デジタル化やグローバル化といった時代の大きな変化の中で、従来の組織のあり方にも変革が求められるようになりました。
新しい組織構造として注目されているのがホラクラシー型組織です。
今回はそんなホラクラシー型組織とは何か?その特徴、導入ステップについて、
ホラクラシーに特化したアメリカの組織改革コンサルティング会社Living OrgsのCEOカリム・ビシェイ氏へのインタビュー内容をご紹介したいと思います。
ぜひ最後までご覧ください!
1. 従来のピラミッド型組織の問題点
ホラクラシー型組織を理解する前に、まずは従来のピラミッド型組織の問題点をご説明します。
ピラミッド型組織は、世の中の98%の組織が利用している組織を一貫してまとめることができるシステムで、大きなグループと提携を結ぶ時などに非常に効率的です。
しかし、ピラミッド型組織は厳格すぎて意思決定と実行が遅れるところが大きな問題となっています。
例えば、ある企画を通すまでに10数名の社員が集まった会議を開き、その中の1〜2人の最終決定権のある管理職の許可と支持を待たなくてはなりませんし、大きい会社だとさらに上層部の会議へ持ち越されることもあります。
もう一つのピラミッド型組織の大きな問題点は、組織内の上層部と下層部との繋がりの薄さです。
ピラミッド型では、下にいけば行くほど組織への帰属意識や目的の共有意識が薄れてしまいます。
彼らは組織全体としての戦略や目標といった重要な意思決定に関わっていないため、それらを真に理解することが困難なのです。
この構造のために組織の上層部は部下達が仕事に情熱を持って取り組んでくれないことや辞めていくことを嘆き、
逆に部下は自分達が実際に営業の最前線に立って顧客と向き合ったり、様々な必要業務をやっているにも関わらず、決定権や発言権がないことにストレスを感じます。
こういった問題を抱えたピラミッド型組織の代替となりうるのがホラクラシー型組織です。
ビシェイ氏によると、アメリカでは従業員数5人程度の零細企業から3000人程度の大企業まで導入を始めているそうです。
2. ホラクラシー型組織の3つの特徴
では、ホラクラシー型組織とはどんな組織なのかを、3つの特徴から説明していきます。
①人ではなく仕事をまとめる
組織の中では組織図を描きますよね?
しかし、そのポジションやチームのタイトルと実際の仕事の内容は異なることがほとんどです。
例えば、CFOとは最高財務責任者のことですが、複数の企業のCFOに日々の業務内容を聞いてみると、それぞれ違った答えが帰ってきます。
これは、紙上のタイトルと実際の仕事が正しくリンクしていない、また仕事の内容が人によって変わることを意味します。
ホラクラシー組織ではこのようなポジションやタイトルを廃止し、組織図も使いません。
その代わりに、それぞれの仕事に対して「役割」を定め、それぞれの役割には決められた目的や責任、業務内容が付与されます。
例えば、CFOの場合、CFOの仕事を予算決め・優先順位づけ・フィードバックなどに細かく分類し、それぞれの仕事の関連性を明確にします。
そしてホラクラシー組織の中では、これらの役割は特定の人材に任されるのではなく、担う人が頻繁に変わります。
社員はそれぞれ、その時点での自分の仕事の内容や目的に合わせて、必要な役割を担うようになるのです。
この特性をContact Switching(コンタクトスウィッチング)と言います。
少々複雑に聞こえますが、実は私たちは日常生活でもコンタクトスウィッチングを頻繁に行なっています。
ある会社で課長を務めるAさんは、仕事上では部長、家に帰ると子供にとっては父親、妻にとっては夫、休日のラグビースクールではコーチという役割を担っています。
これはまさに目的に合わせた役割の変換で、人間が日常生活で当たり前に行なっていることを組織内に応用したのがコンタクトスウィッチングです。
ただ、組織内ではカオス化を防ぐために、分類された役割はそれぞれの役割がどのような目的・責任で行われ、他の役割とどんな関係を持ち、それぞれの相関関係がどのような仕事の結果になるのかを、とても明確に・正確に記述する必要があります。
②戦術的な仕事(Tactical work)
ホラクラシー組織は、アジャイル開発とデビット・アレンズのGTD(Getting Things Done)に大きく影響を受けています。
GTDについて詳しくはこちら→http://gtd-japan.jp/about
アジャイル開発やGTDの考え方は、個人の仕事に優先順位をつけて、効率的かつ戦略的に成し遂げる方法を教えてくれます。
ホラクラシーはこれらの方法を組織全体に応用しているので、仕事に無駄がないことが大きな特徴です。
社員一人一人が仕事にどう優先順位をつけて、どのようにマネジメントするのかをしっかりと学ぶことで、非常に効率よく、素早く業務を終わらせることができるようになります。
例えば、組織がホラクラシー型に正しく変わると、会議は非常にタイトで意味のあるものに変化します。
1回の会議では1つのアジェンダのみを規律を持って集中して解決し、同時に次の会議で話し合うことや次のアクションを具体的に定めるため、ダラダラと話し合いが長引いたり、何度も生産性のない会議を繰り返す必要がなくなります。
③権力の分散
ホラクラシー組織では、各チーム・各個人に大きな裁量権が与えられています。
上述したように、それぞれが目的に応じた役割を短期的に担うことができるので重要な意思決定を行うことが可能です。
この特徴は人間の体と似ており、ある部分は脳によってコントロールされていますが、違う部分は神経系によって管理されているのと同じように、ホラクラシー組織ではチームごとにどのようなアクションを取るのかが決まります。
しかし、
「そんな組織はカオス化するのでは?」
「どうやってチームは意思決定を行うのか?」
「一貫性がなくなりそう」
といった声をよく耳にします。
ここで重要なのが、チームにどのように意思決定を行うかをとても明確に教えることと、組織全体としての方向性や目的・目標をクリアにすることです。
それによって、カオス化を防ぎ、同じ目的に向かって一貫性を保ちながらも、勝手に大きく成長するLiving Organization(生き物のような組織)に変わっていきます。
例えば、ホラクラシー組織で有名なザッポスでは、コアバリューに従って決断することを社員全員が共有しています。
ザッポスのホラクラシー組織モデルについてはこちら→「あのザッポスから学ぶ!成功する組織モデルとは」
3. ホラクラシー導入の4ステップ
ビシェイ氏が顧客企業にホラクラシーを導入する際に行うざっくりしたステップがこちらです。
①現状把握
まずは現状の組織がどのような問題を抱えていて、どこから変えていくべきなのかを話あうところから始めます。
社員全員にアンケートを行なった後、結果を上層部と話し合い、特にサポートが必要な部署や変革すべきシステムを洗い出し、効率化できる部分を見つけます。
②チームの役割を洗い出す
次に、それぞれのチームのリーダーと会い、彼らがどのような仕事をしているのか、どのような責任や目的でその仕事を行なっているのか、
などを明確化し、上述した「役割」に分類します。
このステップは約2週間かけて行なっているそうです。
③社員全員にホラクラシーについて説明する
次に、約3日間かけて社員全員にホラクラシーの意味や理論や意義を詳しく解説し、理解してもらいます。
例えば、エンパワーとは何か、組織内で起業家になるとはどういうことか、決められた目的の中でのオーナーシップとは何か、等。
④戦略的会議のやり方を教える
その後、初めの6週間の間はコンサルタントである彼が週に1時間会議のファシリテーションを行います。
これは、上述したGTDやアジャイル開発式の会議のやり方とそのファシリテーションの仕方を教えるためです。
4. ホラクラシー型組織への初めの一歩
もし、ホラクラシーに興味があるけどコーチングやコンサルを依頼するのは躊躇しているのであれば、
まずは診断だけの依頼を行なってみましょう。
自分の組織が今どのような状態にあるのかどうかをコーチやコンサルタントに診断してもらうことで、自分の組織では何が起きているのか、逆に何が起きていないのかがわかり、そこから改善の鍵となるエリアが見えてくると同時に、ホラクラシーが自分の組織にとって本当に必要なのかどうかが見えてくるはずです。
診断だけならあまりお金をかける必要もないので、トライしてみる価値は十分にあるでしょう!