「誤解6:ティール組織の経営において、コントロールは悪いことである」動画(4.1.10)の要約

「ティール組織」著者、フレデリック・ラルー氏の動画シリーズを要約しています。あくまで要約であり、すべての文言を正確に表現しているわけではございませんのでご了承ください。動画の翻訳については、ラルー氏のHPより「No more permission needed :)(許可必要なし)」とありますので、もし翻訳に協力したい方がいらっしゃれば、以下の動画の「設定」⇒「字幕」⇒「字幕を追加」で追加することが出来ます。

「誤解6:ティール組織の経営において、コントロールは悪いことである( Misconception 6: Control is bad)」要約

誤解6:ティール組織の経営において、コントロールは悪いことである

この誤解はあまりにも広く行き渡ってしまっていて、どんな企業からもほぼ毎回この話題が上がります。リスナーの皆さんにも多かれ少なかれこの点を誤って捉えている人がいると思うので、よく聞いてください。

 みなコントロールが悪いことだと思っています。ほとんどの組織は手に負えない(out of control)ものですね。何か問題が起きたとき、あるいは誰かがこれは手に負えなくなりそうだ、と思った時、即座に事態を制御するための施策が用意され、実施され、全員その手順に沿って行動することになります。あまり意味をなさない状況でも一律の対応事項が適応されます。よくカスタマーサービスであるように、「なぜできないんですか?」「申し訳ございません、そのような対応はできないことになっております」というやり取りが繰り広げられます。社内でも理解できないような決まったプロセスがあったりして、どんな小さな決断にも承認が必要だったりと、コントロールは業務を縛ってしまう不愉快なものです。そういった意味で多くの人はコントロールは必要ないから、自主経営に切り替えたら廃止してしまおうと考えます。

 しかし、制御すること自体はいいことなのです。考えてみると、生命は常に制御下(in control)にありたいとしています。身体が一定の熱を保っているように、システムでは常にモニタリングされていて、何か異常があれば速やかに対処がされます。組織も同じです。常に制御下に維持しておきたい。自己制御(self-control)、「制御」という言葉が好きじゃない人は自己修正(self-correction)と置き換えてもいいのですが、システムは何か異常があったときには自己修正によって事態を元に戻そうとします。これは非常に重要なトピックなので、今後このテーマでしばらく話そうと思います。今回は、一側面を話します。

 制御に関して多くが抱いている誤解は、「コントロールされたくないのでそういった管理システムはやめて、信頼に基づく仕組みに変えよう」というものです。私はこれは正しいし、間違っていると思います。なぜ正しいかというと、信頼はたしかにセルフマネジメントの必須要素だからです。セルフマネジメントでは基本的には組織に属する全員に大きな信頼を置くため、細かいことをいちいち管理する規定は設定されません。ただ、それは基本的に、つまり適切な場合に、という意味です。何か問題のある状況下では当然、制御管理が必要です。つまり、セルフマネジメントは土台に信頼を置きながら、その上でシステムが自己修正できる仕組みを築いているのです。信頼は必要ですが、それだけでは不十分です。

 本でも紹介したAESという組織を考えてみましょう。4万人の社員からなる、世界中で発電所を運営している会社です。発電所ですから、業務は厳しく制御下になくてはなりません。そこで、廃止したいのは従来の制御管理のやり方です。本社が全支社を細かく管理していて、どの国の運営であれ、本社が決めたルールに沿ってやらなければならない。もしかしたら規定通りに運営していると報告しながら、実情は現場独自のやり方をしているかもしれませんよ。つまり、今日の管理方法には錯覚した面がある。本社の書面で管理されているとしても、それが現場で本当にされているかは、本社では把握しきれないものです。では、本社の介入なしに、どうやって現場が問題なく運営していけるのでしょうか?

 AESでは、有志の専門タスクフォースを形成してリスク管理や監査にあたる制度を導入しました。現場の各ユニットから選出されたメンバーが管理方針や手順を作成するので、本社の誰かが作るよりも緻密な方針や手順が出来上がります。必要であればお互いに内容を監視し合うことで、作成物の質を保証することができます。

 企業によっては非常に厳しく管理されていて、管理者がやってきてリスク責任者から書面による遵守保証を要求する場合があります。リスク責任者が存在しないAESのような状況でどうしたらいいでしょうか?シンプルな案として、例えば有志のタスクフォースチームから毎年一名、ランダムに選び、彼がサインするという風にしたらいいと思います。その責任を負う代わりに、昇進を得られる仕組みにするのです。とても有効なやり方だと思います。ランダムに選ばれた人は、同僚がいい加減な仕事をしていたら自分の責任になるので、メンバーを選ぶのにも慎重になるし、しっかりした仕事になるよう動くわけです。

 本社のどこの誰とも知らない者から定期的に書面確認が送られてきても、特に信頼関係もないし、遵守意識も薄いわけですが、現場内の者同士ということになれば、お互いを危機に晒すようなことはしないはずです。このやり方は、大きなリスクを伴う業界ではよく使われている手法だと知りました。例えば、飛行機の製造現場では、完成した飛行機のテスト飛行にパイロットとメンテナンスチームからランダムに選ばれた技師が一人同乗するそうです。パイロットは、一人選ぶ際にチーム全体に「何か気になっていることはありますか?」と聞きます。NASAでもチャレンジャーが爆発して以来、同じようなことをするそうです。宇宙飛行士が家族と子供を連れてロケット製造にあたった主要チームの前に立ち、「どんな些細なことでもいいので、気にかかっていることはありますか?」と聞くそうです。このやり方は書面でサインしてもらう方法より遥かに有効なやり方だと聞きました。

 何が言いたいかというと、信頼があるからといって、制御メカニズムを完全に廃止することはあり得ないということです。信頼の上で、さらにシステムが自己修正し、正常に動き続けるための仕組みがおかれるわけです。信頼だけで成り立つ状況もあるけれど、そうでないことはたくさんあり、管理施策がないとシステムが自己修正できないわけです。ある中国の企業が「我々は勤務時間を細かく管理するシステムを廃止した!」と誇らしげに連絡してきました。後日、代表が訪れてみると現場に誰一人いなかったそうです。そこで代表は怒り、やはり従業員は信用できないものだと、信頼を置く制度そのものに疑問を抱くようになりました。結局、自主経営の方針は変えずに従業員の勤務を管理する施策を導入したということです。私が思うに、彼が従業員を信用しようと思ったのはいいことですが、この場合は適切なアクションではなかったと思います。

 まとめると、コントロール(制御管理)が悪いということではなく、従来の管理メカニズムが良くないということです。人が人を制御しようとするのは不適切なことです。セルフマネジメントが目指すのは、制御という仕組みがシステムに組み込まれていて、何かの事態に適切に自己修正できることです。ちょうど、身体にウイルスが侵入したらそれを排除しようとする働きがあるのと同じように。

 

 

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