ティール組織におけるコーチ、コンサルタントの役割【フレデリックラルー氏動画⑧要約】

「ティール組織におけるコーチ、コンサルタントの役割」と題して、「ティール組織」著者のフレデリックラルー氏による動画の要約をお届けします。

フレデリックラルー氏は書籍のほかに、100を超える動画を公開してくれています。本記事では、その中の「シリーズ8. ティール組織におけるコーチ、コンサルタントの役割」の要約をご紹介させていただきます。

ぜひご参考にされてください。

▶元の動画「FOR COACHES, ​CONSULTANTS ​AND FACILITATORS」はこちらから

▶ティール組織を実践するためのティール組織診断マップはこちらから

 

 

8.1 (顧客)組織に必要なサポートとは?

これは(顧客)組織と共に組織再編成の旅をしたい、コーチ、コンサルタント、ファシリテータ向けの最初のビデオです。私が今までにコーチやコンサルタントと議論して、繰り返し出会った質問に関する4、5本のビデオを公開します。

最初の質問は、組織に本当に必要なサポートは何か?です。

まず、組織にとって真の価値があるのは、CEO、リーダーシップチーム、組織全体の三つのレベルと共に旅をし、サポートする仲間の存在です。全てのレベルの人々が、新しい世界にどのような意味があるのかを熟考する必要があり、外部の者の助けがあればより深く考えることができます。

例えば、組織のリーダーが「セルフマネジメントを始めよう!」と言っているとします。私の心の中で警報ブザーが鳴ります。リーダーとだけ話を進めて、他の人々を無視するのは良くないと思いますし、私はそうはしません。全員が「やってみましょう」と言い、第一歩を踏み出したと感じれば、関係を築けるでしょう。

最初にする必要があるのは選択肢を明らかにすることです。CEOのような組織内で力のある人物と社員の希望、恐怖、関係の築き方についての会話をし、選択肢を探ります。

組織に必要なのは、「何をしたいのか?」を明確にする手助けをする場と時間です。

あなたの役割は、真実を話し、客観的に見た姿を伝え、盲点を明らかにすることです。例えば、幹部と、「組織に変わってほしいと仰っていますが、あなた自身を変える準備が出来ていないように見えますよ」というような会話をしましょう。幹部が、本音の意見を聞くことは非常に少ないのです。リスクを負いますが、愛と思いやりから話せば、大きな信頼を築き、以前は想像もできなかった、道を開けるでしょう。

以前のビデオでも伝えましたが、組織には、一緒に旅をする存在が必要です。「コ・クリエーション」という言葉でよく表現されます。必要に応じて登場するコーチの立場とも、中立の立場のファシリテータの立場とも、プロジェクトに関わるコンサルタントとの立場とも異なる新しい立場です。あなたは組織全体と旅をして、リスクを負い、試行錯誤し、成功や失敗をして、学ぶのです。

あなたは組織と旅をしながら専門知識を投入するのです。これは時に誤解されています。ティール組織には、全ての答えが組織の中にあるように思われています。コンサルタントはいくつかの答えを持っていますが、完璧な答えではありません。

車輪の再発明をする必要はありません。「助言プロセス」と呼ばれるものがあり、適切なタイミングで専門知識を投入し、知識を与えるのにふさわしい人物を探すこともあります。例えば、このビデオシリーズの中で、役立つものを見せてもいいでしょう。

最後に、組織に必要なのは、四象限全てから手助けをする存在です。四象限については、ここでは、全ては繰り返しませんので、過去の動画を見てください。本当に組織を助けたいなら、あなたは四象限全ての知識が必要です。例えばあなたの得意分野が内的領域であっても、リーダーに「必要なのは良い決定プロセスですよ。」と、違う象限の指摘をしましょう。逆に、あなたの得意分野がシステムの領域であっても、文化が障壁になっているなら、組織の文化について深い会話をしましょう。

▶四象限の説明動画

▶四象限からサポートするための組織マップ

 

あなたが四領域全てに介在する必要はありませんが、通じている必要があります。あなたと異なる領域の専門知識のある人を連れてきて、パートナーにしてもよいでしょう。組織には、四領域に通じ、少なくとも理解し、必要な領域を手助けする人を連れて来られる人が必要です。あなたは、組織が根本的にシフトする手助けしようとしているのです。一つの領域ができるだけでは不十分で、全ての領域に通じている必要があります。

 

8.2 組織の再編成に意欲的な顧客を探す方法

これは私がよく受ける相談です。コーチ、コンサルタント、ファシリテータは、思い切ったマネジメントの新体制へと躍進したい顧客を見つけたいと思っていますが、大体の顧客は保守的でそう考えていません。その熱意や葛藤に同情します。それに対するいくつかの提案があります。

一つ目は、やりたいことをよく勉強することです。あなたの情熱は何でしょうか?それについて話したり、書いたり、あなたにとってやりやすい方法で表現して下さい。あなたはティール組織になる手助けをしたいのですか?心からやりたい、という気持ちに火を点けたのは何ですか?仮面をかぶりながらも、実は困っているCEO達、組織の上層部への同情、傷ついている人たちへの同情、かもしれません。

例えば、医療に従事する医師や看護師の状況はひどく、彼らのような専門職の自殺率は高いです。起こっていることを見ていられない、何とかしたいと考えるとします。そういったあなたの情熱をついて、書いたり、話したりするのです。それを自分のことだと認識する人がいるかもしれません。人々が感じている痛みに語りかけるのです。それを読んだり聞いたりした人が、あなたと仕事をしたいと思うでしょう。あなたにとって重要なことを、言葉にすることが重要です。

それはリスクを伴うかもしれません。多くのコーチ、コンサルタント、ファシリテータは全ての門を開けて多くの顧客を受け入れ、できるだけ収入を得たいと考えるからです。基本的に何でも引き受けるように書かれていますが、実はあなたが望んでいないような案件もあるでしょう。そのようなウエブサイトは範囲が広く、未分化です。私は、よりリアルにしてくださいと伝えたいと思います。たとえ分野が狭まっても、あなたが情熱を持っている事柄をウエブサイトに示すべきです。可能ならウエブサイトを二つ持ちましょう。一つは広範囲な仕事用に、もう一つはあなたが本当に情熱をもって取り組みたい分野を示すのです。

二つ目は、あなたが本当に情熱を持っていることを、常に、様々な場所で、友人や同僚などあらゆる人に話すことです。そうすることで、周囲の人々によって世間に広まり、実際に苦しんでいる人に伝わり、実現できるでしょう。

三つ目は、できるだけその分野に関わる人と知り合い、心を通わせることです。そうすることで、そのネットワークに加わることができるでしょう。それによりあなたの世界は大きく広がり、個人スポーツからチームスポーツになり、人と出会い、あなたの助けになります。世界を変える手助けがしたい、とあなたがはっきりと働きかければ、顧客と出会えるのです。

 

8.3トップリーダーを説得する方法

「ティール組織を進めるために、一緒に仕事をしているCEOをどのように説得したらいいでしょうか?」「新しいマネジメント方式によって、生産性や利益が向上することを証明する調査結果を教えてもらえませんか?」というような相談を受けることがあります。私はそのような相談にはのりません。これについては、すでにビデオ7.1でも少し話しました。

▶ビデオ7.1はこちらから

他人にティール組織について論理的に説得することはできません。あなたがある情報を伝えることで、人が「そうか!分かった!」となることはありません。一つの世界、一つの視点で育ってきた多くのリーダーが、別の世界、別の視点を持つのは、離婚、子供の事故、火災、など自身が痛みを伴う出来事の後です。そのような経験を経て、成長し、別の視点からマネジメントを見ることができるのです。私はCEOを説得しようとしませんし、そのような考えを持たない方がいいです。成功したのを見たことがありません。

代わりにできるのは、リーダーと現在のシステムの弱点について会話することです。私はよく、「現在のシステムはどのように機能していますか?」と尋ねます。多くの場合「うまく機能していません。」という答えが返ってきます。大抵、彼らは弱点について共有する場がなく、一人で抱えています。システムで機能していない部分について本音で話すのです。システムが機能していない中で過ごすことはあなたにとってどうなのか、ということを話しましょう。弱点について話す場が設けられたら、それはリーダーとのつながりができる、美しく、尊い時間になるでしょう。説得を試みるよりも、興味深く、生産的で、有意義なものになります。

その対話は、今までと異なるものへの興味、期待への出発点に過ぎません。古い体制に対する疑問と、新しい世界を支持する気持ちがゆっくりと芽生えるでしょう。そのような対話は新しい可能性の扉を開く出発点です。

私の答えはあなたをがっかりさせたでしょう。私は、人を説得できるとは思っていません。代わりに、幹部役員たちのプライベートや、組織でうまくいっていないこと、弱点について話す場を作ることをお勧めします。不合理なシステムの中にいて、何も感じない幹部役員はいません。あなたが正しい対話の場をつくれば、彼らは喜んで話してくれるでしょう。

 

8.4 どのような成果にこだわりたいですか?

これは難しい質問でしょう。コーチ、コンサルタント、ファシリテータは、組織にティールになってほしいと心から思っています。

あなたは組織がどうなるべきか、イメージを持っていますか?セルフマネジメント、ホールネスなど色々あるでしょう。私はそのイメージにこだわらないようにお勧めします。あなた自身や組織の人々の人生が不幸になるからです。あなたが組織に対して理想像を持っても、それはあなた自身の姿ではなく、組織内の人々、組織自身の姿です。

大切なのは組織の真の願いは何であるか組織はどこへ向かいたいのか、私はそれにふさわしい人物なのか、です。あなたの心の会話を公にするのです。組織の次の旅は何なのか、私が手助けしたいか、したくないか、ということが見えてきます。それは素晴らしい旅になるだろうが、私の旅ではないのか。これらの会話によって、あなたは正直になれます。

組織との会話で、組織がしたいことはあなたには納得できないことがあるかもしれません。その時は正直に話すのです。「私の考え方とは違います、共感できません。考え方が変わったら、また電話をして下さい」と言って立ち止まってもいいのです。

あなたが組織とやりたいこと、やりたくないことは何ですか?誰と仕事をしたくて、誰と仕事をしたくないですか?その答えには、正解も不正解もありません。

例えば、私は全ての組織と話す時間がない時期には、既にリーダーがティール経営をしたいと思っている組織とだけ話したいと思っていました。オレンジ、グリーン段階の組織と時間を過ごしたくありませんでした。

このような組織こそが本当に助けを必要としていて、コーチ、コンサルタント、ファシリテータの真の居場所なのですが、私の居場所ではありませんでした。若手と仕事をしたい人、10~15年で巨大な組織を作るような将来有望なミレニアル世代の若手と仕事をしたい人、年配の人々と仕事がしたい人、非営利団体と仕事がしたい人、色々な人がいるでしょう。あなたが何に共感するかを明確にすることは、あなたにとって大切になるでしょう。

「私はセルフマネジメントやティール組織を望む会社を手助けしたい」と思うなら、組織の本当の望みを明確にする手助けをすることが最良です。本当の望みを知り、この組織となら共に仕事ができる、共に旅ができる、あるいは、できない、と感じてもよいのです。

 

8.5トレーニングする方法

私は、新しいマネジメントを進めたいと望んでいる人たちの考えが甘いと感じます。やりたいのなら、自分自身も準備し、トレーニングしなくてはなりません。セルフマネジメント、ホールネスを実行したい時にも同様です。外部に出てその領域について学ぶべきです。

これは、コーチ、コンサルタント、ファシリテータにも言えます。どのようにその領域に取り組みたいのか、何をしたらいいのか認識していません。逆に、ひたすら勉強していて、ずっと自信が持てない人もいます。そんな人には、前倒しして、組織と働きながら学ぶことをお勧めします。どのように勉強し、トレーニングするのか、を紹介します。

一つはこのビデオシリーズです。そして、私の著書「ティール組織」のイラストバージョンではなく原本です。巻末に私のお勧めの本が載っている目録があります。数々の組織についての本の紹介があるので、いくつかを読んで、それについて人と話せば、何かインスピレーションが得られるでしょう。

次に、トレーニングとワークショップです。膨大な数があるので、一つに絞ってお勧めすることはできませんが、コーチ、コンサルタント、ファシリテータは自分自身の心の動きに関するものが良いでしょう。どんな種類のものであれ、有意義になります。その後に、人や集団に「hold a space」(完全に心を開き、相手に対して無条件のサポートを与え、裁きやコントロール、また期待を手放す状態)する方法を学ぶことは必須です。トレーニングにはセルフマネジメント、ホラクラシー、など、いろいろな専門分野がありますが、どれでも将来あなたの糧になるでしょう

私が最善の方法だと思うのは事例研究です。全く異なることを行っている5~10の組織を探します。調査してもよいか承認を得て、どのように決定をするか、どのように問題に取り組むか、どのように予算を組むか、などを調べます。私の著書「ティール組織」の付録にあるような調査結果が得られるでしょう。

組織に行って調査することが最良だと思うのは、本で読んだことは忘れても、自分で実際に調べたことはあなたの身になるからです。研究していくと、「この組織とこの組織の方法が違うのはなぜだろう?」という壁にぶつかるでしょう。どちらかが優れているからなのか、業界が違うからのか、名称が違うだけで実は同じなのか、そのような研究はとても有意義です。

同様に有効なのは翻訳です。これは私の著書「ティール組織」を翻訳した人に聞いたのですが、翻訳はとても有効なトレーニングです。翻訳は、ここで著者は何を伝えたいのか、以前言ったことと矛盾がないか、という風に全ての言葉を熟考します。読むだけとは理解のレベルが違います。深く理解したいのなら、このビデオシリーズを翻訳したり、別言語の字幕をつけたりしましょう。それはとても有効な勉強の方法です。

自分自身の輝ける場所を見つけてください。本、ワークショップ、このビデオシリーズ、研究や翻訳でトレーニングしましょう。自分が完璧になるのを待たないでください。完璧な人などいませんし、私も完璧ではありません。あなたに最良な方法が見つかり、力を付け、共に働く組織に貢献できることを祈っています。

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