主経営の会社があります。彼らは、戦略的計画の代わりに、戦略的思考という言葉を使います。彼らに意識と応答を維持したまま、どのように戦略的思考を行うのか尋ね、以下の3つの答えを貰いました。

1. 意識をより高めること

世界や組織の中で何が起きているのかを認識するために、より多くの人々が意識をもつことです。典型的な戦略的計画では、マネージャー、クライアント訪問、インタビューを通して、外的環境の変化を読み取っているでしょう。しかし、それだけでは、組織内の知識や分別を失っています。自主経営の出来る個人が多くいる組織では、より多くの意識を活用できます。各個人が外部と繋がっており、組織の存在目的に照らして、正しく意識を研ぎ澄ましているのです。

そう考えると、どれほど多くの情報が得られるかお判りでしょう。しかし、こうした組織は一朝一夕に築けるものではありません。出来る限り、組織の全員がそうした意識をもつように文化を醸成してください。間違っても、特定の人にそうした役割を押し付けたり、意思決定を任せたりせずに、いつでも意見交換が出来るようにしてください。

 

2.      多くの人の意見を結集する事。

一人一人の意識が、存在目的の目指す方向に合っているかを確認するのです。こうした結集は、出来る限り大きいグループで行うべきと考えています。では、どのようにして、そのような大人数で意識を統一するのでしょうか。それは、優先順位を決める事です。

私達は常により良い未来に向けて優先順位を決めています。優先順位は、各個人の意識が適切な方向に行われる為のもので、優先順位の決定だけを求める物ではありません。ですが、一般論として、方向性を示唆するという意味を持ちます。優先順位の付け方には様々な方法があると思いますが、いずれにしても、目指すものに対して正しい方角かを確認するものだということです。

 

3.      必要最小限の計画をすること

典型的な戦略的計画においては、いつも計画が過剰になっています。プランニング、マイルストーン、実績評価などから始めて、膨大で詳細な計画を作成するでしょう。

しかし、常にこうした計画をする必要は全くありません。ある意思決定を今すぐにしなければならない場合にのみ、評価や計画を実施してください。ある高額な機械を購入する場合は、その機械の能力を評価し、計画を立てる必要があるでしょう。あるいは、非常に複雑なビジネスを始めようと考えた場合に、どのような手順でそれを実行するか考える必要があります。しかし、計画することが心地よく、慣れているからという理由で計画することは極力止めましょう。なぜなら、たいていのことは意識を高める事と多くの人の意見を結集する事で十分だからです。

 

典型的な戦略的計画を実施したいと思うでしょうが、意識することや意識を結集する事は薬のようなものです。組織によっては厳格な組織分掌をしている場合もありますが、それをやめて意識を高め、意識を結集すれば素晴らしい洞察や結果が得られるはずです。私が提案したい戦略的計画あるいは戦略的意思は、こうした意識とそれらの結集の上に成り立っています。あなたが、ひとたび結集を経験したなら、その一年後にまた立ち返って、その方法が正しかったかどうかを検証して頂ければと思います。

 

 計画することをやめるべきか?

古いマネジメントモデルの根本的な理念は、計画です。厳密な計画を立てる事が、未来を予測するのに最適だというのです。意識と応答の観点からすれば、計画を捨てることに抵抗は無くなるでしょう。しかし、これは単純化しすぎです。計画すること自体は悪くないのです。問題は2つあります。計画しすぎる事と、計画を信じる事です。これらについて掘り下げてお伝えしたいと思います。

 

計画しすぎる事

一つ目の問題は、計画しすぎる事です。本来は必要でないと思われるような場面でも、計画せずにはいられないのです。そこで、ビジネスに必要な最小限の計画とは何か?という質問が出るでしょう。たいていの場合、本当に必要な計画の少なさに驚くはずです。

数年前、私は職場の大規模なリノベーションを経験しました。これまでにないような大きなリノベーションです。はじめは非常に詳細なプランを計画していました。どのコントラクターが、どのタイミングで、どんな作業するのかというような詳細な作業工程です。

そして、それに意味が無いことに気づきました。数週間、半年、一年先と細かく計画しましたが、納期遅れはすぐに起こり、私や他の皆に多大なストレスを与えただけでした。私は、本当に計画するべきものは何だったかと考えました。窓がつけられる前に建設が完了し、冬までにそれが終わることです。冬までなら建設を続けることが出来、内装を冬の間に実施できます。

しかし、そうでなければ冬の間何か月も作業を止めることになるのです。それだけが、計画の中でまさにやるべきことだったのです。これは私的な経験に過ぎませんが、美しい全体的な作業工程の詳細は必要なく、本当に計画すべきことはごく一部に限られているのです。

そうはいっても、仕事の種類によっては計画が必要なものもあります。例えば次世代のiPhoneを作るような場合には、多くの計画を必要とするでしょう。なぜなら、何百というパーツを結集して製造されるので、それぞれが適切な時にやってこないといけないからです。

 

計画を過信しないこと

2つめの問題は、自分たちが立てた計画を過信することです。もしわれわれが自分たちのプランを信じたなら、私達は現状に耳を傾けなくなるでしょう。例えば、3年計画を立てればあなたはそのプランがあることに安心して、現状をつぶさに観察しようとしないでしょう。

注意するべきことは、その計画は石に記されたように不変のものではないということです。常に、変化させ、最適化させる必要があるのです。ここでもう一度明らかに言いますが、今すぐにすべての計画を止めろと言っているのではなく、何が最小限の計画であるかを考える事と、その計画を常に更新し最適化する必要があるとい伝えたいのです。

 

予算なしで本当に良いのでしょうか。

いくつもの組織と対話していると、予算という概念が必要か?とか予算無しで実行できないか?と疑問が聞こえてきます。これは、予算という悪しき慣習が非常に痛々しいものだからでしょう。

多くの時間と意見の対立を生み、可能な限り多くの予算を手に入れるために、中間層、経営トップに働きかける、その戦いの無意味さに辟易するからでしょう。当然、存在目的の観点からは、予算は意識と応答を止めることになるので、意味がないと考えています。

しかし、冒頭の質問に対する答えはYESでありNOです。大切なことは、あなたの組織にとって何が本当に必要かということです。つまり、あなたが今取るべき意思決定にどんな予算の見通しが必要か考えるべきだということです。もし、今すぐに取るべき、意思決定が無いのであれば、予算は必要ありません。もし、いますぐに決定が必要なら、ただ今の段階で予想される必要な額だけを考えて下さい。ただ予想するだけです。

 

最小限の予算に留める

Burtzorgでの例をお示しします。彼らは非常に限定した範囲でのみ予算を見積もっており、たった紙一枚程度の予算計画です。

ティール組織においては、予算は相違や偏差を追うために用いる物ではありません。すべての予算に対する実績を細かい数字で議論することには、何の意味も持たないと考えています。投資に対しても同様に、あなたのビジネス環境に応じて予算が必要かどうかは変わります。投資が財務状態に対して健全な範囲にあるかを確認し、信頼できる人の助言を得ることが出来ればそれで良いのです。

一方で、資本を多く必要とするもの、例えば製造における新規機器の定期的な導入などにおいては、投資できる範囲以上の投資や、期中での予算不足が起きないように、な毎6か月ごとあるいは一年ごとの機会を把握し、優先順位をつけて、投資状況を健全に保つ必要があります。

 

予算を不要とするタイミングはいつが適切か

予算を極力減らすのはいつが適切でしょうか。残念ながら、これに対しては良い回答を持っていません。多くの組織では、予算は組織の背骨とも呼べるほど重要なものです。もし、この背骨をあまりに早く引っこ抜いてしまえば、特に助言しあう環境などが成熟していないような場合に、組織が崩壊しかねないと思っています。

ですから、あなたの組織が、本当に成熟した会社で、予算を不要にするという痛みを伴う改革に耐えられるかを、成熟度という強力なシグナルで判断してください。もし、時期尚早と感じるなら1年先延ばしにして、その間に助言しあい、信頼しあう組織の文化を醸成してください。

 

 

 指標と目標は必要でしょうか?

もう一つ誤った理解をただす必要があります。指標や目標ならびに評価が絶対に必要だという誤解です。

予測と制御の世界において、ひとたび計画を立てると、常に全てを把握する必要が生じ、目標に対する進捗を監視されます。多くの人はこれをうまくいっているとは思っていませんし、目標は非生産的なものだと分かっています。

そして突然、大きな穴を見落として、小さい標的に集中し、すべてを委縮させ、言葉遊びを始めます。経営層が提示した目標は、私達が世界に耳を傾ける事を辞めさせてしまいます。複雑だけれども良い仕事は、ある一つの目標に対する成果では測れないはずです。

結論としては、あらゆるものを評価してしまう癖をやめましょう。指標や目標は、基本的には必要ないのです。しかし一方で、戦略的計画や予算に関する以前の動画を見てお分かりのように、ビジネスの環境によっては、そうした評価が必要になる場合もあります。

Buurtzorgのような組織は必要最小限しか評価を行いませんが、一方で多くの評価を必要とする組織もあります。製造業では、各工程でどれほどの熱がかかり、安定に生産できるかなど、詳細な測定が必要なケースもあります。しかし、実用的には、ほとんどの場合で、今行っている評価よりもっと少ない評価が好ましいと言えます。評価することが文化になっているから、常に評価してしまうのでしょう。

 

評価する事の本当の目的

評価の本当の目的は2つあります。一つは自己是正です。間違っていることに、すぐに気づく必要があります。特に製造業などでは工程ごとに確認する必要があります。二つめは、外的環境を見直すことです。ステークホルダーなどに現状を説明するには、適切な評価を示す必要があるでしょう。

目標が必要かという別の質問もあるでしょう。ある組織では、トップダウンの目標の設定ではなく、各チームが目標を自分たちで決めています。そうした環境では、自分たちで明確なモチベーションとして目標を設定できます。個人の野心であるべきですが、決して外的環境で何が起こっているかを考えたり、何がしたいのかセンシングして応答したりする事を妨げる物であってはなりません。いくつかの評価は必要な場合があり、自己是正や、外部環境を見直す意味では必要と考えています。しかし、評価や目標そのものに目的があるようになってはいけません。

 

なぜ私はビジョンという言葉が好きではないか。

このビデオは、あなたにとって小さいトリビアになりうる短いビデオだと思います。確かに些細で、言葉に関することですが、このビデオのテーマは啓発的で意義深いものだと思います。組織において、人々はよく3年あるいは5年先のビジョンを持っています。しかし、ビジョンという言葉が、どうも私にはしっくりこないのです。それも当然です。存在目的の観点でいえば、ビジョンはどこか組織から与えられるように聞こえてしまうからです。

すなわち、典型的な古い戦略的計画を組織に求めているように聞こえるのです。そうではなく、組織はどこに向かいたいのか、皆が耳を傾けるべきなのです。この違いをよく理解してからは、私もビジョンという言葉を使っています。なぜなら広く浸透していて皆が理解できるからです。

しかし、私はCALLという単語の方を好みます。組織が3年後に本当に進んでいたい方向はどこでしょうか?何があなたに呼び掛けているでしょうか?あいまいに聞こえるでしょうが、実際に存在目的はそのような声としてあなたに語り掛けています。ビジョンよりもっと控えめで、不安定なイメージです。私はそうしたCALLを聞いたことがあると考えていますが、それは変化しますし、私はそれをよく聞き取れると思っています。ビジョンを語る代わりに、CALLを語りませんか。組織の中から、あなたを呼ぶ声です。

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