存在目的に関する誤解と本当の意味【フレデリックラルー氏動画⑥要約】

「存在目的に関する誤解と本当の意味」と題して、「ティール組織」著者のフレデリックラルー氏による動画の要約をお届けします。

フレデリックラルー氏は書籍のほかに、100を超える動画を公開してくれています。本記事では、その中の「シリーズ6(前半). 存在目的に関する誤解と本当の意味」の要約をご紹介させていただきます。

ぜひご参考にされてください。

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1.       存在目的(Evolutionary purpose)の真の意味とは?

存在目的に関する最初の動画では、存在目的とは何かということをはっきり説明することから始めたいと思います。なぜなら存在目的に関する誤解があるからです。存在目的とは、組織を一つの生命体として捉えるという別の視点から考えて、継続的にその目的を問うことです。

 

機械的な組織 vs 生命体としての組織

現在の経営の主流の考え方は、「機械的な組織」です。機械は生命体ではなく、少ないエネルギーで稼働し、次のステップや方向に行くのに少ない労力で済みます。従って、あらゆる経営者は明確なビジョンや戦略を示すことが彼らの役割だと思っています。それがあれば、組織のすべての統制が取れて、ビジョンや戦略に向けて効率的に実行に移すことが出来ると考えているのです。こうした未だに存在する考えでは、組織を非生命体と捉えて、プログラムされた機械と考えています。

我々は「生命体としての組織」あるいは生態系と捉えており、それらはエネルギーを必要とし、意識を持ち、世界に対して何かを証明したいという先天的な欲求を持っています。この考えは、経営の考え方を完全に変えるものです。我々の考えるリーダーは、未来の予測や制御を決定するのではなく、より簡潔で控えめな方法で経営を行います。存在目的がどこから我々に問いかけているか、耳を傾け続けるのです。この考えや用語は、馴染みがないので不自然に感じるかもしれませんが、クリエイティブな人々をイメージしてみてください。彼らはどこからともなく曲や小説のアイデアが降りて来て、それを世界に向けてはっきりと形にしたと言うのです。これが組織の存在目的にも言えるのです。存在目的はまさにそこにあり、音楽や小説を書くのと同じです。私たちは組織がどうなりたいか、耳を傾け続ける事が出来るのです。

 

「予測と制御」から「意識と応答」へ

機械的な組織の考え方では、私たちは世界、未来そして自然現象を予測し制御する必要があります。そこには、未来を予測し制御する為に使用した機械的な仕組みがあります。ビジョンを設定することから初めて、5年や10年の計画を立て、3年の中期計画、年間予算、多数の重要経営指標そして比較可能な月間予算などに加え、これらの計画に紐づく報奨金や自社株購入制度などです。これらはすべて将来の予測と制御と、それに向けた実行が必要です。

今や世界は複雑化、不安定化、不確実化が一層強まっており、未来の予測や制御が困難です。完璧な計画を立てても、3か月後には、もはや古いものとなってしまいます。そこで、予測と制御の考えから、意識と応答という考えに移行するのです。はっきりとした目的意識を持ち、その意識を継続し、目的は我々に何を求めているか、周囲の環境がどう変化しているか、意識して応答し続けていきます。こうした密接な関係性は深く、著書「ティール組織」の本の中で実践方法を説明しています。

それでもまだ、ビジョンを掲げ、予算を立てて、目標を決めますか?こうした物は絶えず変化する必要があり、存在目的を真に問う必要があるのです。存在目的とは単に明確に目的を持つことではなく、継続して問い続ける事です。この動画シリーズでは要点を説明していますが、誤解や理解不足が無いために本を読んで頂ければと思います。そして、「意思と応答」に基づいた存在目的という概念を持って頂ければ幸いです。

 

2.       組織の最大化と自衛の向こうにあるもの

今日、私たちは終わりない、心無いそして持続性のない競争におかれています。組織は、常に利益を拡大させ成長させなければならず、計り知れないプレッシャーにさらされています。営利団体だけでなく、非営利団体においても、一つを得れば、さらにもう一つ、また一つと、成長への要求が増大するのです。15年間多くの組織を見てきましたが、自分達の存在目的に耳を傾けようとしたケースや、成長や利益の追求を過度に求めないと決断したケースを一つも見たことがありません。存在目的がどうであるかに因らず、真の目的は組織の最大化あるいは自衛だと信じてやまないのです。

組織を一つの生命体として捉える考え方に立ち返ってみると、このように成長だけを求めるのは「がん」と呼ばれるものだけです。そして周りの細胞や生命体を殺してしまうのです。人間は生活圏を広げ続け、地球上ではがんに近い存在と言えるかもしれません。自然界に目を向けると、あらゆる生き物はバランスをとって共生しており、特定の1種のみが繁殖することはありません。森林業をみると、より太く、まっすぐな木材を求め続け、木を伐採するのです。同じような考えが、組織の利益の追求にも見られるのです。

 

生命体と同じで、死ぬ瞬間が来て、新しい生命の栄養となる

自然界ではあらゆる生命体に死ぬ時が来て、新しい生命の栄養となります。組織においては大半の人が、組織の利益の最大化と自衛を本来の目的と思っています。組織の存在目的はそうではないのです。あなたは、“組織の最大化や自衛だけを目的とした価値観”か、“存在目的からして今の状態で十分だと受け入れる価値観”と、どちらでビジネスを行いたいですか?後者の価値観では、あるべき道をたどっていき、ゆくゆくは次の生命体への栄養となるでしょう。

ここで2つの例をお話ししたいと思います。一つ目はオランダの介護業界でビジネスを展開するビュートゾルフ(Buurtzorg)の例です。彼らの隠された成長源はソフト管理の考え方です。彼らが提供する介護は他の企業と差があるわけではなく、彼らのビジネスを守るものは何一つないのに、信じられないほどの成功を収めているのです。伝統的な企業の考え方は、企業秘密を厳重に守り、競合が真似できないようにします。これは組織の最大化や自衛を考えた故です。考え方を変えてみてください。患者さんに素晴らしい介護を提供することが本来の目的のはずです。

その考えであれば、ただ有効な介護方法を示せばいいはずです。そこで、ビュートゾルフ(Buurtzorg)の創始者Jos de Blokは、最適な介護を提供するための全てを詳細に本にまとめました。そして、初版が完成すると全ての競合に、それを送ったのです。今でもビュートゾルフ(Buurtzorg)のWebサイトに行くとその本を見ることが出来ます。

競合が真似をすると考えるので、普通はおかしな行動だと思うでしょう。しかし、そこがポイントです。すべての患者さんにより良い介護を提供するには、競合にも同じように介護してもらうべきなのです。ビュートゾルフ(Buurtzorg)のような非営利団体だからできると思うでしょうが、存在目的の持つ考え方そのものと言えます。

もう一つの例がBen Kuikenです。彼は公立図書館に助言していました。電子書籍など異なるスタイルでの読書が広まり、図書館が大きく受けていました。担当者はどうやって図書館を守るかに頭を悩ませていたそうですが、彼は真の目的は多くの本を多くの人とシェアし、読書や学習を手助けすることと説いたのです。そこで彼は、図書館にすべての本がなくてもいい、学校や駅などに分散すれば良いと考えました。これまでの図書館のスタイルをやめて、新しい組織に変える時だと気づいたのです。

私があなたにご提案したいのは、組織の最大化や自衛を考えるのをやめること、組織の現状を観察し存在目的に従ったありのままを十分だと受け入れる事です。あなたの考えるままの組織でなくなった時、組織は一度解体して新しい組織の栄養源となり、より良い目的を持った新しい組織が生まれると考えるのです。

 

3.       我々を導く星としての目的

このシリーズの動画で存在目的とは単にこれが組織の目的だと掲げる事ではないと説明しました。この動画ではそのことについて説明します。これは非常に重要で、組織の存在目的に常に耳を傾ける事につながります。今日、大半の組織は自分達の目的を誤った理由で掲げています。目的を示すのが風潮だとか、報告書やWebサイトに乗せるのに必要だとか、マーケティングツールとして考えています。もしくは、社員の働き甲斐として掲げています。そうではありません。

私たちは世界に向けて何か重要な宣言をする義務があると考えるべきです。組織はそうした目的のための容器でしかありません。こうした観点で考えると、物事をより明確に簡単に捉えることが出来ます。Romy Gerhardという組織コンサルタントの例を挙げます。彼女から聞いたオーストリアとイタリアの国境にホテルを所有する家族の話です。彼らは新しい大きくて綺麗なスパホテルを山上に建築する計画で6-7年をかけて準備を進めていましたが、いまだに建築が進められていません。その建築が難しく困難なものだからです。

Romyは彼らに心の底から感じる本当の答えを問うように言いました。そして、すべてを白紙に戻し、一から考え直させたのです。どの建築家を雇うか、建築計画を申請する、どの施工業者にするかなどを、Romyの手法に沿って決めなおしました。そこで何が起こったかというと、白紙に戻してから僅か1年半未満で最初の宿泊客を迎え入れる状態になったのです。驚くべきことです。考えが驚くほど単純化され、優雅に見えるほどきれいにまとまったのです。

システム建築という手法を通して、常に「このタイミングで必要なものは何か」と心の底に答えを問い、存在目的がどうしたいと感じているのかを一貫して確認したからです。存在目的に耳を傾け続ける事の重要性の一端を感じるエピソードです。組織は世界で何かを証明したいと考えており、その目的に耳を傾ける事で、物事は驚くほど簡単に優雅に解明されるという例の一つと言えます。

 

目的は常に変化している

もう一つ、明確な目的を持つことがなぜ重要かと言えば、セルフマネジメントに繋がるからです。明確な目的は、多くの提携や協業を生みます。

 

ここで、目的を宣言することに関して話させてください。目的の宣言とは、目的を文として明確に記載することです。興味深いことにビュートゾルフ(Buurtzorg)は、これまで一度も明確に目的を記載したことがありません。彼らのWebサイトを今確認しても、なお目的は書かれていません。それでも、ビュートゾルフ(Buurtzorg)は目的に基づいた活動を続けていて、常に今何が必要かを判断出来ています。

ここであなたに問います。私たちは明確な目的を書いて掲げる必要があるのでしょうか?私はこれまで目的の宣言を紙に書き起こさなければならないと感じたことはありません。生命体や生態系はそのような宣言文を書いたりしません。もしあなたが宣言文を書かないといけないと思って、ただ書いているだけなら、目的を書くことで目的が固定されるわけではないということです。目的は命を持っていて、常に変化します。

では、目的を書かないでチームのメンバーの共感を得るにはどうすればよいのでしょうか。常に耳を傾けて、その目的のために自分たちが何を出来るかを考える事です。様々な状況に、どう対処するかを存在目的に問いかけて、つぶさに考えることが重要です。

 

4.       真実に向き合うための勇気はありますか?

現在のビジネスや経済活動の大半は破壊的です。組織の目的に率直に耳を傾けたときショックを受けるでしょう。現存する組織のほとんどは本当に存在すべきではないような破壊的な目的を持っているからです。真の目的が聞くに堪えないので、非常にくだらなくて、表面的な目的の宣言をしています。今こそ、きちんと組織の存在目的に向き合うべきです。

世界中にショッピングモールを展開する会社のCEOに感銘を受けました。彼はショッピングモールが過剰な消費の舞台であり、持続可能とは程遠く、人々を不幸せにしている事実に向き合っていました。言い訳を探すでもなく、正面から向き合っていました。今や何千もの人々を集めるショッピングモールが果たすべき役割は何か、より有益な地域の広場となりえるはずだと考えていたのです。

食肉業界に目を向けると、どのように動物を飼育し太らせているのかを知れば衝撃を受けるでしょう。ほかのあらゆる業界でも似たような事実が隠されているのです。ファッション業界、コカ・コーラに代表される飲料業界、学校教育に至るまでです。どの業界でもお互いを傷つけ、死ぬ運命に仕立てているのです。「その組織は存在する意義があるのか?」を問うための簡単ないくつかの問いを提供します。

 

存在目的に耳を傾ける為の3つの問い

1.      マーケティングをしてはいけない場合、その商品はどうなるか?

広告がない世界でのコカ・コーラを想像してみてください。その商品自体の価値で存在しているのでしょうか。それとも、継続的で強力なマーケティングによりただ存在しているのでしょうか。

2.      透明性はあるか?

ある商品やサービスを購入する際に、それらがどのようにして作られたかの5分間のビデオを見なければならないとすればどうなるでしょうか?衝撃的な事実を見ても、まだ買いたいと思うでしょうか。おそらく誰も肉を買わなくなるでしょう。

3.      バリューチェーンの全コストを商品の価格とした場合、どうなるか?

商品が出来るまでの全体の価格を消費者が支払わなければならない場合でも、また買いたいと思うでしょうか?

これらを問いかけてもまだあなたの製品を買いたいと思うでしょうか。おそらく買いたくなり、不快な思いをするでしょう。眼をそむけてたくなるでしょうし、適当な解決策を探して満足してしまうでしょう。非常に難しいことですが、解釈して少しずつ解決していけるまで、目を背けずに問題に向き合ってください。問題に蓋をせず、蓋を開けてよく観察しなければ、存在目的にも繋がらないでしょう。真実に向き合わなければ答えは見つかりません。

 

5.       どのように目的を決めるか

組織の存在目的を見つけるため準備ができたでしょうか。この動画では、存在目的を見つける方法とだれが見つけるのかについて説明します。その方法は幾度となく組織の真の目的に耳を傾ける事で、極めて神秘的なプロセスです。そのプロセスを続けていると、突然沸き上がるように目的が姿を現します。最初は表面的な周辺環境の理解から始めるのですが、次第に深い領域に降りていきます。そこから突然に何かが現れて、存在目的や組織のビジョンやあらゆるものを垣間見ることが出来ます。まるで、目的には頭、心臓、感情などがあるようにさえ見えます。目的の性質は、まさにその心臓のようで感情の源であるように感じます。ずっと組織の真の目的に耳を傾け続ければ、そうした深いところから湧き上がるものを感じ、何が正しくて何をするべきかを感じ取ることが出来るのです。

 

このプロセスに参加するべき人

二つ目の問いは「誰が」この目的に耳を傾け、存在目的からのメッセージを受け取るかということです。企業は社員にセルフマネジメントを求めていれば、各個人がこのプロセスを担っても良いはずです。確かに、それは一つの正しい要素でしょう。別の観点に、情報源(ソース)があります。ピータークルニクスに関して述べた1.10の動画でも少し説明しましたが、どの組織にも情報源(ソース)と呼べる人物がいます。その人物はより直接的なに存在目的と繋がりを持っていて、組織にとって何が正しいかを告げることが出来ます。アップル社のスティーブジョブズがまさにそうです。この事実を知っておく必要があります。

そして、高度にセルフマネジメントが達成された組織であっても、こうした情報源を資産と捉えて、大切にする文化が必要です。存在目的を見つけるには2つの要素に着目することが重要で、一つはこうした直接的な繋がりを持つ情報源と呼べる人物と、各個人の耳を傾ける力の結集です。もっとも称えられるべきプロセスは、この2つの要素を大切にし、2つの要素をバランスよく尊重することです。FAVI社のジョンフランソワ―は金曜日の午後には、組織の存在目的を確認する時間を設け、特定のグループの意見をヒアリングしています。

最後に、このプロセスに進むのは、本当に真の存在目的を知りたいと思えるようになってからにしてください。破壊的な目標を掲げているようなら、準備が出来ておらず、このプロセスに進むべきではありません。FAVIなどの真の存在目的を知る組織に言えるのは、彼らの真の存在目的は、一つの生命体としてどのように周囲と関わるかだということです。

 

6.       みせかけの目的(Fake purpose)

あらゆる組織で掲げられている目的は、ミッションステートメントや、社員をやる気にさせる為のものやとして捉らえられています。しかし、そのほとんどは、見せかけの目的と呼ばざるを得ません。目的とは単に宣言する為のものではありません。目的とは、組織が世界に向けて何をしたいのかということであり、あなたが感じて認識するものです。

あなたの組織で掲げられているものが、組織のすべてを網羅する羅針盤のようなものであれば、それは見せかけの目的でしょう。そのような目的のもとでは、言葉できれいに飾られたものしか生まれず、何も選択する力がありません。真の目的は、組織に正しい選択を強いるものです。単なる飾りではありません。特定の事柄に対して、明確なイエスかノーを言えるようにしてくれる物が、目的と言えます。もし、組織が世界で破壊的なビジネスを続けることを許しているようなら、それは見せかけの目的です。

 

ビジネスが世界にとって破壊的か有益か

1.      マーケティングをしてはいけない場合、どうなるか?

コカ・コーラが広告をしてはいけない世界でどうなるでしょうか?莫大な広告費をかけても、消費者はあなたの製品を欲しがらないとしたら、それは破壊的な製品で、世界の人々はあなたの製品を求めていないということです。

2.      あなたの製品がどのように作られているかの5分間のビデオを見なければ購入できないとしたら、どうなるでしょうか?

ある商品やサービスを購入する際に、それらがどのようにして作られたかの5分間のビデオを見なければならないとすればどうなるでしょうか?コカ・コーラの例でいえば、どれほどの砂糖が使用されているか、ペットボトルがいかに海洋汚染を引き起こしているか、どんなロビー活動をして競合を排除しているかなどです。顧客がこれらに関する動画を購入前に見なければならない場合、どうなるでしょうか?

3.      バリューチェーンの全コストを商品の価格とした場合、どうなるか?

コカ・コーラの例でいえば、あの製品を作るのに必要になった全ての物やサービスを価格とするとどうなるかということです。コカ・コーラはHappinessを届けることを掲げていますが、果たして本当にそうでしょうか?見せかけの目的としか思えません。これは、あなたの組織が何をしているのかを把握するのに素晴らしいテストだと思います。コカ・コーラはただの一例ですが、あなたの製品が破壊的かどうかを調べるのに良いと思います。

これらの3つの問いを投げかけたこの動画は、あなたが窮地から簡単に抜け出すのを手助けするものではありません。私自身も明確な答えを持っていません。ただし、破壊的なビジネスが多く、そこから抜け出すのが難しいのは事実です。私が提唱するのは、その事実から目を背けずに、自問を続け、真の目的とは何かを問い続ける事です。

 

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