「ティール組織を目指すリーダーへ」と題して、「ティール組織」著者のフレデリックラルー氏による動画の要約をお届けします。
フレデリックラルー氏は書籍のほかに、100を超える動画を公開してくれています。本記事では、その中の「シリーズ1. Thoughts for top leaders(ティール組織を目指すリーダーへ)」の要約をご紹介させていただきます。
ぜひご参考にされてください。
▶元の動画「Thoughts for top leaders」はこちらから
▶ティール組織を実践するためのティール組織診断マップはこちらから
これは個人的な旅である
組織変革プロセスを開始するCEOは、「これは”組織”の変容プロセスである」と言います。
しかし、1〜3年経ってまたCEOと話すと、「これは”個人的”な成長の旅だった」と言います。
組織の旅でもあり、個人的な成長の旅でもあると。
これは簡単な旅ではありません。自分の限界、思考の制限、自分の影に突き当たります。
これらはすべて自己成長への招待状でもあるのですが、チームのことを信頼したいが、それが出来なかったり、もっと透明性のある文化にしたいのに陰口を聞いてしまったりします。
ですから、この旅は成長の旅であり、新しい姿勢が求められます。
楽しい旅でもあり、時には困難な旅でもあります。
もしあなたが変わりたくないのであれば、このプロセスを進めないほうが良いでしょう。これを組織の変革をすることだけだと捉えていて、自分の個人的な成長の機会だと思えないならば、スタートしないことです。
私の友人の素晴らしいコーチがいます。彼は多くの組織の変革を支援してきましたが、変革をスタートする前にCEOに本当に準備が出来ているかを確認します。
そして、組織の変革をする前に、6か月から1年間、彼らが準備できるように支援しています。
自分自身を変革したいという想いを超えて、組織が変革することはありません。これは自分を変える人生の旅なのです。
もしあなたがそれを受け入れるならば、人間関係がとても豊かになったり、落ち着きを感じられるようになったり、恐れが消えたり、より豊かな時間や喜びを感じられるようになれると保証しましょう。
だから、私は質問をしなければなりません。 その旅への招待を受け入れますか?と。このオファーに答える準備はできていますか?
コーチ、友人など、深い対話が出来たり、あなたの鏡になれる人や組織内で信頼できる1〜4人の同僚を見つけましょう。
たとえば、「さっきの君の発言は、”古いバージョンの君”のものだよ」というようにあなたに箴言してくれる人を持つことです。
また、そういう箴言を受け入れることです。そうすることで、あなたは組織の中で、”ホールネス(全体性)”のロールモデルになります。周りの人たちもあなたがそのように成長することを喜ぶでしょう。
何があなたを動かすのか?
組織を変えたいリーダーは、どうやって?を聞きたがりますが、私はなぜそうしたいのか?を聞くようにしています。
外向的な人、内向的な人、カリスマ的な人、そうでない人、色々いますが、彼らの共通点は、組織の運営を伝統的なやり方じゃない方法でやりたい、というその理由は、彼らのとても深いところから生まれているのです。その深いところからくるエネルギーを活用することが大切です。
ある大学病院のCEOがいて、彼女はナースをチームをセルフマネジメントにしたがっていました。彼女はそれをメンバーに伝えましたが、強い抵抗にあいました。日常的に死がある職場で、各自が自由に働くなんて無理、だというのです。
私は彼女に、なぜそうしたいのか?を問いました。彼女は最初、それを言葉にすることが出来ませんでした。しかし、問い続けると、彼女のストーリーを語ってくれました。
1年ほど前、午後3時45分に外での会議から戻ると、廊下でナースたちが列をなして待っていました。そして、(終業)の午後4時になると退出し始めたのです。彼女はそれを見て、病院としてナースたちにしてあげられていないことがあると思い、とても悲しくなったと言いました。
もし、彼女がそのストーリーをみんなに共有していたら、みんなからの抵抗は消えていたでしょう。
だから私はなぜそうしたいのか?を聞くのです。それは見つけるのは簡単なことではないこともあります。最初はみんな“頭“で考えて答えます。
たとえば、退出のために列をなしているナースたちを見て、“もっとナースたちを動機付けする人事プログラムにしなくては”と考える人もいるでしょう。しかし、彼女はそうしなかった。なぜそうしなかったのか?そこには彼女のストーリーがあるからなのです。これは子供の頃の経験に由来することがあります。
RHDの創設者であるボブ・フィッシュマンが書いた本には、最初にページに子供の頃の経験が書かれています。彼は子供の頃、毎晩、両親が喧嘩をしていたのを記憶していました。だからコミュニケーションにはもっとやり方があると信じていました。そして、彼が組織を創る立場になった時、伝統的な組織ではなく、別のやり方でやろうと思ったのです。
何があなたを動機づけているのでしょうか?
組織を変えるのが難しくなるか、簡単になるかは、あなたがそのエネルギーにどれだけ触れられるか、それを他の人にどれだけ表現できるか?に大きく関わってきます。
深いところからエネルギーに触れることが出来、それを他の人に表現できれば、人々はあなたに協力してくれ、それが出来なければ抵抗にあうでしょう。
始める前に、何があなたを動機づけているのかを明確にしてください。
あなたへの提案は、それを探すのを手伝ってくれる人を探すことです。一人では難しいからです。配偶者か同僚か、コーチか。あなたが信頼できて、“頭”から話しているようであれば、それを指摘してくれる人です。
もしあなたが自分のストーリーを見つけることが出来れば、この旅は素晴らしいものになり、みんなが参加したがるものになるでしょう。
あなたの誠実さを傷つけたものは何ですか?
ティール組織への変革の旅において、もうひとつ強力な質問があります。
「あなたの誠実さを傷つけたものは何ですか?」
紙を一枚取り出して、いままでのキャリアを振り返ってみてください。
人材の採用は、将来の同僚となる人たちではなく、人事部門によって行われますが、これは私にとっては理解できません。上司・部下の配置方法もそうです。予算もそうです。誰も達成できると思っていませんが、みんなこの馬鹿げたゲームをプレイしています。これも私には理解できません。人の評価も同じです。
また、私はもう口に出したくありませんが、”人材こそが資産”だとか、組織の中で馬鹿げた言葉が使われています。
これは私の場合でしたが、あなたも同じように考えてみてください。何があなたの誠実さを傷つけているか?
そのリストを作れば、この旅において、多くのエネルギーや創造性が得られるでしょう。
良く、”どこから始めればいいですか?”と聞かれますが、あなたが始めるべきだと思う場所から始めてください。
恐怖と向き合う
私が接したリーダーたちの共通点があります。
彼らは”恐れ知らず”であるということです。
これは彼らが恐怖を感じないということではありません。
それにうまく対処できる、ということです。
「ティール組織」の中で、Favi社の話がありました。
受注が減り、スタッフの25%を解雇しなくては乗り切れないという状況になりました。
彼らは、人事部門で秘密裏に解雇の計画を進めることはしませんでした。
その代わり、全てのスタッフに機械を止めるように言い、工場の隅に集めました。
そして、自社の困難な状況を伝えました。
スタッフはナーバスになっていましたが、1時間後、誰かが、全員の給与の25%を減らしてはどうか?という提案をしました。
そうすれば雇用を守ることが出来ると。みんながそれに同意しました。
彼らがやったのは、みんなを集め、苦境であることを伝えたことでした。
また、ビュートゾルフのCEOであるJos de Blokの話もあります。
彼は夜の10時にブログ投稿をして、みんなからのコメントを受付け、24時間後に決定をします。
彼はブログで提案をしますが、スタッフはそれに対して自由にコメントを出来ます。
従来の組織のように何度も何度も会議をして決めることはしません。
これを可能にしているのは、Jos de Blokが恐れに対処しているからです。
どうすれば彼らのようなステージにいけるのでしょうか?
まず、恐れを歓迎することです。恐れを認識するのです。
恐れによって、本当に危険があるかも知れないことがわかります。
しかし、今話した例では、ビジネス上の危険はありませんでした。
唯一のリスクはエゴです。バカに思われるかも知れない、などのような。
しかし、Jos de Blokのような人は、
「ごめん、間違えた」
「すべての情報を持っていなかったことに気づきませんでした。この側面については考えませんでした。申し訳ありません」
というように人間性を見せることが出来ます。
だから恐怖を感じたら、深く探求してください。
それは本当にビジネス上のリスクなのか、単に私自身のエゴなのか?
エゴからくる恐怖であれば、「わからない」「ごめんなさい」「私はあなたの助けが必要です」と言うことを学ぶことができます
恐怖を克服することを学ぶだけではなく、他の人から多大な尊敬を得ることが出来るでしょう。
そして、みんなに完ぺきさを求めるのではなく、現実を見て、今何が必要なのかを知ることが出来ます。
この変革の旅でどこまで行きたいですか?
質問があります。
この変革の旅でどこまで行きたいですか?
これは2つの理由から興味深い質問です。
まず、それについて考えることで、あなたの本当の原動力が何かを理解できます。
そして、偽りの希望を作らないことが大切だからです。
書籍の中で言及されている三つ、それぞれについて考えてみてください。
・自主経営(セルフマネジメント)
・全体性(ホールネス)
・存在目的(エボリューショナリ―・パーパス)
これらについてどこまで行きたいですか?
紙を取り出して、これらの3つについてどこまで行きたいかを書いてください。
ここで三つの入れ物を想像してください。
一つ目は、Comfort:コンフォートゾーンにあること。
二つ目は、Edgy:ギリギリのラインにあること。
三つめは、Beyond imagination:自分の想像を超えたところにあること。
例を挙げましょう。
たとえば、チームを自主経営(セルフマネジメント)にしたいと思っているとしましょう。
工場、コールセンター、または顧客と直接連絡を取り合うチームなどで考えてみます。
実行委員会を招請して、アドバイスプロセスを進めます。
ちょっとEdgyですが、今後は戦略的な決定のみを行い、オペレーションの決定には関わらないと決めます。
もしかしたら、スタッフにとっては、管理職が関わらない中で働くのはBeyond imaginationなことかも知れません。
また給与を公開するのは、いまの時点ではBeyond imaginationかも知れません。
こんな感じで三つの入れ物について考えてみてください。
全体性(ホールネス)についても同じことを考えてみます。
スーツを止めること、仮面を取って話すことに賛成の人もいれば、そういったことは自分の想像を超えている、と感じる人もいるでしょう。
それでも良いでしょう。
存在目的(エボリューショナリーパーパス)についても同じです。
予算や目標無しにやるなんて考えられない、という人もいます。
それはそれで構いません。
いまのあなたにとって何が適しているかが大切です。
ティール組織であるかどうかなんて誰も気にしません。
こうすべきとか理想論に縛られないでください。
あなたにとって何が理にかなっていますか?
なぜなら、もしあなたが達成できないかもしれないことを約束すれば、不必要なフラストレーションが発生します。
もしかしたら、あなたがどこまで行きたいか、行きたくないかをコミュニケーションしたほうが良いかも知れません。
私が大企業で自主経営(セルフマネジメント)について話したとき、一部が希望を抱いただけでなく、何百人もの中間管理職が不安を感じました。
トップリーダーシップチームは、管理職にいなくなって欲しいとは思っていませんでした。
3年後、いくつかの管理レベルは消えていましたが、4つのレベルがありました。
数年後にはマネージャーはもういないかもしれませんが、いまはそうではありません。
彼らが感じていた不安は、事前にコミュニケーションしていれば不必要だったかもしれません。
だからあなたに質問をしています。
この変革でどこまで行きますか?
どこまで行きたいですか?
ティール組織についてどう考えていますか?
もう一つのパターンは、これはマネジメントをもっと簡単にやる方法だと思う人。これは半直観的に感じるかも知れませんが、私たちは組織改革の最先端の話をしているわけではありません。
本で共有した例を2つ見てみましょう。
Favi社は、組織変革をスタートさせました。
自動車事業の注文が急落したとき、CEOは工場の隅にみんなを集めて、会社の苦境を話しました。そして、25%の社員を解雇する必要がある。本当はこんなことはしたくないけど、他に方法が見つからない、と伝えました。
一人が25%を解雇する代わりに、全員の給与を25%減らしてはどうか?という提案をしました。するとみんながそれに同意しました。1時間もたたないうちに、みんな機械を動かし仕事に戻りました。
これがいかにシンプルなことであるか考えてみてください。
従来型の組織だとどうでしょうか?
人事部長と密かに話し、25%を解雇するため計画を策定します。弁護士と話します。コンサルタントを雇うかもしれません。すべてが秘密であり、経営層の秘密会議があります。 そして、マネージャークラスと共に、完ぺきなコミュニケーション計画を準備します。
Favi社は、それらのことをする代わりに1時間未満で解決しました。
別の例もあります。
Jos De Blok(ビュートゾルフCEO)は、午後10時頃にブログ投稿し、決定事項を組織内の14,000人に公開します。24時間以内に、ナースの50~70%はその投稿を読み、
コメントを残します。
だから、Jos De Blokは翌日、すべてのコメントを読むことができます。全員が同意、またはほとんどの人が同意すれば、「さあ、実行しましょう」というメッセージで返信できます。
また 「さて、興味深い回答がいくつかあります。更新された計画と決定は次のとおりです」ということもあるでしょう。
また例えば残業代の計算方法について、多くの反対があれば、一度計画を停止し、ナースたちが問題を自主的に研究することもあるでしょう。
これがどれほど効果的でシンプルでしょうか?
伝統的な組織で残業の計算方法を変えたいと思ったら、人事の責任者と話すかもしれません。 「数式を変更して、役員会で提案してください」 と。
その後、人事責任者が若い部下にその提案内容を作るよう指示します。部下は同僚と話しあい、提案を作ります。人事責任者にその提案を持っていくと、変更を指示されます。もう一度提案を変更し、提案を持っていきます。
人事責任者はそれを役員会に持ち込みます。夜勤のうち一人が提案内容を気に入りません。そして、提案を差戻、また若い部下が内容を作り直します。こうしたやり取りの後、提案が可決されます。その後、各地の会議で新しい計算式が紹介されます。さらにその後、地域のディレクターがナースに話をします。
変更が周知されるまでに、2、3か月かかります。実現するために、10、15、または20の会議があります。
しかし、 Jos De Blokはブログに記事を投稿するだけです。 24時間以内に、返事が返ってきます。
だから自主経営(セルフマネジメント)の組織がやっていることは、従来型組織がやっていることよりも、はるかにシンプルなのです。
私が挙げた例は自主経営(セルフマネジメント)に関するものですが、全体性(ホールネス)についても同じことが言えます。
職場で仮面を外すことは、落ち着かないと感じるときもありますが、もっと深いレベルでは、リラックスして自分らしくいることは、みんなが切望していることであり、やり方も知っていることです。
ボブ・キーガンがこんなことを言っていました。
「ほとんどの組織では、誰もが第二の仕事を持っています。その仕事には誰も給与が支払われません。その仕事とは彼ら自身のイメージを守ることです」
仮面を取り外すことができれば、とても快適ですし、これは非常に自然なことです。
これは私の意見ですので、この問題について考えてみてください。
私と同じような見方をするかもしれません。そうすれば、この旅を簡単に実行できるようになります、肩の荷が降りるでしょう。
目的地はシンプルですが、過去に学んだことを手放して再学習することはたくさんあります。これは難しいことがあります。
最後に考えてください。この旅をどう感じていますか?
ティール組織への変革の旅をどう捉えていますか?
今日は前回の動画と関連しますが、この質問をしたいと思います。
あなたは、この変革の旅をどう捉えていますか?
これは楽しいアドベンチャーだと思う人もいれば、大変で厳しい旅だと思う人もいます。
あるコンサルティング会社と話をしていました。彼らは50くらいの組織を自主経営(セルフマネジメント)にするのを支援していました。彼らは成功体験をたくさん持っていましたが、組織変革の旅は大変だったと言っていました。
自主経営(セルフマネジメント)に付随する責任感を持っていない、教育システムが不十分、等々。
しかしその会社の創業者だけは、とても楽しい旅だったと言っていました。直面している事実は一緒にも関わらずです。
どこからその違いが生まれるのでしょうか?
私が思うに、この旅を難しいものと思っている人は、ゴールの状態と今を比較し、すべてのことがまだまだ理想に届いていないと考えています。
しかし、創業者は、単純にジャーニーを楽しんでいました。進展がなかったり、抵抗する人がいたりすると、“では話してみましょう”と考えることが出来ます。そう考えれば、旅は楽しいアドベンチャーになります。
さて、あなたはこのジャーニーをどう捉えていますか?
これには正しい答えも間違った答えもありません。ただ、この創業者のように考えれば、大変なことも意味があるものだと感じられます。
この旅をするのは、理想を達成したい、というわけではなく、もう古いやり方ではやりたくない、と思ったからだと思います。もし比較するのであれば、理想とではなく、過去のやり方と比較してほしいと思います。
これはずっと続く旅だと思って、遠くの理想に目を向けるよりも、目の前の瞬間を楽しんでほしいと思います。
どんな言葉を使うか?
言葉の使い方は、私たちを形作っています。違う言葉を使うと、違うように考えて、違う振る舞いになります。
この旅を進めるにあたって、どういう言葉を使いたいか、どういう言葉を使いたくないかを考えてみてください。
たとえば、従業員」(employee)という言葉は私は使いたくありません。同僚(colleague)のほうが良いですね。
こんな感じで、どんな言葉を使いたいかを考えてみてください。あなたにとって意味ある言葉を使うことです。自分を偽って、「アソシエイツ」や「信頼できる仲間たち」などのような言葉を使うのだけは避けてください。
マネジメントで使われるような言葉をすべて無くすくことは出来ないのかと考えることがあります。10歳でも分かるように、抽象的な言葉ではなく文章でわかるように。「エンパワーメント」ではなく「みんなが重要な事を決められる」など、いつも使っている言葉で話したほうが良いと思います。
では、どういう新しい言葉を使い始めたいのか?
音楽が大好きな人がいて、会社の中で使う言葉を音楽に紐づけて話したり、書いたりしていました。彼は仮面を取って話し、全体性(ホールネス)を会社に持ち込んでいます。
だから、どういう言葉を使い始めたいでしょうか?
私であれば、「care」「love」「「longing」「calling」「hope」「life」というような言葉を使いたいと思います。普通の組織では不思議だと思われるかも知れませんが。
組織でどういう言葉をもう使いたくないか?どういう言葉を新しく使い始めたいか?を意識してみてください。
自分の傾向を理解する
ですから自分の傾向や好みについて自覚することは大きな価値があります。
あなたが 自分の持つバイアスに無自覚なまま行動を起こすと、誤った方向への変容をもたらす時もあるでしょう。
これについて、ふたつの極から考えてみましょう。
ひとつ目に思い浮かぶのは、
明確さや標準化を重視する傾向と、曖昧さや創発的、混沌としたものを重視する傾向という、ふたつの極です
たとえば私は 個人的好みで言えば、システム的に考えることを好みます。
物事のかなり早い段階で、新しい方法 新しいプロセスに気づくと、新しい方法を押しつけてしまうことがあるんです。
「セルフマネジメントの仕方を変えたいなら、こんなステップで こんな方法で・・」というように。
しかし、他の人はまだ準備できていないのです。
もっと検討する時間が必要なのです。
MBTI診断を知っている人なら私のタイプは J (判断的態度)と思うでしょう。
(※MBTI:マイヤーズ・ブリックス診断。世界で最も使われている性格診断の一つ)
私が組織変革に関わっている組織リーダーの方は、対極のタイプです。
彼は曖昧さや創発的なことに対してものすごく許容範囲が広いんです。
人々はそれぞれスピードもプロセスも違っていて、多様な人がひとつの組織にいるので
プロセスにも違いが生じるのです。
ですからお勧めしたいのはただ「気づくこと」です。
自分の傾向はどちらに寄っているか?
そして自分の好みを押し付けることなしに、組織のニーズを認識し、それを選択するということ。
実行すべきプロセスや道筋が見えたとしても、一旦立ち止まり自分に問うことです。
「今は業務プロセスを決めるのに適したタイミングだろうか?それとも早すぎるだろうか?」と。
先ほどのリーダーにとっては逆のことが言えます。
「私は物事がクリアでなくともいっこうに気にならないが、組織が今必要としているのは
何だろうか?」と問うことです。
ふたつ目の両極の例は、「寛容さ」と「せっかちさ」です。
これもどちらを好むかが分かれるところです
あなたは普段からせっかちかもしれません。自分の行きたいところにすぐにでも到達していたい人で、理想の姿が目に見えるタイプ。
一方、他の人たちは 寛容過ぎるかもしれません。
「どこでもいいと思えればいいさ」と。
しかし、健全なレベルのせっかちさというものもあると思います。
両極の間のどの辺を自分が好む傾向にあるでしょうか?
そして組織が求めるのはどの辺でしょうか?
そういったことをあなたが知覚できるでしょうか?
みっつ目の組み合わせは、後方からリードするのを好むか?前に立ってリードするのを好むか?です。
後方からのリードを求められることもありますし、別の場合には 前に立ってリードすることが求められることもあります。
どちらが良い悪い、ではありません
しかし ここでも自分の自然な傾向として、どちらが強いか?ということです。
あなたは自然と前に立ってリードする傾向がありますか?
それとも自然に後方からリードする傾向が強いでしょうか?
あなたは必要であれば、自分の傾向や好みを手放すことができるでしょうか?
よっつ目 最後の組み合わせですが、物事を解決するのに頭で行うことを好むでしょうか?それとも心(ハート)で行うことを好むでしょうか?
一般的な傾向の話をすると、ビジネスの世界は多分に頭に偏っています。
例えば、多くの会議では合理性を重視して行われます。
しかし実は会話の核心は、もっと深いところにあるのです。
表面化できない不満や承認の不足などが、深いところにあります。
頭で解決しようとしても、本当の問題の解消はできないのです。
お勧めしたいのは同僚や組織と関わっていく時にハートから行うことです
ただ、私が出会ったリーダー達の中にも、ハートから来るものだけを語り、また語られるべきだという信念を持っている人もいます。数字やデータなど頭で処理するものは商人できないとか。
もちろん、そんなことは ありえません。
問うべきは私たちに両極を行き来するような柔軟性があるか?です
これら以外にも、たくさんの二極を考えることができるでしょう。
ぜひ自分の傾向という観点で考えてみてください。
自分の傾向がどの辺りにあって、どのような場面でそれが組織のニーズを満たすのを妨げているでしょうか?
ティール組織でのあなたの役割
CEOやトップリーダーが“新しい組織における自分の役割は?”と悩むことがあります。
今までのトップダウン型のリーダーと違い、一歩引いてみると、あなたが与えられるものや貢献できることが多くあります。
役割や肩書を固定されたものとして考えるのではなく、細かい役割の集まりとして捉え直してほしいと思います。
「ティール組織」に出てくるビュートゾルフでは、チームにマネージャーがいません。マネージャーがやっていたことは細かい役割に分けられていっています。対立の解消等、採用、フィナンシャル、地域の病院とのつながりなど、マネージャーがやってたことを分解しています。
リーダーもこれと同じことをしてほしいのです。
リーダーの役割は、8つに分けられます。これらは私の考えなので、もっとあるかも知れません。
最初の2つは従来型のピラミッドの組織にもありましたが、新しい組織でも存在するものです。
1つ目は、組織における外向きの顔になることです。
2つ目は、センシング(感知や判別)と組織にビジョンを提示すること。本を書いた後、ピーター・コーニックという人の“ソース”という考え方に出会いました。残念ながらこれについて書かれた書物はなく、彼がワークショップで紹介しているものです。
彼は、何百人の起業家と話す中で、あらゆる組織にはソースがあることに気が付きました。ソースとなる人は、組織に何が必要で、何が良い意思決定なのかという情報にアクセスできる人です。
たとえば、ある組織で父親のような創業者がいたとする。彼が全ての意思決定をしていましたが、ある日、息子や娘に跡を継ぎます。息子や娘には、創業者のような存在感はありません。
引退した創業者久しぶりに顔を出すと、みんなが集まってきます。創業者は“ソース”であり、みんな彼から話を聞きたいからです。アップルのスティーブジョブスは典型的な例でしょう。彼はいったんアップルを離れましたが、戻ってきて、会社に明確な目的と方向性を提供しました。
ピーター・コーニックは、ソースから来るメッセージはパワフルで、人々は自然とそれに従うから、それがソースから来ているのか、自分のエゴから来ているのかを自覚しないといけないと言います。「この会社を買おう。規模が倍になって、かっこよく見えるから」というように、エゴから話しているのか、もしくはソースのような直観から話しているのか、見極めないといけません。
ビュートゾルフ、モーニングスター、FAVIのような新しい組織でも、ソースにアクセスできる人がいます。ただし、そういった自主経営(セルフマネジメント)の組織ではほかの人がサブ・ソースになっていける可能性があります。ただ、それでも、ソースにアクセスする人が一人います。
そういう人が必要で、それはCEOかも知れないし、マーケティング責任者かも知れません。それが誰なのか?をはっきりさせるのです。
あれ、これは古いヒエラルキー型で、誰か一人だけが情報を持っているのと同じじゃないか?と思うかも知れません。
しかし、新しい組織では、これは、一つの役割でしかないことを知っておきましょう。従来型の組織では、あなたはビジョンを提示して、それを他の人に強制する権利がありました。新しい組織でもビジョンは必要ですが、あなたはそれを他の人に強制するのではなく、これが必要じゃないかと共有することです。ほかの人よりも権力があるわけではありません。
おもしろいことに、ソースから話しているときは、周りはそれを気に入るし、エゴから話している時には、周りはそれを気に入らないです。
あなたは翻訳者でしかなく、特別なチャンネルからくる情報を他の人の代わりに伝えているだけと考えることも出来ます。
ピーターが言うには、ソースを持つ人が組織を離れるときには、組織内でオフィシャルな儀式を行い、ソースを持つ人をバトンタッチすることを表明するそうです。
これがリーダーとしての2つ目の役割です。
次に以前であれば90%の時間を使っていたような、2つの役割は完全になくなります。
そのうちの1つ目は、個別の意思決定です。これまでのリーダーはミーティングを繰り返して個別の意思決定しますが、それはほぼ完全になくなっていきます。アドバイスプロセスとして、アドバイスを求められることはありますが、従来よりも短いプロセスになります。
2つ目は、プレッシャーを掛けることです。
従来の組織では、もっと早く、もっと良く、もっと安く、もっと効率よくできないか?とプレッシャーを掛けることがCEOの役割の一つでした。
しかし新しい組織では、組織のシステム自体がその役割を担うようになります。これについては別の動画で解説します。
そして、新たに4つの役割が生まれます。
1つ目は、スペースを確保すること。
ほとんどの人は、伝統的な組織で育ってきて、それに慣れています。ですから何か間違えが起こると、よく知っている古いやり方に戻ろうとします。ルールを作ろう、ポリシーを作ろうなどなど。
そのときのリーダーの役割は、スペースを確保することです。ちょっと待った。そうじゃないよね、と言って、なぜ古いやり方に戻りたくないかを説明することです。
これは決定的に重要な役割です。これは最初は、トップリーダーの役割になりますが、時間が経つと、他の人もそれが第二の本能になり、色んな人がその役割を出来るようになるでしょう。
2つ目は、存在目的、自主経営(セルフマネジメント)、全体性(ホールネス)という3つのブレイクスルーのロールモデルになることです。
日々の中で、どのようにすればロールモデルになれるでしょうか?
もちろん、100%ロールモデルになれるわけではありません。それでも構いません。
間違ったときは「ごめん。本当はこっちだった」といえばいいのです。
3つ目は、他の人に機会を提供することです。以前であれば、「問題を私のところに持ってきなさい。私が決める、私が対処する。私が誰かに処理させる」という感じだったと思います。
新しい組織では、完全にシフトします。ビジョンを伝えた上で、他の人がそういったことにに取り組むようにするのです。
「予算を立てなければいけないが、誰か新しいやり方を考えないか?」「年次評価の時期だが、これを新しいやり方で考えたい人はいないか?」「戦略立案について他の新しいやり方は?」というように、彼らを招き入れることです。
4つ目は、他の人が意思決定できるようにコンテキストを作り出すこと。
何か意思決定したいことがあったとき、自分がするのではなく、彼らが出来るようにコンテキストを作ること。問題が起こったら自分が解決するのではなく、代わりにみんながそれを解決できるようにミーティングや適切な人を参加させること。これに関してはまた別の動画があります。
ロールモデルとなるには、あなた自身がどの役割から話しているのかをはっきりさせるといいでしょう。
「スペースを確保する役割としては、こう思う」「コンテキストを作る役割としてこう思う」というように、自分の役割を口に出すことです。そうすることで、周りもあなたのことを“その役割を担う人”と見るようになります。
これであなたの役割がより明確になったでしょうか。
そして最後に、これはリーダーの仕事を減らしていくことにつながります。特に個別の意思決定をすることにはたくさんの時間を使っていたと思います。それがなくなって自由になる時間がたくさんできます。
NASDAQに上場している会社のリーダーに1週間の予定を聞いたら、4つのミーティングしかなくて、そのうち2つは私とのミーティングでした。ほかにも休日を取れるようになった人はたくさんいます。
こんなにミーティングが必要なのか?もっと手放せるものがないか?と考えてみてください。そうすれば、もっと旅の先にいけるはずですし、新しい役割に時間を使えるでしょう。
また、一歩引いて組織と関われば、他の人にとっては、これまで彼らが出来なかったようなことを出来るようにする機会を提供することができるでしょう。
スペースを確保する
前の動画では、CEOの仕事を役割の集まりとしてみることについて話しました。
スペースを確保すること。新しいマネジメントを目指すためにスペースを確保し続け、従来型のマネジメントになりそうなときに「違う、そうじゃない」と声を上げることです。
スペースを確保することについてもう少し話しましょう。
あるCEOが、CEOの役割は、小さなボートが海岸から沖に行くことに似ていると話しました。海岸からボートを進めるためには、強い力が必要になります。しかし、波を乗り越えて、沖に出ればより簡単に進めるようになります。
このたとえはわかりやすいです。組織を変える時、最初は強い支援が必要になるのです。最初にスタートするチームは、新しい実験的試みをすると、組織のあらゆる抵抗にあいます。CEOは彼らを守る役割が出てきます。特に、意図的じゃないにしろ、役員会やCEOに近いスタッフ部門から攻撃されることがあります。
そこから質問が出てきます。あなたの組織の中で、あなたが新しいやり方を躊躇してしまうほど、辞めてもらっては困るスタープレイヤーはいますか?別の言い方をすれば、辞めてほしくないんだけど、新しいやり方に反対するような人はいますか?
この質問を考えると、この旅があなたにとってどれくらい重要なのか?を再考することになります。スタープレイヤーを失っても進めたいですか?
ある組織では、そういったプレイヤーのために、彼らの強みを活かしながらも、彼らが組織変革を止めなくても済むような、新しい役割を用意します。たとえば、それはアドバイザー的な役割です。彼らの見識を活かせる立場ですが、他の人に何かを強要することはありません。
さらに次の質問があります。あなたの役割が最初のチームを守ることならば、どうやってそれを強制的にならずに実現するのでしょうか?
ひとつのやり方は、“なぜ?”と“何を?”をとても明確にすることです。最初のほうの動画でも話しましたが、なぜこれを進めるのでしょうか?なぜ元のやり方に戻りたくないのでしょうか?それをとても深いところから話すことです。
そうすれば周りの人はあなたに協力的になるし、やり方にもオープンになるでしょう。
役員会にも同じようにすることです。“これは受け入れられない。なぜならば・・・”と伝えるのです。これはひとつのやり方の提案です。
最初の話に戻り、ボートを漕ぎだして、波を越えて沖に出ると、組織内での抵抗が減ってきます。そうなると、あなたのスペースを確保する役割は、もっと軽いものになるかもしれません。ほかの人があなたがやっていた役割を担い始めるからです。あなたの役割は、他の人がスペースを確保するのを助けることになるかもしれません。もし、他の人がやらなければ、最後にはあなたがやればいいのです。
最初にリスクを取る人たちをあなたが守ることです。なぜならば、最初にあなたが“新しいやり方でやろう”と言ったとき、みんなの頭の中に湧いてくる質問は、“本当に?いざという時には助けてくれるのか?”というものだからです。だから沖に出るまではあなたが守ってあげることです。
ティールへの変革のサポートを受ける
組織の変革の途中でどうやってサポートを得るのでしょうか?
従来型の組織では、CEOは孤独な存在です。ただ、この旅路では、その孤独な状態から離れていくことになります。多くのCEOがいうには、意思決定をしたり、組織にプレッシャーをかけたりする役割がなくなると権力差がなくなり、人とより深く関わることもできるようになるとのことです。
ただ、これはすぐには実現しません。その間に孤独になることがあるのです。あなたは、新しい組織の姿が見えているかもしれませんが、他の役員はそうじゃないかもしれません。
私が考えるには、CEOがサポートを探せる場所が3つあります。
ひとつめは、これは大きな組織の場合ですが、CEOの味方となる同盟グループです。彼らが新しい組織を作る手伝いをしてくれます。
ふたつめは、パーソナルコーチをつけることです。自分の疑念やフラストレーションを感じること、自分の“影“がどう組織に影響するか、またどうすれば私の強みが活かせるか、などを話せる相手です。そういう人が役員会にいても良いでしょう。
フランスのある組織、Tuscanという会社はクライアントを支援するとき、CEOだけではなく、他の役員、またCEOの味方となるチームのコーチもします。そうすると、コーチはCEOにとってより強力な存在になります。CEOだけと話しているよりも、組織で何が起こっているかをより強く感じることが出来るからです。
従来型のコーチは、特定の人だけと関わっていたほうがいい、という考え方でした。ほかの人も巻き込むと複雑になるから、という理由です。ただ私はそうは思いません。経験豊富なコーチなら、そういったことにも対応できます。ですから、リスクよりも実りのほうが多いと思います。
あなたがコーチとして招きたい人を見つけたら、ぜひ他の人ともかかわるように言って欲しいと思います。また、少なくとも、あなたが個人的なコーチをつけることをお勧めします。
みっつめは、他の会社で同じような変革にチャレンジしているCEOを見つけることです。フランスのあるグループでは、CEO達が集まって2日間で議論をしています。
どうことをやったか、それはうちでも試してみよう、あなたのやったことをうちで共有してくれないか、とか。2、3人でいいので、他にも同じような旅路にいる人を見つけてほしいと思います。
旅を進めれば、孤独を感じなくなる時も来ると思いますが、最初は孤独を感じるかも知れません。ですから、同盟グループ、コーチ、他のCEO、などを探してほしいと思います。