【ティール組織事例】小学校がティールに至るまでの各段階の特徴を解説

ティール組織は非常に魅力的な組織モデルで、これからの時代に求められる組織のあり方であることは間違いありません。

しかし、既存の組織がティール組織に変わっていくまでの具体的な過程は正直あまり語られていません。

そこで今回は組織がティールに移行するまでの各段階の特徴と、ティールに変わるまでに欠かせない組織文化および組織内人材の行動の変化について、

ポーランドの公立学校のケースを用いて説明した論文の内容を紹介します。

ぜひ最後までご覧ください!

ソース:Jerzy Rosiński, 2018, Creating an Evolutionary Teal Organization on a Step-by-step Basis. A Case Study,ENTREPRENEURSHIP AND MANAGEMENT 2018 pp. 243–256

1. ティール組織理論の背景

ティール組織の著者であるフレデリック・ラルー氏は、組織の発達段階を人類の発達段階とリンクさせて色分けしました。

その最終レベルがティール組織です。

しかし、彼は発達段階のレベル分けを組織”全体”のタイプとしていますが、実際に組織を分析する際は各プロセスごとに行います。

つまり、採用や人材開発や予算管理といった組織内の各プロセスがどのタイプ(色)まで成長しているのか確認することになります。

このように組織分析を行うには組織を各プロセスの集合体として考える必要があり、ティールマップの使い方も異なってきます。

※日本語版ティールマップのダウンロードはこちら

2. ケース:ポーランドの学校について

取り上げるケースはポーランドのBędkowiceにある公立小学校です。

同校は生徒の保護者連合によって運営されています。生徒数は60人、同じ敷地内には幼稚園も併設されています。

学校は100年以上の歴史がありますが、2012年までは保護者連合による運営はなされていませんでした。

2012年の運営形態の変化によって、学校の建物や備品は変わりませんでしたが、職員は刷新されました。

今回のケースの組織調査は、保護者と先生と学校のマネージャーへの定期的なインタビューによって行われました。

 

3. ティール組織に至るプロセス

フェーズ1:グリーン(多元型)組織の芽

学校が2012年に新形態となってから初めの頃は、組織では次の3つの点で特徴が見受けられるようになりました。

⑴リーダーシップのスタイル

組織の変革直後から、リーダーは職員に権限を与えるものとして認識されるようになり、また、チームや職員の状況に合わせてマネージャーが柔軟に対応やスタイルを変えるという特徴も見受けられました。

(2)組織内外の人間関係

インタビューを受けた先生や親は、チーム内の関係だけでなくパートナー(親や地方自治体)との関係が非常に親しみやすいもので、友達のような仲の良さや気軽さを感じると話していました。

また、組織内では様々な意思決定の場面において具体的なオペレーション戦略よりも理想主義的なビジョン(「子供達のための学校」「自分達が居たいと思える環境」)が優先されていました。

(3)組織風土

新しい組織で刷新された教師チームはとても友好的でお互いを助け合うコミュニティを形成していこうとする雰囲気に満ちていました。

おそらくこのような風土が形成されたのは、職員を全員新しくしたことで、元の組織にいた人材のネガティブな習慣やマネージャーの行動といったものが全くなかったためだと考えられます。

したがって、まとめると、この段階ではリーダーシップのスタイルと組織内外の人間関係、組織風土といった点でグリーンの多元型組織の傾向が見られます。

フェーズ2:ティール(進化型)組織の芽

フェーズ2では進化型組織に向けた重要な成長過程が見られ、以下の3点が特徴となります。

(1)エンパワーメント

各人に意思決定権を与えるようなリーダーシップのスタイルや助け合いの文化から職員の態度は「自ら行動していくこと」に矢印が向いていきます。

それと同時に給料に対する考え方も変わっていきます。というのも、この時点で職員は学校の支出に関するデータへのアクセスと意思決定権を得ているためです。

つまり、彼らは昇給が可能かどうか、利用可能な資金は何に使われているかがわかるために給与の捉え方も受動的なものから自らの行動の結果という意識に変わるのです。

(2)共通のバリューと目標に基づいた組織文化

バリューは意思決定の際にとても重要な指標となります。

学校の職員たちは、採用や昇進、人材開発といった様々な場面でバリューに基づいて意思決定を行なっていることがわかりました。

また、この時点で職場環境も非常に重要となります。

職員の一人は、インタビューで職場環境が自分の家のようにリラックスできる場所であると語っていました。

このように自分をさらけ出せるような職場では、自分の個性を仕事に活かすことができるため、職員自身の特性/専門性の発見および開発に繋がります。

そして各人が自分の専門性を見つけて、伸ばすことで組織としての発展に貢献します。

(3)全てのステークホルダーの視点をもつ

この学校において、ステークホルダーは先生と親だけではありません。

スポンサーや地方自治体、もちろん生徒達もステークホルダーなのです。

彼らが何を求めているのか、どうやったら一緒に成長していけるのかを考えることで、組織全体の成長に繋がります。

特に、学校では生徒が1番重要なステークホルダーです。

彼らにとって何が一番良いのかを考えて、教師の採用基準や行動規律を決めていたそうです。

フェーズ3:目立たない進歩

フェーズ2から3の間では目立った変化はなく、学校はフェーズ2と同じことを1年間繰り返し、多元型組織(グリーン)として機能していました。

しかし、同時にフェーズ2では学校がステークホルダーの視点を持って運営され、バリュー(「子供達のための学校」「自分達が居たいと思える環境」)に基づいて意思決定がなされていたため、自然と学校は生徒や先生を含める関係者全員にとってより良い場所となっていたのです。

そのためマップ上の動きに特に変化はありませんでしたが、このように同じ”良い”プロセスが繰り返されると後続の進化型(ティール)プロセスが自発的に開始されます

つまり、フェーズ3はフェーズ2の多元型(グリーン)のプロセスが繰り返され、飽和状態になると、自然的に発生するようです。

フェーズ4:ティール組織へ

フェーズ3は自然的な変化によって生まれましたが、フェーズ4(進化型組織)への変化は職員のイニシアティブによって意識的に発生します。

実際に学校では、職員自身が授業の革新的な方法と、生徒が自分の限界を超えるように動機付ける画期的なシステムを提案しました。

こうしたイニシアチブは、組織自体の変革へと繋がっていき、次のような進化型組織特有の特徴が見られるようになりました。

流動性のある組織構造

組織としての形態自体に変化はなかったのですが、組織がどのように機能しているかに着目すると、システム間の流動的な動きや責任の変化、および知識の共有・交換・創造などが活発に行われていました。

全体性(ホールネス)

組織のために働くことで、自分が何者であるかを発見し、自分を成長させることができます。学校で働いている人々は生徒たちと情熱を共有していました。

地域社会への影響

組織文化を構成する価値観やその他の要素は、地域社会にとって魅力的になり、学校の定期的なイベントに参加する人がとても増えました。

そして、組織を多元型(グリーン)から進化型(ティール)へ進化させた大きな要因は次の3つです。

(1)多元型(グリーン)レベルのプロセスで組織がかなり飽和している。

フェーズ2と3のような特徴を持つプロセスを限界値まで繰り返します。

2)少なくとも1つのティールプロセスを繰り返すこと。

それによって他の領域のプロセス開発を引き起こします。

(3)職員のエンパワーメントを目的としたリーダーシップのスタイル。

学校は初めから職員に権限を与えるようなリーダーシップの仕方を重視していました。それによって組織はより早いスピードで進化型へ移行していきました。

 

まとめ

いかがだったでしょうか?

今回のケースは規模の小さな小学校というかなり独特の環境でしたが、重要なポイントはその組織のマネジメント方法です。

リーダーシップを状況に合わせて柔軟に変化させ、職員に権限を与えることを目的としていること、さらにマネージャー個々が成熟度と共通の価値観も非常に重要です。

このようなマネジメントのモデルにより、組織がより素早くティールに移行することに繋がりました。

 

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