会社がティール組織に乗り気でないときの対応【フレデリックラルー氏動画⑦要約】

「会社がティール組織に乗り気でないときの対応」と題して、「ティール組織」著者のフレデリックラルー氏による動画の要約をお届けします。

フレデリックラルー氏は書籍のほかに、100を超える動画を公開してくれています。本記事では、その中の「シリーズ7. 会社がティール組織に乗り気でないときの対応」の要約をご紹介させていただきます。

ぜひご参考にされてください。

▶元の動画「If the CEO is not on board」はこちらから

▶ティール組織を実践するためのティール組織診断マップはこちらから

 

7.1 CEOがティール組織への移行に同意していない場合、何ができるか。

 この動画は「CEOの同意を得られない場合」のトピックの最初の動画です。今この動画をご覧の方はCEOのポジションにいる方ではなく、CEOにアプローチを試みている方でしょう。しかしCEOは何も見てくれなかったり、その方向へ舵をきってくれない。そしてまた、チームの権限をもつ立場だが組織のトップではないという状況にある方でもあると思います。「ティール組織」の本からも覚えている方もいるかもしれませんが、組織を急激に変えるためには2つの必要条件があります。

新たな経営体制に変化させるには、まず1つ、CEOの同意が得られていること。積極的に進めてくれている場合は尚良いですね。

2つめは経営陣が恐れたり止めたりしないことです。

自分自身で変えられる、そしてCEOが感嘆するくらい明らかに成功するだろうと思うのはいささか甘い考えでしょう。今ここで話していることは新しいマネジメントツールではなく、全く根本的に異なる考え方なのです。成功したとしても、どこかおかしく感じるものであり、受け入れがたいものでもあります。

「わかった、じゃあCEOを納得させるには一体どうすればいいんだ?」

とよく聞かれます。あなたの本を見せればいいのかな?とか、それとも「こうすればもっと成功する」と証明された研究を教えてほしいとか。私は合理的説明というのはそもそも不可能だと思っています。私自身試したことはないし、成功例も見たことがない。今ここで話していることは、組織や人を機械やその部品のように見ているCEOの視点を、まるで組織を命ある生命体としてみるように変化させることです。

それは表に現す能力、自我を抑えるための能力なのです。本当に徹底的な変化となります。人生の中で非常に難しいことを経験した人にとって、その経験が別人に変えてしまうようなことです。だから、合理的説明を行うだけで新たな見方をできるようになった人を私は見たことがありません。

CEOの同意を得られなかったり、主に「オレンジ組織」な見方をしている場合、ベストを尽くせることといえば、あなたが所属している部分またはその組織全体を最も健康的な状態、最も健康的なオレンジ組織に変える手助けをすることです。なぜかというと、この「オレンジ」な機械的な見方というのは非常に息苦しかったり、政治的、官僚的、そして恐怖に基づいたものかもしれません。

しかし目標を成し遂げることで自由度を与えてくれる、信頼に基づいたオレンジ組織も多くあります。私が提案したい試みは、あなたが不健全な組織あるいは健全な組織にいるどの段階においても、もし組織全体に大きな影響を与えたいのであれば、CEOや経営陣が全く新しいことを理解したり受け入れられないような縦方向の変化よりも、むしろ横方向、いわゆる不健全から健全への変化をもたらすことです。

ここまで話したところで十分な答えにはなっていないかもしれません。中には、組織全体を変えようとまでは思っていない、ただ自分のチーム内でティール組織を実践しようと思っているだけだという人もいるでしょう。十分に理解できます。他に方法がない人もいるかもしれないのですから。

自分のチームの中で、変革の試みを行うかどうかは完全にあなた次第なのです。答えが「イエス」なら、根本的に2つの手法があると思います。それについてはこの後の動画でまたお話ししますが、まず1つは、実験させてくれる研究室のような領域を経営陣と交渉すること。2つめは、密かに自分で取り組むこと。しかし、この2つの動画についてお話しする前にとてもパーソナルな質問をお聞きしておきたい。次の動画でも取り上げます。

「あなたにはどれくらいの覚悟がありますか?」

 

7.2.ティール組織への変革にどれくらいの覚悟がありますか?

あなたが実践を始める前に興味深い質問をさせてください。

まず1つめ。どれくらいの期間打ち込むつもりですか?

言い換えると、特に大きな組織の場合、どれくらいの期間、今のポジションにいるつもりでしょうか?1年から2年であれば、それは短すぎます。5年はやるつもりはありますか?要は、じっくり時間をかけて根付かせ、じっくり時間をかけて学んでください。伝統ある大きな組織であれば、別の新しい仕事に就くことや昇進を諦められますか?人生の今後数年を捧げるのですから十分に重要な質問になると思います。

2つめの質問。これはリスクを伴うことを承知しなければなりません。どんなリスクがありますか?

リスクの度合いはどれくらいでしょうか?変化を起こすことで解雇となる可能性があることも承知していますか?これから着手しようとしていること、例えばとても狭い箱に色を塗ることを許されているところを箱全体に色を塗りたくるようなものですよね。あるところでシステムが上手くいかないことがあるかもしれない。おかしな部分や危険な部分が多く、上手くいかずに解雇されるかもしれない。聞きたいのは、解雇されてもいい覚悟はあるか?ということです。

「ノー」よりも「イエス」という答えを期待しているのではありません。どちらでの構わないのです。リスクを背負いたくなかったり、経済的にその仕事が非常に重要なこともあるでしょう。ただ重要なことは、背負えるリスクの度合いを測ってみることなのです。それによってあなたはどれくらいの範囲で変化をもたらせるのか、ということになりますから。

素晴らしいアドバイスの一つを聞きました。それは力強さが重要であるということです。そして、何がプランBとなるかを把握しているということ。システムが認められなかったり、解雇されてしまうことを想像してみてください。その場合、他にどうする?他にどんな仕事がある?他の収入源は?

もし他に選択肢がないまま解雇となれば致命的な出来事になるかもしれません。そうなると塞ぎこんでしまい、無力になります。枠の外に色を塗ることがやっとです。

一方で、もしかして今やっていることよりもっと面白いかもしれない魅力的なプランBがあれば、非常に力強くなれるでしょう。「上手くいかなくても、私のことを嫌いになっても結構です。他に行くところはありますから。」と。

私が大手コンサルティング会社のマッキンゼーで働いていた頃はプランBはありませんでした。これは自分には全然合っていないけれど、他に何をしたらいいかわからない。意識的に「突然仕事を失ったらどうしよう、何をすればいいんだろう」と感じていた。結果として優秀なコンサルタントになりました。しかし、枠の外に色を塗ることは全くしなかったわけです。そうするには無力だったのです。

ですから、ティール組織への旅を追求するためにこの問いは非常に重要なものだと思います。2-3年前になりますが、誰かからメールを受け取ったことを覚えています。それは「解雇されるより、自分に背くことをするほうが恐い」というようなものでした。この段階に来た時、あなたは力強さを感じるでしょう。

最後に、組織での仕事にうんざりで飽き飽きして「もう我慢できない、辞める!」という人々と話したことがありました。「どうせ辞めるんだよね?辞める意思があるのなら、つまりは解雇されても構わないってことだよね?解雇されても構わないのなら今のポジションにもう少しだけ長く留まって、その組織の中でほしい環境や実践をやってみればもっと面白いかもしれないよ?」と。

起こりうる最悪のケースは?実際に解雇されること。じゃあ、最高のケースは?とてつもない楽しみを経験して、たくさんの素晴らしいことを学び、あなたが属する組織の人間がもっと活発になり、美しい人間性の中に取り込まれることです。いずれにせよ去るのなら、次へ行くところは全く違うところでしょう。しかし、留まるのならこの全ての変化をもたらしましょう。最悪の場合は2年ほどで上手くいかずに解雇になるかもしれない。それでもその間に非常に多くのことを学びます。人は違った目であなたを見るでしょう。新しいアイデンティティーを取り入れ、これまでの自分と全くもって異なるマネージャーとなっています。組織の外の人たちでさえも、違う人間としてあなたを見るようになるでしょう。

だから今辞めるのか、または留まってやってみたかった組織改革をしてみようと思うか、考えてみてください。

 

7.3. 守られた領域について交渉しよう

先の動画では、組織を変えるためには基本的に2つの道筋があることをお話ししました。

1つは経営陣にお願いすること、もう1つは単純に、密かに実践を始めること。

この動画では、干渉されない領域を得て、変革を進めるために経営陣と交渉する場合についてお話しします。

これには2つの構成要素があります。ひとつは、干渉させないようにするのと引き換えにあなたが何を実現させる約束ができるかということです。例えば成果主義の組織においては、これだけの結果を出して満足させますから干渉はしないでくださいというようなことがあります。それがまず1つ。

もうひとつは、組織のどの部分から自由を得たいのか、ということです。人を採用したり、訓練したり、自分のパフォーマンス管理をしたり。あるいは給料のことであるとか。自分が必要なものだけ購入したり。具体的に何かはわかりませんが、そういった内容が話し合いになるでしょう。ですから、それは2つ要素で構成されているのです。自分が何を約束できるか、そしてどんな自由を得れば干渉されない環境できるのか。

あなたが比較的自立しているのであれば、この自由を得ることは簡単であることは明らかです。本が出版されてからしばらくして、南フランスのIT企業でITサービスを提供している人からメールが届きました。彼は経営陣との交渉に成功し、その後もまだ数年働いていて、この小さな自由を楽しんでいるようです。

彼の組織は自立していたので、仕組みを作るのは非常に簡単なことでした。もっと統合的な組織であればより難しくなりますが、それでもまだ変化をもたらすことはできます。最たる例は国際的タイヤメーカーのミシュランです。ある日、HRのバラハン(Mr.Ballarin)という人が自主経営チームのアイデアを提案し、異なる工場の38チームからスタートして経営陣から承認を得ました。つまり、より大きな組織でも実行は可能であるということです。

上手く物事を運びさえすれば、経営陣から承認を得られる確率は高くなります。そうするための方法の一つは、経営陣が気に掛けるような試みを取り入れることです。彼らの注目を引くようなことをするのです。彼らはあなたがやろうとしていることを十分に理解しないかもしれないし、そこをはるかに越えていくかもしれない。

経営陣が懸念することは何だろうか?自分が実験しているということを彼らが理解できる手段で説明できますか? 実際のところ経営陣というのは、チーム内に何か人目を引くことが起こっていれば満足します。そうすれば、彼らが外の世界にその話ができるし、CEOが周りの人と話す時に「うちでもアジャイルをやっているんです。他のパイロットプロジェクトもあるんです」とも話すことができます。それが、あなたが承認を得る助けとなるかもしれません。

ミシュランには家族経営の非常に濃い企業文化がありました。そして会社が大きくなりだした時、その文化は崩れ始めました。全工場で大規模な標準化と効率性の改善を行いました。しかし同時に、ミシュランの古い労働文化が失われたようでした。そしてかつての創造性や非常に強いポジティブな文化に戻るために、最前線にもっと自由度がある何かを試させてほしいとパイロットチームが経営陣と契約を結びました。そして経営陣はこう言いました。それが上手くいくのなら、ぜひ進めてもいい。それが彼らの契約でした。

経営陣と交渉する内容を考えるということ、試みが上手くいった場合に彼らにとって何が利点となるのかを考えましょう。

 

7.4. 「Shit Umbrella」になろう

もう1つのやり方は、密かに事を進める、承認を得ずにただ始めるということでした。後になって許しを請うことになるかもしれませんが、ほとんどのケースが大成功します。組織の他の人々は満足し受け入れてくれるでしょう。許しを請う必要もあまりないでしょう。

では、あなたの組織の中でそういった変化を起こすにはどうすればいいでしょうか?以前私が参加したワークショップに参加していた人がこう言いました。

「ただShit Umbrella(いわゆる「雑音から守る傘」)になればいいのさ」と。

どういう意味かというと、あなたが傘を開けば、上層部から降ってくる戯言からその傘の下にいる部下を守ることができるということ。もしあなたが中間管理職ならば、その傘となって部下を守り、あなたが上層部と折衝すれば良いのです。

時には厳しくて非常に疲れるものです。例えば、非常に詳細な予算案があるとします。それをあなたが受け止めて上層部と渡り合い、予算を獲得することが出来ますか?こういった交渉をしなければなりません。

例えば年に一度の人事評価をチームでやらなくてはならないとしましょう。あなたはもうこれをもうやりたくないと思っているかもしれない。じゃあ、どうクリエイティブにできるだろうか。同僚による互いの評価を行い、真実に近い評価をHRのシステムにしっかりと書き込むことができれば、HRチームは「こんなに詳細で見事なものは見たことがない」言うかもしれない。

それがいわゆるクリエイティビティーというものです。調整役となるのは最も疲れる仕事かもしれません。でも、そこにいるからこそ最も学べることが多いのです。古い手法と自分がやってみたかった新しい手法を連続的に対比させているのだから。

だから私はそれをゲームとして、学習としてみることをお勧めします。そしてある時、例えば2年後、上層部からの圧力を「反発する」ほど十分に力強くなっていることを感じるでしょう。

私が提案したいことは最初の原点に戻ることです。そもそもその仕組みで一体何を達成しようとしていたのか?反発するのではなく、他の人にとってより役立つ新しい方法を見せているのです。

「Shit Umbrella」の下で素晴らしい世界を作れるよう頑張ってください。そして、それが良いゲームと捉えられること、あまりひどく疲れるようなものではないことになるよう願っています。きっとその過程の中でとてもたくさんの事を学べることでしょう。

 

7.5. 抵抗を最小限に抑えるには

この動画は他の動画とは少し違って私の観察や会話からなるものではなく、深い信念に基づくものです。そしてこの質問をもって進めなければなりません。「どうやって抵抗を最小限に抑えされるか?」

なぜならば、全く異なる手法であなたが何かを始める時、あなたの組織やチームメンバーが何らかの反応をするからです。それに対して、発生しうる抵抗をできる限り最小限に抑えるかという問いなのです。あなたが想像するのは、まるで全く抵抗を感じずナイフがスッと入るように簡単に事が進むことだと思います。

ここで私が提案したいのは、心構えです。まず、役には立たない心構えを紹介します。

「他に良い方法があるんだ、こいつを愚か者だと証明してやる」「もうこんなことは嫌だ!」と怒ったりする時、既に相手側からかなりの抵抗が生まれることになります。

次に、優越感です。他の人を見下して自分を優位に感じることは、口には出さなくとも表面に現れ、人はそれを感じ取るでしょう。そして、説得しようとすること、受け入れてもらおうとすること。受け入れてもらおうというのは劣等感からくるものです。これも役には立ちません。

最も有用なのは、抵抗を最小限に抑えることです。内面の平穏さ、強さ、明確さをもちましょう。言うのは簡単だけど、実際にそうするには練習を積むことです。チームメンバー、パートナー、あるいはコーチと会話をして練習するのです。習慣が辛くなってきたか、他の人が批判してきたか、何かしてくれたか、自分はその状況にいられるのか等、考えてみましょう。

この芯にあるものは、愛情と思いやりです。古いシステムや人々に対する愛情と思いやりです。本当のところ、誰も悪い意図をもって組織を作っているいる人はいません。

大事なのは他人の立場を理解しつつも、自分のやり方を通せる姿勢です。「あなたのそのやり方も十分に理解しているけど、今回はこの方法でやってみます」というように。許可もとらない、許しを請うでもない、どういう経緯か理解した上で、自分の道を進むこと。

多くの場合は「あ、そう。違うやり方でやるんだね」と反応されるでしょうが、自分と他の人への愛情と思いやりをもって、違う道を行けば、抵抗を最小限に抑えることができると思います。

内面の強さと明確さを持てるよう願っています。自分と古いシステムへの愛情と思いやりがあれば、異なる手法をとっても両者が共存できます。

 

7.6. 自主経営のアイデア

あなたが統括するチーム内で自主経営を取り入れるとしましょう。実行するために私が提案することは、あなたの役割を定義づけることです。「明日からセルフマネジメント(自主経営)を始めます!階級なんて関係ありません!」なんて言うと、闘牛に向かって赤い布をかざすようなもので、組織全体が注目して抵抗勢力が大きくなってしまうだけです。

大げさにするのではなく、できることはたくさんあります。マネージャーの役割としての項目を定義し、いくつかの項目を切り離すことから始めましょう。あなたの部下にもマネージャーがいるのなら、彼らにも同様のことをするように提案しましょう。そうすれば、誰が何の役割を担うのか明確になり、あなたが介入する必要もなくなります。

あなたが部下の人事評価をしなければならないのであれば、1-1の評価ではなく、同僚のお互いの評価に基づいて結果を出す手法に切り替えましょう。効果的なミーティングも取り入れても良いでしょう。

ソシオクラシーやホラクラシーのような戦略的なミーティングにヒントを見出すこともできるかもしれません。

考えてみてほしいのは、外からみれば、マネジメントは依然として明確で、何もおかしなことはありません。人に任せていることもあるけど、あなたは変わらず数々の役割があるマネージャーで、組織チャートで見れば何らおかしいところはありません。

気を付けてほしいことは、遂行しようとしていることに難解な名前を付けようなどしないことです。ただシンプルにスタートしましょう。何かを遂行している時にはエネルギーがだんだん大きくなって楽しいものとなり、他の人も参加したくなるようなポジティブな反応があります。

 

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