自主経営では管理業務をチームで分配する

自主経営では管理業務をチームで分配する【フレデリックラルー氏動画④要約】

「自主経営では管理業務をチームで分配する」と題して、「ティール組織」著者のフレデリックラルー氏による動画の要約をお届けします。

フレデリックラルー氏は書籍のほかに、100を超える動画を公開してくれています。本記事では、その中の「シリーズ4-3.自主経営では管理業務をチームで分配する」の要約をご紹介させていただきます。

ぜひご参考にされてください。

▶元の動画「Self-management: teams, colleagues and former managers」はこちらから

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マネージャーが担ってきた役割をチームで分配する

チームが自主経営を始めると、今までマネージャーが担ってきた役割がチーム全体に分配されることとなります。「役割」と表現しましたが、「タスク」のほうが適切ですね。役割というと 、それによって個人のエゴを発揮しやすくなり、自分はもっと高い給与をもらうべきだなどと個人の見解で仕事を捉えがちになります。タスクと表現することで、それはチームとしてすべきことであると捉えやすいのです。

では我々が俗に言う「マネージャーの仕事」とはなにがあるでしょうか。目的やビジョンを設定する、結果を観察しフィードバックを指揮する、対立を中和する、チームの雰囲気を保つ、などマネージャーには数々の役割があります。しかし、現実的に考えて以上の役割すべてをうまくこなせて尚且つすべてやりたいという人はいません。よくあるのが上記の役割のうちいくつかを好んでやり、いくつかは好まないそして全くやらないマネージャーです。 そこで自主経営のすばらしい点は、この役割をチームで分配することで、全てのマネジメントタスクを、本当にやりたい人がやりたいタスクを、そして得意なタスクをこなせるところです。

では、実際にどうやってこれらのタスクを定義し明確にし、チームに分配するのでしょうか。手順としてはミーティングを開き、以前マネージャーが担っていたタスク、またはチームで担うべきタスクを書き出してみるのです。チャートでもホワイトボードでも用意して並べてみましょう。そうすると、ボランティアでやりたい人がでてくるはずです。そこで複数の人がやりたい仕事とだれもやりたがらない仕事が出てきますが、そういった場合は役割を交代制にします。また、役割やタスクを分配する一つのやり方として他薦があります。この仕事を遂行するのに必要な素質は何なのか、そしてそれを持つのはチームの誰なのかをチーム全体が考えるのは素敵なことだと私は思うのです。

もう二つ、役割やタスクを割り振るのに考えられるルールがあります。一つは、1人の人にマネジメントの役割を任せることを避けることです。以前上のポジションに就いていた人やかつてリーダーだった人に役割が集中してしまうことがあるのですが、そうならないように役割やタスクがきちんとチーム内でムラなく分配されるようにしなければなりません。しかし、どうしても仕事のプロセスの中でチームリーダーと呼ばれるような人が必要になってくることがあるかもしれません。その場合は、その人が他の人よりも大きな役割を担うことでパワーを持ってしまっている状況にならないように、自主経営における他の部分をさらに気をつけて実行するようにしましょう。

二つ目のルールですが、役割を一定の期間で交代するようにすることです。特定の役割やタスクを能力を持つ人が受け持つのは良いことなのですが、あくまでもそれは役割やタスクでありポジションにならないようにします。1人が長いこと同じ仕事をしていると他の人が学べなくなるのももちろんですが、特定の人が特定の領域で力を持つようになるというリスクがあるからです。こういったことを防ぐために、役割は交代されるべきなのです。

「マネージャーの仕事」という名前でラベルをつけられていた役割やタスクを、きちんとチーム内で分配することの重要性がおわかりいただけたでしょうか。タスクをコーディネートする役、チームを引っ張っていく役などと簡単に名前をつけたりせずに、その役割の意味を明確にし、マネージャーの仕事としてではなくチームの仕事としてチーム内で分配していきましょう。

マネージャーであった人たちの苦悩

さて、以前マネージャーをしていた人たちについてお話しましょう。私が聞く中では、かつてマネージャーのポジションにいた人、特に中間層のマネージャーの多くが自主経営に対して一番抵抗するようです。しかしこれは無理もないことです。我々は時間と共に社会的地位や組織の中の立ち位置を自分と重ね合わせます。自主経営のシステムでは、人によってはキャリアのために一生懸命頑張って登ってきたはしごが急に崩れ落ちたと感じるかもしれません。

また、自主経営がより優れた経営モデルであると言われると、彼らは自分たちが何年もやっていた方法は過ちだったのかと思います。そこで、新しい経営モデルにシフトしたからって今までのことが間違っているわけではない、と伝えることはとても大切です。彼らにとって、初めのうちは苦痛に感じるかもしれませんが、それは長くは続かないでしょう。実際に新しいやり方がとても生産的で役に立つものだと感じると、常に人の上に立ち、人々を振るい立たせたりするプレッシャーを感じなくても良いのだと安堵感を感じると言います。また、かつてマネージャー職に就いていた彼らはもう一度クリエイティブな仕事が出来ることをとても楽しんいるようです。考えてみると、マネージャーの仕事のほとんどは興味深いものではありません。上のポジションにいけばいくほど、クリエイティブさは求められないのです。

しかし、急に地位を失ったと悲観したり苦痛を感じ始めたばかりの人たちには恐らく上のような励ましは助けにはならないかもしれないので、こればっかりはそれぞれこの悲観の期間を乗り越えるしかありません。一つ言えるのは、新しい経営モデルになっても変わらずとてもパワフルで居られることを早い段階で気付いて欲しいということです。支配としてのパワーを持つのではなく、アドバイスのプロセスの中で発揮できる能力としてのパワーが彼らにはあるのです。そしてもう一つ理解して欲しいのは、自主経営のシステムでは組織の上に登りつめるために競争するのではなく、以前マネージャーとして培ってきたスキルを発揮して組織に貢献できるということです。

もしそれでも悲観のスパイラルから抜けられなければ、同じ境遇の人と集まりグループを作ってみましょう。このトピックについてはまた他のビデオでもお話しますが、集まって円を作り、良かったこと難しいこと、自分たちの経験をシェアすることはただスパイラルにはまっているよりも助けになるでしょう。他に、マネージャーたちが自由にアイデアを話せるメンタリンググループというものをつくっても良いかもしれませんね。チームの他の人と話し自分の本当にやりたい仕事を見つけることは、目的を果たすことに繋がります。

もし違う組織でマネージャーのポジションを続けたいという人にはその道を提供するのも手です。人はそれぞれ自分の道を見つけます。人事が社員のキャリアを決めるのではなく、メンタリンググループが必要な人にはその提供を、組織を去りたい人にはその手助けを、そうるすことで自主経営では一人一人が力強く自分のキャリア選択をすることができるのです。

マネージャーの役割を保つ場合にやるべきこと

このビデオは、自主経営に向かっているけれども未だマネージャーを持つ組織に向けたものです。実際にセルフマネジングチームは動いているものの、いくつかのチームの上にはマネージャーがいる、というようなシチュエーションです。このシチュエーションに対して、マネージャーの役割などをどう変革し組み込んでていくかを、7つのアイデアとしてシェアしていきたいと思います。

まず以前のビデオでご紹介したものが一つ目になってくるのですが、1つのチームに1人のマネージャーが就くよりも、いくつかのチームを1人のマネージャーが束ねるというものです。これによってチームはフルタイムでマネージャーが必要であるという状態から脱脚し、チーム自体がそれぞれセルフマネジングし始めるように促すことができます。

二つ目は、組織がマネージャーへ求めるものを明確にすることです。チームのコーチなのか、メンターなのか、結果への責任なのか、そしてこれらが自主経営をする中でどのように機能していくのか、マネージャーへのビジョンをはっきりさせるのです。これは古い経営形態から新しく自主経営へ移行していく過程で、組織全体として経営に対するマインドセットをしていくのにとても役立つものだと思っています。

三つ目は、マネージャーの詳細な役割を定義することです。以前のビデオでどうやってマネージャーの役割をチームで分配していくかをお話しましたが、マネージャーというポジションを保ったままの状態でも、数あるマネージャーの役割のどれをマネージャー自身が担いたいか、そしてどれをチームで分配したいかを話し合うのはとても良いディスカッションになるはずです。

そして三つ目のディスカッションに続くトピックとして、意思決定の権限についてというものがあります。これも以前ビデオで触れたところですが、自主経営へ移行する中でも、マネージャーが何の決定に拒否権を持っていたいかを話し合うことです。基本的にはチーム全体で意思決定をするものの、マネージャー自身がどうしても未だ譲れない、決定権並びに拒否権を持っていたい決定事項とは何なのかを明確にしておきましょう。

五つ目は、アドバイスプロセスをどう利用していくかです。特定の領域には未だ拒否権を持つマネージャーですが、それ以外のことにはアドバイスプロセスを使えるように、本人以外の人の意見やアドバイスが聞けるような環境にしておきます。

他のアイデアとしては、マネージャーは下のポジションにいる人たちからも評価を受けるというものです。組織上層部だけでなく、360度関わる人たちから評価を受けれるようにしましょう。これは責任感という面で大きな影響を与えてくれるはずです。また、上層部がマネージャーの仕事をコントロールするのではなく、チーム自身が新しくマネージャーの仕事内容を考え選択するようにすることです。これによって、マネージャーがチームの一員であることを改めて認識することができます。

最後に、組織内で平行して仕事をするチームがある場合は、メンバーはマネージャーの承認なしでいつでも自由にチーム間の移動ができるようにします。もしマネージャーが独裁的で自主経営を尊重しないのなら、メンバーたちはチームから去っていくでしょうが、これは経営システムの自己修正と捉えられるでしょう。

以上が、どうやってチームの上に立つマネージャーを自主経営に近い形に落とし込むかのアイデアでした。私が強く思うのは、この新しい経営形態の中ではある種の指導や学習サークルが必要であり、新しくマネジメントの役割を担う人たちが意見や経験をシェアできる環境が大事であるということです。加えて、チームやマネージャーに新しいシステムについてどう思っているのか、話を聞くのも忘れないで下さいね。

 

責任は誰が持つのか

もしかしたらこのビデオは、責任というものについてとても批判的なものになるかもしれません。自主経営においては、誰に責任があるのでしょう。まずは、この責任について2つのことを区別しなければなりません。一つは役割としての責任です。例えば自主経営のトレーニングの仕事の責任は私にあります。それが私の役割だからです。

では、総力から来る結果への責任はどうでしょうか。一人一人としてではなく、チームとしての業績や損失の責任は誰にあるのでしょうか。誰かが責任を負わなければいけませんし、それは組織としてとても大事なことです。しかし、私は自主経営での結果に全て委ねようという単純な考えか方をする人がよくいることに驚くのです。

この誰が責任を持つか、ということには、なあなあにせずきちんと理解することが必要です。従来の考えでは、責任とは1人の人間に委ねられるものです。マネージャーとしてチームの仕事の結果に責任を持つ、などです。しかし、マネージャー1人がチーム全体の責任をとるということはチーム内でパワーを持つということでもあります。このことから、自主経営では個人の責任からチームでの責任へのシフトが不可欠です。もしチームの半分の責任を一人で負っている人が居たら、それは自主経営ではないのです。

そしてこの個人からチームへの責任のシフトは、組織としてもとても力強いシフトです。マネージャーのみが責任を持つという構図は、チームとしての弱点です。10人のチームがあったとして、チームの業績が悪い時にマネージャー1人が責任の観点から結果を気にするよりも、10人が結果を気にして実際に行動を起こす方が良い結果となるのです。チーム全体が責任を持ったとき、組織はもっと力強くそして回復力のあるものへ成長を遂げます。

このことから、業績が思わしくないときには1人の人を責め立てるのではなくチーム全体で話し合うということが大事です。そしてこれはホラクラシーやソシオクラシーにも言えることです。例えば、ホラクラシーではリードリンクという観念が存在します。リードリンクはチームが目的実現を果たせているかなどの仕事の役割であり、その役割自体が少なからずのパワーを持つ構図になりますが、個人1人が責任とパワーを持つわけではありません。1人が責任もパワーも持つのではなく、チーム全体で集団的に結果への責任を持つことが組織変革への鍵となるのです。

 

チーム全体としてのオーナーシップを保つために

このビデオは、従来のようにマネージャーなどが1人で責任を持つのではなく、チーム全体で責任を持つときの連絡窓口はいったいどうなるのか、という質問の答えとしてとても短いものになります。

例として、自主経営に向かって移行する為に、リーダーが組織改革の準備を進めている大きな組織がありました。しかし、組織改革を進める傍らリーダー自身が未だ連絡窓口として機能するべきだと思っていたので、周囲は矛盾を感じてしまいます。ではこの矛盾を解消するにはどうしたら良いでしょうか。

まず、組織外やチーム外ではしばしば特定の連絡窓口というものが必要です。例えば他社のマーケティング部やオペレーション部、国外の支社とのやりとりなど、他の組織との窓口が必要となってくるのですが、この問題解決としては単純にロール、役割を作れば良いのです。チーム内でマネジメントロールを分配し、その一部を外部とコンタクトをとる役などと決めていきます。ここでのキーポイントは、最初にコンタクトをとる役割ではあるけれども、責任は常にチーム全体にあり個人が負うものではないというところです。シンプルにその役割を担う、という考え方なので、従来の経営形態のようにパワーヒエラルキーを復活させるのが目的ではありません。

またこのことから、この役割につく人は他の役割よりも頻繁に交替するべきです。毎年でも半年ごとでも、誰がこの役に就くか早めのサイクルで交替制にします。加えて、外部とのミーティングには1人でなく3、4人などの複数人で行くべきでしょう。ミーティングで話したことや起こったことに対して集団でオーナーシップを持つようにする為です。

以上のように、組織外で特定の窓口が欲しいと言われたときの為に、外部とのコンタクトとしての役割を振ることで、チームとしての責任の認識を全体で一致させるようにしましょう。

 

ピアプレッシャーを上手く使う

さて、このビデオでは同調圧力、ピアプレッシャーのことについてお話しましょう。従来の組織形態では、決定権を課せられることによって抑圧や支配を通して組織を統制していました。反して、自主経営では、同僚などの横をベースにした構造によって統制されます。チームメイトとの会話だけでなく、他のチームメイトの会社への貢献を目にするなどの前向きなピアプレッシャーが組織内でありますし、もちろん場合によっては批評もします。

2年前でしょうか、フランスで自主経営でのピアプレッシャーは組織にとって悪影響でしかなく、それが組織のディストピアを招き、結果従来の組織形態が断然良いものだと書かれた記事がありましたが、自主経営を実地している組織でそのようなシチュエーションの組織を私は一度も見たことがありません。

まずこの記事を書いた人たちに言いたいのは、ピアプレッシャーに関することで唯一好ましくないことと言えば、他者からピアプレッシャーを貰えないということです。我々は人間として、前向きなコメントから批評に対して過敏である生き物です。なので、他者からの反応が何も無いということは一番辛い状態です。社会において、自分の発言や行動にフィードバックを得て、自分がどう評価されているかを知ることはとても重要なことなのです。

ピアプレッシャーを上手く利用する為にの最初のステップとしては、前向きなピアプレッシャーについて他者と話をすることです。ピアプレッシャーを持つことが社会的にとても健全であるということを話し合い、チームとして健全な表現の仕方を学んでみましょう。まずこれがチームのコミットメントとして大事な気づきの一歩となるでしょう。

次のステップとしては、良いフィードバックをすること、非暴力的なコミュニケーションを心がけるようにトレーニングをします。これは一夜で身につくことではなく、ある程度の時間を要することではありますが、大事なステップです。そして単純に、他者について学ぶようにしましょう。従来の組織形態の中で、いったいどれだけ自分が他者のことを、また他者が自分のことを知っていでしょうか。人間とは他者を、その人を知れば知るほど嫌いになったり解雇したりすることが難しくなります。このことから、自主経営ではこの組織として一体となることをとても重要視しています。

最後のアイデアとして、もしうまくいかないチームがいたらコーチを入れるよにすることと、定期的にフィードバックとして今のチームの雰囲気はどうかをチェックすることです。毎週金曜日にでも、メールを飛ばすなりアプリを使うなりチームスピリットのレベルをスコアやスマイリーフェイスで表せるようにするなどしてみましょう。このチームスピリットが良い限り何も必要ないということですが、もしスコアが低くなることがあればその時はチームで話し合うべきタイミングであるということです。他者からのフィードバックは必要不可欠であることを認識し、チームのスピリットを健全に保ちましょう。

 

自主経営に向けてのトレーニングの取り入れ方

従来のピラミッド型の経営形態に比べて、自主経営を取り入れるのはチーム自体にとってもチームメンバーにとっても何年も時には何十年もかかる長い旅路です。この自主経営へ移行していく間、トレーニングの実施はこの長い移行を緩和するのに無くてはならないものと言えます。そこで、今回は自主経営移行のトレーニングに関して私が思うことをいくつかお話します。

はじめに、私はよく自主経営のトレーニングとしてどんなことをしたら良いか、という包括的な質問を受けますが、それはそのトレーニングによって何を解決したいか、チームがどんな問題を抱えているのかによります。責任感に関してなのか、経営状態が従来のやり方に戻りつつあるのか、はたまた自主経営に関しての知識が足りてないのか、それぞれ全く違うトレーニングが必要になってくるからです。このことから、一体何がチームにとって解決しなければいけないことなのか、何が必要なのかを知ることから始めましょう。

次に、トレーニングと実祭の仕事を結びつけることです。トレーニングはあくまでもトレーニングであり抽象的に学ぶ場であるので、実際の仕事でそれを役立てれるかどうかが重要なのです。トレーナーを交えて学ぶだけではなく、トレーニング自体を貴重な機会だと捉え、実践的な仕事を組み合わせ経験できるようにしましょう。例えば、チームメンバー全体で他者に良く接しすぎるがあまり責任を踏まえての連携がとれてないケースでは、フィードバックや責任についてのトレーニングを通して実際に現在のチームの責任感について話しあうことができます。これによってトレーニング中ただ理論を学ぶだけではなく、実際の問題を明確にし、理論を実践して経験することができます。

前二つに続いて重要なのが、既存の組織形態ではなく様々な形でトレーニングを行ってくれる良いトレーナーを見つけることです。ここでいう良いトレーナーとは、共に新しいものを創り上げてくれる、つまり共創してくれるトレーナーのことです。実際にチームが抱えている問題に耳を傾け、経験から理論と実践的な経験の両方を導いてくれる人が良いですね。

そしてどんなトレーニングもロールモデルになり得ますし、チーム全体を把握できる素敵な機会です。これらのトレーニングは時に人々を感情的にしてしまうかもれませんが、これは彼らが普段被っているマスクを剥がし、チームメイト同士が誠実な会話をする貴重な機会であるのです。

しかしながら、私は全てのトレーニングはオン・デマンドであるべきだと考えています。HRがチームの問題を見越してトレーニングを予定するのではなく、現実にチームが苦戦し始めたとき、チームが対峙しているその問題に答える為にトレーニングを組むべきなのです。

最後に、チームとして既に必要でないと感じたことも臆せず話すべきです。以前はあったけれども現在はチームに必要ない役割や、実際には良く思っていないことなど、正直に話し合うことは興味深いものだと思います。

トレーニングに関して他にもお話したいことはたくさんあるのですが、以上が私がみなさんに最もシェアしたいことです。既存のHRのトレーニングではなく、自主経営を実施するにあたってチームに本当に必要なトレーニング行程をつくっていきましょう。

 

自主経営の苦悩を語れる場をつくる

さて、自主経営とは、時に我々にとってとてもチャレンジングなことであったりします。たくさんのアンラーニング、いわゆる一度学んだことを忘れる、そしてリラーニング、もう一度学び直す、という行程があるからです。最終的には、私は自主経営として学び直したことは以前学んだことよりもうんとシンプルなものだと考えていますが、長年続けてきたことを変えるのは挑戦であることに間違いありません。

交流分析では、従来のピラミッド型の組織は親子関係であり、マネージャーが親、部下たちが子供であると考えます。そして自主経営では、この関係性が大人と大人同士の関係性であるとリラーニングするよう促してくれます。そして、このような関係性の移行を含め自分が経験していることを語り合う場を設けることは自主経営への移行をもっと簡単なものにしてくれると思うのです。加えて、我々の人間性を取り戻す手助けをしてくれるものだとも思っています。

この自分たちの経験していることを話して交流する場をつくることは、今苦戦したり苦悩を感じているのは自分だけではないという気づきに繋がります。また、自分が苦心している間に他者が前に進んでいるのを聞くことで、触発されたり激励を感じたり、自主経営の可能性を再確認することができるのです。そしてもし上記のように自分の苦悩を打ち明ける場がないと、持っている悩みや問題が解決できず自主経営は上手くいかないものだと思ってしまうかもしれません。このことから、私は苦悩について語り合う場を持つことはとても重要だと考えています。

語り合いは既存のチームの中で行っても良いですし、他のチームを交えても良いですね。マネージャーのみを集めて、マネージャー同士の苦悩を話し合ったり様々なやり方があると思うのですが、大事なのはその場をまとめる外部の優秀なファシリテーターを混ぜることです。自分の脆い部分を他人とシェアするのですから、語り合いの場は彼らにとって安全地帯、セーフスペースでないといけません。

パーカー・パルマーの(Parker Palmer)「A Hidden Wholeness」という本に上記のようなセーフスペースの作り方が書いてあるのですが、優秀なファシリテーターとは吐露する人の外の世界と自身の内の声のバランスをきちんと上手くとってくれる人だと思います。例えば自分の周りで起こっている、外の世界で起こっていることとして新しい仕事のやり方などを取り入れている中で、自身の心の中では一体何を思い感じているのか、自分のマインドセットはどうなっているのか、話し合いの中ではこのようなことを聞き出してくれるファシリテーターが必要となってきます。

このように、人々が自分の胸の内を打ち明けられる機会をつくり始めることを強くおすすめしますし、これをすることによって人々の安心を得て、自主経営に対しての誤った認識を生まないようにすることで、経営形態の移行がスムーズになるはずです。

 

チームでチェックイン・セッションを行う

自主経営の初期形態は重要な期間なので、ここでは定期的にチェックイン・セッションを行う、という実践的なことについてお話したいと思います。これは、自主経営が我々にとってどう作用しているかを話し合い、チームにとって自主経営の何が機能していないのか、何を変えるべきなのかを確かめる作業です。

外部からコーチを呼ぶのも良いですが、まずは頻度にフォーカスしてみしょう。チームの中で色んなことが安定してチームメンバーが慣れるように、毎月または四半期ごとに上記のことに関して話し合いをする場を設けるのです。

また、このチェックイン・セッションですが、様々な視点から自主経営がきちんと機能しているかをチェックする為に、リストをつくりましょう。自主経営の先駆け者であるアストリッド・ベルマーとベン・ウェンティング(Astrid Vermeer & Ben Wenting)著書の「Self-management: How It Does Work」に、 チームは正しく構成されているか、企業文化は個人を尊重しているか、役割やタスクは交替制になっているか、仕事の精度に関して他者にアプローチできているか、などなどリストをつくる為に参考にできるアイデアがたくさん詰まっています。

そしてチーム自体がオーナーシップをきちんととれているかも確認しましょう。こうして早期に自主経営が上手く機能しているかどうかをチェックすることで、問題が後にまで長引くのを防ぎます。また、実践として初期段階ではミーティングの度にこのチェックリストを確認することをおすすめします。ミーティングの始めにこのチェックを持ってくることで、メンバーが現場について発言しやすくなりますし、その後に話し合うトピックに繋がるかもしれません。

 

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