ティール組織への旅を始める

ティール組織の始め方を要約【フレデリックラルー氏動画③要約】

「ティール組織への旅を始める」と題して、「ティール組織」著者のフレデリックラルー氏による動画の要約をお届けします。

フレデリックラルー氏は書籍のほかに、100を超える動画を公開してくれています。本記事では、その中の「シリーズ3. ​ティール組織への旅を始める」の要約をご紹介させていただきます。

ぜひご参考にされてください。

▶元の動画「​Starting the journey」はこちらから

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ティール組織へ変革を始める前に信頼を築く

この動画の尺は短いですが、重要な要素がたくさんあります。

よく耳にするアドバイスがあるのですが、それは「何かを始める前には、必ず目的に対して人から一定の信頼感を得る必要がある」とするアドバイスです。ある会社に新任のCEOが在任したとき、彼は初めの1年、いや2年以上、何の変革も起こさなかったのです。なぜなら、周りの人がCEOの人格を知るのにそれぐらい時間が必要だと感じたからです。彼は、周りの人からの信頼を十分に得られたとの確信を持ったときに初めて舵を切り、自主経営(セルフマネジメント)に着手しました。

「信頼を得られるまで待て」というアドバイスはとても堅実です。それには2つの理由があります。1つ目は、旧態依然とした組織では、多くの人がその組織に対して長年に渡って不信感を抱いている可能性があるからです。以前とは違うということを明確に示すには、まず信頼感を取り戻すことが不可欠なのです。

2つ目は、「あなたが始めようとしていることが、人々が容易に理解できないような未知の物の見方やとらえ方(パラダイム)だから」です。それを理解してもらうには、あなた自身とその目的に対するそれ相当の信頼感が絶対的に必要なのです。それでは、不信感をぬぐい、人々に信頼してもらうにはどうしたらよいのでしょうか。唯一かつ有効な方法は、お店に顔をだし、人々と関わりを持ち続け、彼らの声に耳を傾けることです。自分にとって何が重要であるかを話して、人々の共感を呼ぶのです。そうやって、人々の信頼を得ていくのです。

大きな組織に属している場合、全社会議が行われるはずです。ビデオ電話を使って、あらゆる支店から参加者が集って質問をします。信頼感の一部は、近づきやすさや風通しのよさに左右されるでしょう。意見交換が容易にでき、その意見を議論できる環境です。そういった環境下での双方向のリアルなコミュニケーションが信頼関係を築くのに大切な時間なのです。信頼関係構築に時間を割けば割くほど、会議室でリーダーシップを発揮する必要がなくなり、多くのひとに権限を委任することができるようになるでしょう。

 自分の考え方とメッセージをテストする

前回の動画では、組織の中のセルフマネジメントを精査する前に、あなたのリーダーとしての信頼度と特定の目的に対する信頼度を図る重要性についてお話しました。

信頼を構築する前に、変革を担う自分自身に対する信頼があるかどうかが問題になります。自分自身をどれだけ信用しているかを問うのは、素晴らしいことです。他の人を引き連れて向かう未知の領域に一歩踏み出す準備が自分の中でどれだけできているのか、はたまた準備できていないのかを客観的な視点で問うのです。変革を起こす動機は、不純かもしれませんし、その中でこのまま続けていくのは無理そうだなと感じることがあるかもしれませんが、それは決して悪いことではありません。ただ、その境界線を明確にしておくことが重要なのです。

あるフランスの組織は、企業のCEOのコーチング業務を行っているのですが、彼らは企業が変化を起こす前の会議に呼ばれて、CEOが新たな領域に踏み出す覚悟ができているか対話を重ねながら確認していきます。その対話の中で準備が不十分だと判断されると、Goサインは出ないのです。しかし、ある瞬間からCEOの態度や姿勢に変化がみられると、リーダーとして適正だと判断されるのです。

確かに他の人からの信頼も必要ですが、まずは自分自身が成熟し、信頼できる人間にならないといけません。そのためには何が出来るのでしょうか。まず一つ目は、より深いレベルでのコミュニケーションを可能にするコーチングを受けること。二つ目は、価値観を共有し、理解を深めること。三つ目は、過去に同じような経験を積んだ他の企業の経営陣の経験談が書かれた本を読むこと。いくつか読んで、同じ経験をもつ者が素晴らしい解決策を見出したと知ったら、自信が湧いてくるはずです。実行に移すのが簡単である上に、非常に役にたつアドバイスばかりです。100%自分を信用しろとは言いませんが、90%程度であれば、上記のアドバイスを参考に成熟させることは可能なはずです。

 

誠実さが懐中電灯になる

前回のビデオで軽く言及していたことを深く掘り下げてみましょう。

経営陣の見直しは、軽く考えて実行するものではなく、長い時間をかけて計画するものです。このような新たな動きは、組織の中で自然発生的に起こっています。突然、旧来型のやり方に違和感を覚え、新しいやり方を導入する動きが生まれます。自らのインテグリティと照らし合わせることで、性に合わないことがたくさん目に付くようになるのです。例えば、誰もが問題であると分かっていることに対して、誰も言及せずになかったことにしようとする、その不自然さが気になるようになるのです。会議室のイスの並び順から、クリスマスパーティーの催し方まで、挙げるとキリがありません。新たな目(視点)で、こうした決まりきったやり方を見てみると、その違和感に気が付くようになるのです。インテグリティを懐中電灯のように利用し、習慣となって今まで気がつかなかったことに焦点をあて、それを明るみに出すことで、自分だけではなく周りの人にも物事を見直すきっかけを与えることになるでしょう。

ビジネスにおいて、こうした見直しの機会を利用して新たな方向へ進んでいくことも可能ですし、優先順位が高くないという理由から、従来通りのやり方に落ち着いてもいいのです。まずは、その分岐点に気が付くことが重要です。

CEOの特権を手放す

企業のトップやCEOであれば誰にでも当てはまることをお話します。

企業のトップやCEOは、大半の仕事を大多数の社員とは異なるルールに則って行っています。働く人の立場によってそれぞれ異なるルールに従うのは、カースト制度のように昔の習慣だと思われていたのに、実際にはそれが今でもまかり通っていることはとても驚くべきことです。それにも関わらず、企業のルールとして当たり前のように存在しているため、誰もそのルールに疑いを持たないまま、ただただ従っているのです。このカースト制度のような組織内に存在する隔たりをなくすことがビジネスにおける「旅」の第一歩になります。他の社員と同一のカーストに属すには、人の上に立ったときに得た特権を手放さなくてはいけないので、大変労力が必要となります。

みなさんに練習台を用意しました。一枚紙を取り出して、組織のトップ数人には当てはまっても、その他の人々には当てはまらない特別なルールを大小関係なくすべて書き出してみてください。大多数の人の正式な合意がなくても決議できるというルールは、組織の大多数の人の不満を買うでしょう。これは大きなルールの違いです。小さいものだと、社用車の有無や専用駐車場の有無、オフィスの広さなどが挙げられるでしょう。これらすべてを書き出すのがファーストステップです。

セカンドステップは、紙に書きだした膨大な数のルールの中で、どのルールなら譲歩できるかを精査します。特別ルールを放棄するか、はたまた社員全員にあてはまるようなルールに書き換えるかのどちらかです。リストに載っているルールを一つずつ確認し、特別なルールの数を減らしていくのです。そうすると、ルールによって隔てられていた企業トップと社員の距離が縮まり、より良好で意味のある関係が構築できるようになります。

きっと周りにいる人は困惑し、ルールを見直すなんて馬鹿げていると揶揄するかもしれません。ただ、それを実行した人が必ず口にすることがあります。それは、不思議なことに、ルールを見直すことが企業内のパワーバランスを崩すと思いきや、企業トップとしてより強力なパワーを得ることができるようになったというのです。なぜかというと、従来の場合、企業トップが特権を持ち、社員とは別格だと恐れられていましたが、上下の風通しがよくなることで、下から回ってくる情報の正確性が格段にアップするのです。さらに、人々は以前より正直な意見を言うようになるので、トップとしての考え方を見直す機会が増えるようになります。社員にパワーを与えることで、トップもさらにパワーを持つようになり、winwinな関係が構築されます。唯一トップが失わなければいけないことは、その特別感に執着するエゴなのです。

 

 経営チームを関与させる

一般的な企業であれば、あなたが自身のビジョンを語るやいなや、経営チームの中であなたのビジョンに懐疑的な姿勢を示す人が出始めるでしょう。多くの企業は、何事もなかったように振る舞うのです。もし、間違ったことが社内で広まり、あなたのビジョンに対抗する動きがでると、企業にも痛手となるからです。ある企業では、あまりにもかけ離れたビジョンを持つCEOの周りの人間が全員会社を離れてしまったケースもありました。それは必然だったのかもしれません。他の企業にここまで劇的な変化は起きていません。

ここで自身のビジョンをうまく周りの人間に伝えるには、ファシリテーターといって、会話を円滑に進め、目的達成を助ける進行役が必要不可欠です。組織のトップを説得するには、一番初めの動画でお話したように、ビジョンを持ったきっかけや個人の経験談を語ることが重要になります。ファシリテーターの役目は、そこで話者の希望や願望、不満などをより引き出す空間(スペース)を作り上げていくことです。会話のロールモデルになるような、過去に類を見ない会話を繰り広げることができた安心感で、新たなビジョンへの賛同者も自然とついていきます。

一対一の会話を重ねていく中で、今まで組織の中で話したことのなかった内容がどんどん生まれていくでしょう。もう一つのアドバイスは、新しいアイデアに困惑する相手に対し理解を示し、考える時間や話し合う機会を進んで設けると明確に示すことです。経営チームが大きな変化に対し意欲的になると、経営チームとして前進する役割をどう担うべきかを考えるようになります。ある企業では、経営チームとしての役割は3つに絞ることができました。経営戦略の立案、収支の安定、そして新たな経営方針の担い手です。その他の決定事項は別の形で他の部署に委任されます。

一般的な企業は、経営チームに働きかけたあとに、その他の社員に働きかけますが、この「旅」を始めた企業の多くは物事を並行的に進めています。トップだけで話し合っていても何も変化は起きません。そのため、意識の高い社員が変化を求めて経営トップの基盤を揺るがす動きはとても興味深いことなのです。トップが自己の役割を反芻する機会を与えていることになるからです。

初期チームに働きかける

あなたが小規模な組織のリーダーの場合、大きな会議を開いて、組織全体にビジョンをつたえることができます。しかし、千人や一万人を超える従業員をもつ組織/企業であれば、それは難しくなります。そのため、こうした大企業では、一早く初期追随者を含むいくつものグループを作ります。リーダーが変革を起こそうとするときには、非常に強力な力が働きやすいといわれています。そこで、新しいビジョンの重要性を熱く語り、一人ではビジョンの実現が不可能だと訴えるのです。「あなたたちの助けが必要です」と。初期追随者を含むグループをつくることで、努力が可視化され、その努力が長続きしやすくなります。初期追随者がリスクを負いながらも、従来の枠組みの限界を超えて、ピアサポートを受けることは重要なことです。CEOや経営委員会からの反対や抵抗があっても、変化に意欲的で期待感を持つ人々を組織の中で持つことで、自分の進んでいる道は間違っていないとあなたが実感できるようになるのです。

では、まずどのように初期追随者を含むグループをつくるのでしょうか。それには二通りのやり方があります。門戸を開いて、集まってくれた人をグループにまとめるやり方が一つ。ただ、過去にこれを試みた人によると、集まった人々は必ずしも初期追随者ではなく、ただ単に政治的理由で参加した人が多かったようです。そしてもう一つは、リーダーが意欲的だと感じた人のみを集めるやり方。これは、思惑通りに進まないこともあるので、定期的に相応しい人材を集めていかなくてはいけません。

初回の会議の開き方によって、グループに与える権限が変わってきます。会議の準備を用意周到に行い、時にはファシリテーターをつけるのも合理的な判断なのです。ビジョンのきっかけを語ること以外にも、参加者を小さなグループに振り分けて、新たなビジョンと共感できるポイント、不満や期待する点を聞くことも重要です。また、参加者が日常的な問題において何かを変えたいと意欲的なときは、バックについてできる限り応援する姿勢を示してください。もちろんすべてにおいて援護するというわけではないと念を押しましょう。

グループには、集まる頻度や会議内容、ファシリテーターの参加についてなどを話し合ってもらい、自主的に組織立って前進していく機会を与えてください。変化に意欲的なのは自分だけではないと個人個人が知ることで、計り知れないほどのエネルギーが結集します。大企業のトップの方は、まず変化を起こすのに手を貸してくれそうな初期追随者の集め方を模索してみましょう。

 

組織全体を関与させる

前回の動画でお話したように、大企業ではまず初期チームのグループを自然に形成していきます。その中でビジョンを共有した後に、全体にそのビジョンを徐々に広げていくことになります。ただ、そこで少し用心しないといけないことがあります。組織全体にビジョンを伝える際に、盛大にお披露目をしてしまうと、予想もつかないリスクを負うことになります。大企業で急速な変化を起こすなら、時間をかけなくてはいけないのです。なぜなら、盛大にビジョンを発表することで、抵抗感や失望感、多大な不信感を招きかねないからです。

しかし、ここで矛盾が起こります。できるだけ多くの人が参加する形で変化を起こしたいと考えていても、盛大に発表することで余計なリスクが生じる可能性があるという矛盾です。このような状況下では、謙虚に話すことが最善の策となります。ブログやビデオ電話、社内報などを利用して、組織の方針を少しずつ共有するのです。そうすることで、あなたのビジョンに共感した人全員が協力してくれるようになります。この他にも、感動的な本やビデオを社員と共有することで、理解を深めることと視野を広げることができます。ただ、一冊の本だけを共有することは避けてください。なぜなら、一冊の本のみだと、その本に書かれている視野でしか物事を判断できなくなるからです。様々な本に書かれている異なる変化を知ることで、自分たちにも似たような変化を起こすことが可能だと実感できるでしょう。

 古い前提と新しい前提をはっきりとさせる

前衛的な企業では、存在目的(エボリューショナリーパーパス)作りに時間をかけています。FAVIやRHDなどの企業では、その存在目的(エボリューショナリーパーパス)にとどまらず、社員や仕事場などに対する基本的な前提を深堀りして考えています。職場の前提を唱えたのが、1960年代にセオリーXとセオリーYで有名となったMcGregor氏です。昨今のマネジメントは残念ながら、セオリーX、つまり大抵の人々は信頼に値せず怠惰で仕事熱心ではないという前提のもと、遅滞なく仕事を行っているかどうかマネージャーがチェックと管理をするメカニズムで成り立っています。その一方で、セオリーY、つまり人々は信頼に値し、適した環境下では仕事を進んで行うことを前提にした場合にはまったく異なるマネジメントを要します。面白いことに、AESでは創設者自らがマネジメントの裏に隠された前提を明確に認識しています。

初期チームを含む会議を行う場合には、参加者を小さなグループに分け、それぞれに現在のマネジメントの裏に隠されている前提が何なのかを認識させます。そうすると、人が信頼に値しないという不快にもとれる前提がどんどん出てきます。これを通して、こうした醜い前提を認識し、口に出し、必要がないと声に出していうことができるようになります。不必要な管理体制をすべて洗い出すことができるようになるのです。

次のステップは、代わりにどのような前提を採用したいと思うか参加者に聞いてみることです。人間は基本的に善良で、すべての人間には同等に価値があるというようなポジティブな前提が出てくるでしょう。新しいグループや参加者が参入するときは、また一から前提となるものを洗い出し、それぞれが感じる前向きな前提を書き出してもらうのです。そして、それらを比較してみてください。この一連のプロセスを行う価値があるのかぜひ考えてみてください。

 

任命するのではなく、志望者を募る

任命した人を集め、チームに参入させる方法が主流ですが、私が唱えるやり方はその逆です。人を任命するのではなく、志望者を募る方法です。会計処理の方法やパフォーマンス管理の変更を行う際に、全員にその旨を伝え、その中で賛同してくれる人を集めるのです。社内プロジェクトに限らず、クライアントを交えたプロジェクトやマーケットリサーチにも応用できます。「神」のごとく人材を選りすぐる方法から立候補制度に変更するは大変ですが、その利益は計り知れません。選び抜く労力も必要なくなり、より意欲のある人間を集めることができるからです。そして多種多様な人間がいることで、アイデアも盛んに生まれ、意思決定も効率的になります。また、同調意識が働き同意も得られやすくなるのです。このほかにも、ボランティアベースのチームの場合、権力を握ることで自発的に組織立って動くようになります。

これを試してみても損はないように見えますが、中には失敗例もあります。三つの理由をお話します。一つ目は、チーム全体が組織立って動く方法を知らなかったからです。これを防ぐには、外部のファシリテーターが参加し、適切な質問を投げかけながら、チームが完全に組織立つまでチームの歯車として動く必要があります。二つ目は、権力の使い方が未熟だったからです。あまりにも突拍子もない提案をするチームもいれば、権力を持て余してしまうチームもいました。三つ目は、頭の中に十分な知識やアイデアを持っていても、チーム全体と共有しようとしなかったからです。二つ目と三つ目の問題を持つチームは、アドバイスプロセスを上手に活用すると良いでしょう。会議室に何週間も籠った後に出来上がったアイデアを組織のトップの人間に披露する従来の方法ではなく、アイデアが出るたびに同僚と共有しアドバイスをもらう方法にシフトしましょう。

四つ目の理由は、その他の理由とは別格です。意欲のある人を募っても誰もチームに加わらなかったから失敗したというのです。ただ単にあなたが重要だと思っていたことでも社内全体では違った、または意図がうまく伝わっていなかったという理由で失敗したかもしれませんが、それでも実情を知り、時間を無駄にしなかったという意味では、それは有用な情報だといえるはずです。

最初のアクションを目に見えるようにする

組織全体にインパクトを残すような大きなアクションをまず起こすべきなのか、小さなステップを踏むべきなのかという質問をよく聞かれます。財務の透明性を上げ、社員全員の財務管理能力を高めるような大きなアクションをとることも可能ですが、組織はそれを行うほどの信頼をまだ勝ち得ていないはずです。大きな変化を起こす前に、少しずつ組織に柔軟性を持たせるような小さなステップを踏んでいくほうが賢明です。

小石が靴の中に入っている状態で歩き続けると少しずつ痛みがでるように、誰もが仕事への不満を募らせています。ベルギーの国土交通省では、社員のこうした不平不満を一週間以内に解決すると組織のトップが約束したのです。すると、すさまじいほどのエネルギーが生まれ、それによって今まで問題となっていたことが解決され始めました。彼らはこのほかにも、誰でも機密性の高い会議を除くすべての会議に参加できるようにしました。経営委員会も含まれています。ただ、参加する価値のないと判断した会議には顔を出さないように推奨されています。

社内を階層毎に分けるようなポリシーや権力を持つ上層部の人間を作らないようにする方法はもちろんあります。セルフマネジメントに詳しいオランダの新聞記者兼ジャーナリストBen Cohen氏によると、夕方に社員全員で社内方針を精査する時間を作った企業もあるそうです。これを行うことで、ある種の自由が生まれるようになります。新しいリーダーやマネージャーを推薦する際には、ピラミッドの上層部の人間ではなく下層部に位置する人間に指名させるように変えた企業もありました。これらの動きが組織の悪しき習慣を改めることに繋がるのです。ボーナス制度を廃止し、同僚がボーナスを誰に渡すかを決める方法を採用するのも、大きな変化を生む一助となっています。最後になりますが、早期のアクションはできるだけ視覚的に訴える形で行うように意識してみてください。これが変化を生むのに効果的なのです。

他のティール型組織を訪問する

組織のリーダーたちから「自社と同じ産業のティ―ル組織を訪ねてみようと思うのだけれども、手伝ってくれないか」とのお願いをこれまで幾度となくされてきましたが、いつも私の答えは「ノー」でした。絶対に得することはないと確信しているので断りを入れていました。大半の企業では、現在のやり方に疑問を持っていてもそれを変える準備が十分に整っていません。そのため、他の企業を訪問しても何のメリットもないのです。他社と比べるうちに自社の至らない点が目立つようになり、変化に対して恐怖心や懐疑心を抱くのがオチです。過去の例を見ても、他社訪問をして飛躍的に進化した企業はどこにもありませんでした。

私のアドバイスは、前回の動画の中で何度もお話してきたように、現在のマネジメント体制の問題点を深く精査し、この先向かうべき方向性を吟味するということです。この他にも、決まった方向に向かって一歩ずつ着実に進んでいく方法があります。他社訪問のメリットはないと言及してきましたが、ここには二つの例外があります。一つ目は、すでにこれまでお話してきたアドバイスに則って、企業側が変革を試みはじめてから半年または一年経っている場合です。全く産業の異なる企業や非営利団体と意見交換をしようとする企業が多くいるのが見受けられますが、自社に当てはまらないような内容があったとしても、別の形で学びが広がることもあるため、とても有意義だといえます。二つ目は、ピラミッドの下層部に位置する従業員や作業員が他社訪問をするときです。従業員が他社で働く従業員の働きぶりを直接見ることで、意欲的になって帰ってくることがあるそうです。変化に適応する準備ができていないと見受けられた従業員がいるときは、このように他社訪問を企画するのも効果的かもしれません。

未来の組織イメージを明確にする

変革への準備が整っている企業トップの人たちが話し合いながら、フリップチャートにセルフマネジメントチームの重要な役割やプロセスを含む未来像をはっきりと描いていくコーチングがあるのですが、私がこれに協力していると言ったら、みなさん困惑すると思います。まさにその通りです。

フリップチャートに企業の未来予想図を一緒に描くことはおろか、会議室のような密室で秘密裏に話し合うなんて言語道断です。それでも私が協力するのは、未来へのある一定の安心感と可能性を企業に与えたいと考えているからです。セルフマネジメントに慣れ親しんでいないため、どんなに準備万端に見える経営トップの面々でも、将来の展望を描けない場合があります。先が見えない不安を払拭するためにも、フリップチャートを使いながらある一定の安心感が得られるような訓練を行っていたのです。その結果、必要以上に不安がる必要がなくなりました。ただ、注意しなくてはいけないのは、いつまでもこの安心感にいつまでもすがりつかないことです。

具体的な例でいうと、ある病院が師長をそのまま残す形のセルフマネジメントベースで働く看護師チームの導入を検討していました。看護師の採用や看護師の質の確保など複数のマネジメントをフリップチャート書き出し、チーム全体と師長にそれぞれ適したマネジメントを振り分けました。詳細にマネジメントを分析したことで、ある一定の安心感が自然と生まれました。こうした事情に詳しい専門家の導入を一度検討し、私の参考本を参考にしながら、自社に応用できることがないか考えてみてください。

 

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