「セルフマネジメント(自主経営)はなぜ?から始める(Start with why?)」要約
セルフマネジメント(自主経営)はなぜ?から始める
以前、「組織をコンセプト化することはやめた方がいいし、それが目標になってはいけない」と伝えたことがあります。「ティール組織にしたい」と言ってくる人がいますが、私は即座に「ただそういうコンセプトになりたいのですか?概念的なものじゃなく、何をどうして変えたいのか、もっと具体的に聞かせてください。」と返します。セルフマネジメントでも同じことが言えます。ある日突然「セルフマネジメントに切り替えましょう」と社内に通知するリーダーを見かけますが、これはコンセプトが先に立ってしまっているものです。常に「なぜ」そうするのか、から始めるべきです。何を達成したくて、セルフマネジメントがどう役に立つのかを考えるべきです。コンセプトから入って、「セルフマネジメントを始めましょう。」と言われても、皆わけがわからず、また何か新しいことを押し付けてきたと思われて強い抵抗を受けるでしょう。そこからセルフマネジメントの是非について哲学的な思案に陥るような結果に終わってしまいます。
まず組織にとって「なぜ」セルフマネジメントが必要なのかについて考えを固め、それを社内で共有し、よく話し合うことをおすすめします。セルフマネジメントの必要性を明確にする際に重要なポイントが二つあります。一つは組織の本来目的で、もう一つはそれぞれが抱えている様々な思い込みです。セルフマネジメントの意義を組織の本来目的に沿って考えるのは有効です。病院を例に考えてみましょう。患者の回復や健康維持が組織の目的であり、そのためには看護師や医師との信頼が不可欠です。ただ、官僚的で面倒くさい色々なことが患者のケアという目的を阻んでいたりします。そこで、看護師や医師との信頼を向上する施策として自主経営を取り入れる。別の例を考えましょう。大きなビジョンを掲げたエネルギッシュなスタートアップ企業で、今はいいけれどやがて会社が成長して組織が大きく複雑になったときに、全エネルギーを組織の目的に注ぎ込めなくなることが懸念される。セルフマネジメントが具体的にどんな解決策をもたらすかはわからないが、組織の方向性を変革しておく必要があると感じている。以上は単なる例であって、それぞれの組織で事情は違うわけですが、いずれにおいても、現状の組織を改善しなければならない理由を突き詰めて考えると効果的です。
二つ目はセルフマネジメントを組織に根付いた様々な思い込みと結びつけることです。これについては以前ビデオで組織に根付いた思い込みをセルフマネジメントの価値観と比較する話をしたので、これも参考にしてもらえたらと思います。従来の経営観に深く根付いているものは悪いものも多いです。現場の人間は信頼できないとか、あまり賢くないし誠実でもないので、注意深く幾層にも渡って決定を承認するとか、仕事の進捗や公正さを監視するための施策を用意したりと、気分の悪いものです。セルフマネジメントではもっと信頼を置いたやり方に変えるので、比較すれば明らかに従来の悪い思い込みは変える必要性が出てきます。大半の社員は信頼してもらうよう努めるし、そう認められたいわけで、そうでないほんの数パーセントを摘発する施策を見直すことに繋がるでしょう。
セルフマネジメントを取り入れようとする際にはその意義を明確にし、咀嚼されるまでよく話し合うことをおすすめします。セルフマネジメントというコンセプトは便利で役に立つものではあるけれども、それを導入することがゴールになってはいけません。「なぜ」それが必要なのかを繰り返し説明し、理解してもらうことこそが大切だからです。
大切なことをもう二点。自分の考えを共有する際は頭だけで伝えるのでなく、頭、心そして直感的なものを使って話すことと、親身な伝え方を心がけることです。話す相手によって伝え方を工夫し、わかってもらえるよう努めてください。セルフマネジメントという考えがそもそもピンと来ないマネージャーもいます。管理者というのはあまり面白い仕事でもないし、常にプレッシャーが付きまといます。部下には仕事をさせなきゃ、上には良く見られなきゃ、と悩み、業務のほとんどは資料作りや会議への出席に費やしているマネージャーが多くいるわけです。セルフマネジメントはこういう管理者がもっと能動的に組織の目的達成に寄与していくことを励ます仕組みです。また現場で仕事する人たちには彼らの重要性を伝え、組織改善への参画に積極的になってもらえるように説明します。従来の組織構造では吸い上げられなかった現場の良いアイディアを経営にいかすための新しいやり方について話すのです。
以上、今回は「なぜ」組織にセルフマネジメントを取り入れようとしているのか、理由を深く掘り下げ、それを社内で話し合うことの大切さについて話しました。
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